第1章 第4話:予想外の入学式
本日最後の投稿になります。
試験に無事合格し、本日は王立学園の入学式である。
『推しの尊い姿や攻略対象たちを直に拝める特等席』としての学園生活に胸を躍らせていたリリーであったが、彼女は今、なぜか全校生徒の熱い視線を一身に浴びながら講堂の壇上に立っていた。
本来のゲームのシナリオであれば、スタート時点で初期ステータスが最も高い攻略対象である第二王子『レオン』が、新入生代表として堂々と首席の挨拶を行うはずだったのだ。
(おかしい……どうして私が新入生代表の挨拶なんかしてるのよ!? ここはレオン殿下の見せ場のはずでしょ! いくら特別講師をつけてガチで勉強したからって、初期ステータスが最高の殿下の成績を抜くって、私どんだけテストで高得点叩き出しちゃったのよ!)
日本で大学院まで出ていた百合にとって、中学生の基礎レベルの問題であった入学テストはあまりに簡単すぎた。
(こんなの合格する者は全員満点を取って当たり前の試験に違いないわ。こんなところで私は落ちるわけにはいかないの。確実に満点を取っておかないと……)
そして、実技試験においても本人が気が付かぬ間に人類最強となっていたリリーは他を圧倒していた。
(あまりに緊張していて自分の順番直前までトイレにこもってしまったけれど、魔法も剣術もそれなりの実力は身についてるだろうし、ちゃんと真面目にやれば落ちることはないはず……)
魔法試験内容は的に得意な魔法をぶつけるだけの物であった。
(得意な魔法は火と風と雷の魔法を組み合わせた『ファイアートルネードサンダ―(仮)』でいいかしらね。でもこの魔法名をいったらクロエに『ダサいです』って言われたのよね。恥はかきたくないし、ここは無詠唱でいこうかしら)
直前までトイレにこもっていたリリーは、他の受験者がどの程度の実力なのかを一切見ていなかった。
リリーが3種の複合魔法を無言で放った後には、的を中心に会場の半分が破壊されつくしていた。
そのためその試験会場はリリー以降の受験者は他の会場へ回ることとなったのであった。
続く剣術の試験ではAランクの男性冒険者を相手にどこまで戦えるかを見る試験であった。
リリーが見ている前で受験者はどんどんと冒険者に負かされていった。
(あの程度の剣術の相手に勝てないんじゃきっと彼らは不合格なのね。可哀想に。でも、私は一切油断したりしないわ!)
リリーの順番になり、冒険者の前に立つ。
冒険者がリリーのことを(すげー美人じゃねえか)と全身を舐めるように見ていた。
その雰囲気に卑猥なものを感じ嫌悪感を抱くリリーであった。
審判員の「はじめ」の合図で試験は始まった。
が同時に試験は終わっていた。
始まった瞬間、リリーは高速で冒険者の懐に潜り込み、剣の柄の部分で鳩尾に一発決め、意識を失い倒れてくる冒険者を優雅に腕で受け止めていた。
審判員も周りの生徒たちも何が起きたか理解できず呆然としていた。
ただ唯一、その試合を隣の試験会場から見ていたセシリアだけが、かすかにその動きを見ることが出来ただけであった。
(リリーはやっぱりすごい!彼女こそ私の目標とするべき人物よ!)
セシリアの目はキラキラと輝き、まさに憧れを越えて、恋する乙女のものであった。
そしてもう一人、この規格外の光景を熱を帯びた瞳で見つめている者がいた。
ファンデンブルグ公爵家の令嬢、アイリスである。
(試合開始後の動きは全く見えませんでしたが、A級冒険者を一瞬で倒してしまうあの実力。あんなに強いのに、優雅でそして誰よりも美しい人物を私は知りませんわ。今までレオン王子が一番かっこいいと思っていた過去の私をぶんなぐって目を覚まさせて差し上げたいぐらいですわ)
全ての試験を終えたリリーは、セシリアたちのそんな視線に気が付くこともなく、試験が終わった開放感を味わっていた。
(ああー、これで試験は全部終了。1番は無理でもそれなりにいい点数になるんじゃないかな。これで安心して結果発表の日まで、クロエと一緒に王都のスウィーツやショッピングを楽しめるわね!あとは王都近郊のダンジョンもね)
これからのことで頭の中がいっぱいのリリーには他の受験者たちの様子など一切視界に入っていなかった。
こうして真面目に試験を受けた結果、1000点満点で1000点という史上初の快挙を成し遂げての入学が決まったのであった。
ーーー
舞台は新入生代表挨拶の場面に戻る。
レオン王子の代表挨拶は毎回プレイをするたびに聞いていたこともあり、すでに何も見ないで空で話すことが出来た。
(この場面を何度見せられたことか……。百合モードに入るためには仕方なかったとはいえ苦痛だったのよね……)
リリーがそんなことを考えながら挨拶をしているとは露も知らない生徒たちは口々に賞賛の声を上げていた。
「なんて綺麗で優雅な立ち居振る舞いなの……」
「この緊張する場面でカンペを見ないで完全に暗記してきてるなんてすごい」
「あんなに綺麗なのに歴代最高得点での合格なんて天は二物も三物もあのお方にお与えになったのね」
そんな生徒たちの中に数人の人物が特に熱い視線を送っていた。
セシリア、アイリス、そして関係者席にいるクロエである。
セシリア(こんな大舞台でも全く緊張するそぶりすら見せないで、なんて凛々しい姿をしているのかしら。リリーはまさに私の目標だわ……)
アイリス(優秀なだけでなく、完璧な美しさや優雅さを身に着けていらっしゃるあの方はまさに女神ともいうべきお方だわ。なんとしてもお近づきになりたいわ……)
クロエ(さすがです、お嬢様。苦節2年お嬢様一筋に仕えてまいりましたが、感無量でございます。今日のこの光景だけで3回は昇天できます……)
また先の三人と違い興味深そうにリリーを見ていたのはレオン王子をはじめとした、攻略対象者たちであった。
第1章第4話をお読みいただきありがとうございます。
第1章のプロローグですでに人類最強になってしまったリリーはいかがでしたでしょうか?
今後、リリーを中心に登場人物たちがどのような活躍?をしていくのか暖かい目で見守ってやってください(^▽^)/
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次回投稿予定日:9月14日(月)




