表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『星を紡ぐ右腕 〜追放された魔導技師、壊れた右腕で世界を繋ぐ〜』  作者: 鍼灸師いのぴー
第1章:神の玉座編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
40/83

第38話:二者択一

 世界OSのサーバー構造体から、感情の一片すら含まない、機械的な電子音声が響き渡った。


【最終承認フェーズへ移行します】

【選択A:世界OSの完全初期化。世界の間引きを停止。代償として、現管理権限エレノアの存在および全因果を完全消去】

【選択B:管理権限の強制切断。代償として、対象世界群を含む全平行世界の即時消去】


「そんな……」


 ミラがその場にへたり込み、絶望に顔を歪めた。

 どちらを選んでも地獄。世界を救えばエレノアが消え、エレノアを救えば世界が消える。世界OSが提示したのは、人間には決して覆せない、絶対的な因果の天秤だった。


「……アレン」


 首筋まで数式に侵食されながら、エレノアが静かにアレンを見つめた。その瞳にあるのは、諦めではない。傲慢なまでの、彼女なりの優しさだった。


「私はもう決めたの。だから、あんたまでバカなことしないで。……あんたは『世界』を選びなさい」


 あんたには生きていてほしい。そう告げるエレノアの覚悟を、しかしアレンは、ふっと呆れたように鼻で笑い飛ばした。


「世界か、エレノアか、だ?」


 アレンはゆっくりと、歩みを進める。

 一度だけ、首筋まで青く染まりかけたエレノアを見た。

 それから、天を突く巨大な世界OSのサーバーを見上げた。


「……は?」


 心底つまらなそうに、アレンは吐き捨てた。


「何だそのクソみてえな選択肢」


 壊れたから捨てる。動かねえから諦める。そんなのは素人の仕事だ。使えなくなったガラクタを二つのうちどっちか捨てろだと?

 使えるパーツを集めて、動かねえツラしてる大元システムごと修理して動かすのが、俺たちジャンク屋の仕事だろ。


「アレン……!?」


 ミラの制止の声も、エレノアの驚愕の視線も無視して、アレンは真っ直ぐに突き進む。

 エレノアの右半身を侵食する、青白い数式の光。その不気味な輝きの真ん前まで来ても、男の歩調は1ミリも乱れなかった。


「待ちなさいアレン! 近づいたらあんたの因果までシステムに――」


「うるせえ。ジャンク屋(俺たち)をナメるな」


 ガチン、と。


 重厚な金属音が、神域の空間に鳴り響いた。

 エレノアが握り締めていた真鍮の杭。その上から、アレンは自身の『真鍮の右腕』を、躊躇いなくガチリと重ねて掴み取った。


 その瞬間、世界が激変した。


 ピキピキピキ、と空間が悲鳴を上げる。

 これまで理路整然と青白く明滅していた世界OSの巨大なサーバー全体へ、アレンの右腕から溢れ出た『真鍮色の亀裂』が、猛烈な勢いで走り出した。


【UNKNOWN ERROR】

【UNDEFINED CAUSALITY】

【SYSTEM REJECTED】

【ERROR】

【ERROR】

【ERROR】


 世界のすべてを管理していた絶対的な神が、初めて理解不能なバグと直面し、狂ったようにエラーメッセージを乱舞させる。世界OSが、明確にパニックを起こしていた。


 サーバーが鳴動する。

 空間が裂ける。

 赤いエラー光が神域を埋め尽くす。


 剥き出しのシステムが悲鳴を上げて壊れ始める光の中で。

 エレノアは、重ねられた真鍮の温もりに目を見開き――それから、本当に嬉しそうに、ふっと呆れたように笑った。


「……本当に」


「バカなんだから」




(第38話:『二者択一』 ・ 完)

(次回「第39話:システム・リブート」へ続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ