海の家『マダム向けの巨大メスガキおじさん』
今年の夏はメスガキが熱い。
そう聞きましたので、やってきました海の家、メスガキおじさん喫茶。
ゲーム喫茶やメイド喫茶、色々な喫茶店があると聞きましたが、まさかこんな時代も来たんだなぁ……なんて感慨深くなりながら、海の家に行ったわけなんですよ。
そしたらなんですか。
どうみても竿役にしか見えない汚く太ったおっさんが、女児コスして海の家の中をせこせこ走り回ってるじゃないですか。
「いらっしゃーい。ざぁこおじさん♡」
「好きな席に座ってねぇ、ざぁこざぁこ」
そんな風に接待するんですよ。
焼きそばのヘラ持ちながら
もうね、激怒ですよ。
激おこぷっちんプリンですよ。
お前らメスガキを舐めてるのかと。
そういうわけで、つい説教してしまったわけですよ。
ええ、皆も思ってたでしょうから、代わりに私が説教しますよ。
お前らはメスガキになり切れてないって。
まず、女児服を着てる程度でメスガキに成れたと思うなと。
それに、『ざぁこ』と言えばメスガキだろ? なんて安直で舐めた態度も腹立たしい。
もう舐められ過ぎてベロベロになるくらいにムカつきますよ。
メスガキをキャンディーか何かと勘違いしてるんじゃねぇのかよと。
そう……ちゃんと適切なメスガキ衣装を身に纏い、言葉遣いも罵倒になりつつもボキャブラリーを増やす。
それでこそメスガキでしょうに。
あ、申し遅れました。
私メスガキ道免許皆伝の大道寺権三郎門松と言います。
気軽にまっちゃんとお呼び下さいませ。
え?
当然男ですよ?
名前でわかりますし、そもそも私が学んだ流派は『メスガキ道』じゃないですか。
メスガキでなく、メスガキ道。
だから男なんですよ。
完璧な理論ですね。
というわけで、私プロデュースでのメスガキ指導が始まったわけですよ。
教え子はこれで415411人目。
私もそろそろ自分の教室を持つことを考える時期ですね。
いやはや感慨深いものです。
感慨深いと言えば、メスガキって才能なんですよ。
わかります?
まず、女の子であること。
可愛いこと。
若いこと。
たったそれだけで、他者より一歩分メスガキです。
私のような三メートル・八十百五十キロ・握力二千キロの人間ではメスガキになるためとはハードルの高さが違うということになってしまいます。
それでも、メスガキになることはできます。
私が保証しましょう!
それに、中には私のようなどこにでもいる路傍の石とは異なり、本物の原石だっています。
今回は皆さまのメスガキ化育成計画のモチベーションアップのためそのお話をしましょう。
彼の名前は大十字歌舞兎。
私の指導の元メスガキ道免許皆伝を手にし、メスガキリンピック金メダルを取った若き大天才です。
ええ、そうです。
きっと皆さまも一度はその名を聞いたと思います。
なにせメスガキリンピックですからね。
知らない人なんていないでしょう。
それでも、彼は金メダル程度では我慢できなかったんです。
今でも……彼の言葉は覚えています。
『煽りてぇ……年下の女の子になっておっさんを煽って煽っておちょくりてぇ……』
そう、彼は言ってました。
魂がね、きっとメスガキだったんですよ。
そういうわけで、彼の言葉に私も魂が震えて、彼専属のメスガキ指導おじさんになったわけなんです。
ああ、今はもう引退してますのでご安心を。
もう、彼には私など不要ですから。
そうして私の指導の元、ついに彼はその境地にたどり着いたんです!
その、空間を断裂する斬撃を。
え?
何かおかしかったですか?
いえ、メスガキですから剣術は関係ありませんのでご安心を。
でも彼、大十字歌舞兎はメスガキ道免許皆伝であると同時に大十字流抜刀術の師範でしたので。
メスガキの愛と彼の剣はその限界を超えた。
間違いはないですね。
私程度だってリンゴくらいなら滅っ! することが出来ますから。
それで空間を断裂した彼は更に己が剣に磨きをかけて……。
とうとう異世界転生したわけですよ。
私にはわかりませんが、それが今の流行らしいじゃないですか。
いやぁ、今の若い人は凄いですね。
みんな異世界に行く手段を持っていて。
これも恵まれた時代という奴ですかね。
それで、彼は私に別れを告げ、異世界に向かって――次に会った時には立派なメスガキになってましたね。
ピンク色の髪で低身長の女の子になって。
ええ、魔王をぶん殴って秘宝を奪って、そのまま戻ってきました。
向こうでは帰らないようにしたかったらしいですが、空間断裂出来ますからね。
閉じ込めることなんて出来るわけがありません。
そうして戻ってきて、気に入ったおじさんを煽りに煽って、今でも立派な二児のママになってますよ。
ちなみに私の嫁です。
そんなわけで、メスガキ道に果てはありません。
私も協力しますから、皆さんも立派なメスガキになって煽ったりおちょくったりいちゃついたりわからされたりしてくださいね。
そうして数週間。
厳しい修行の末――海の家は潰れた。
あまりに真に迫ったおっさん迫真のメスガキは、ただただ気持ち悪いだけだった。
なんだこれ。
……なんだこれ?
何でも良いけどみんなの所為だから認知して。




