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うっかり短編と連載間違えたからもういっそここを怪文書製造室とする  作者: あらまき


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8/10

異世界転生――しませんでした!


 いや、これ絶対異世界転生する流れだったでしょ?


 え? 違う?


 違うのかぁ……。


 はいどうも初めまして、元田中です。

 今は幽霊です。


 何があったのかと言いますと、色々長くなるんですが……まあ端的に言いますと、ピタゴラトラック事故に巻き込まれました。


 えっと、確かまず、風が吹いて生放送のアイドルの目に埃が入りまして、それを撮影していたスタッフが室内なのになんで風と風対策を始めて……。

 そしてそのあと六十工程くらい連鎖が発生し、最後にその影響でトラックがハンドル操作を誤って、私に直撃しました。


 こんな天文学的な偶然、ありえないでしょ。

 だから異世界転生のフラグと思ったわけなのですが、ただの天文学的偶然でした。


 異世界転生なんてなかった。


 代わりに幽霊はありましたけどね。

 ふわふわとした霊魂みたいな感じになってますね、私。


 今、私の足元でぴーぽーぴーぽーと私の遺体が救急車に運ばれてたりします。


 熱心に頑張ってくださってますけど、まあぶっちゃけ皆諦めてるでしょう。

 なにせ私の身体、『田/中』になってますんで。


 ええ、ただし真っ二つだぞ? です。

 むしろトラック衝突で原型が残っているだけ奇跡かもしれません。


 というような事情で迷える幽霊となったわけなのですが……なんか、向こうから綺麗なものが見えますね。

 キラキラして、神々しい感じ。


 あれが天国とかいう場所なのだろうかと一瞬思いましたが、たぶん違いますね。

 なんか、こっちに近づいてきてますので。


 というか思ったより近かったですね。

 なんか、小さいのが傍まで来ました。


 キューピット? みたいな感じの奴。

 某ニチアサ女児アニメのマスコットみたいなサイズの、羽を生やしたデフォルメ女の子。


 その子は両手を組み、祈るような姿勢でこちらを見てますね。


「迷える魂よ……」


 あ、どうも田中です。


「迷える魂田中よ……」


 よし、意思疎通は取れる。


 それで、何でしょうかね?

 ご用件を伺っても?


「私は神の命により、貴方の元に派遣されました。迷える田中よ」


 なんか魂抜くだけで一気に意味合い変わりますね。

 人生の迷子というか人生が終わったのに迷子なんですけど。


 ああ、でも天からの派遣ってそういうことですね。


 私の死が間違ってたから何かの救済とか、生まれ変わりとか、そういう流れ的な。

 流石にあの死に方は普通じゃありませんでしたね。


 三段アイスを片手にムーンウォークを披露しながらじょんがら節歌って死ぬとか。


「あ、別に救済とかありませんよ? 貴方の死は神のミスでもなければ誰かの意図でもない偶然ですので」


 そっかぁ。

 あれ、ただの偶然なのかぁ……。


「はい。全部偶然です。強いて言いますと、全人類面白死因ランキング第三位にノミネートして、多くの神が笑い死にしそうになりはしましたが」


 えぇ……神ってそんな感じなんだ。

 ちょっとなんか幻滅……。


 そしてあれで第三位なの?

 自分的にはもうこれより上はないと思ってたのに……。


「世界は広いということです」


 何故自慢げなのですか。

 それと、天使様は一体何の御用で私に――


「端的に言えば……」


 言えば?


「遅刻しました」


 ……遅刻?


「はい。まさかこんなに早く、しかもこんな方法で貴方が死ぬとは思ってなくて……」


 なるほど。

 というか今ちょっと笑いを堪えてませんか?


「そんなわけないじゃないですか」


 そうですか。

 ところで、遅刻ということはもしかして私、貴女が間に合ってたら生存していた可能性があります?


「ありませんね。私、そんな力ある天使じゃありませんので」


 じゃあ、貴女は一体どんな天使なのですか?


「これは申し遅れました。私、漫画表現によくある『頭の中に現れるタイプの天使』でございます」


 ああ……よく見ますね。

 天使と悪魔が現れる奴。


「はい。それです」


 じゃあ、悪魔もいらっしゃる感じ?


「そのはずなのですが……遅刻してるみたいですね。やれやれ。これだから地獄で生きてる奴は……」


 この、正しい発言なのに鼻に付く感じって、何て言えば良いんでしょうね。


 そうして、しばらくしてから現れた悪魔は、ぺこりと深く頭を下げました。


「このたびはご冥福をお祈りいたします」


 小さな身体に涙を溜めながら。

 その姿を見ると、闇堕ちも良いなぁという気持ちになってきますね。


 ところで、どうして遅刻したのか理由を尋ねても?

 ちなみに天使さんは「なんとなく」でしたが。


「まず、遅れたことの謝罪を。申し訳ありませんでした。それで遅刻の理由なのですが、亡くなってすぐは混乱しているだろうからと思いまして。勝手な判断をして申し訳ありません……」


 ちらりと、隣の天使と見比べる。

 雰囲気は煌びやかだけど、まるで寄り添う気持ちもないドヤ顔天使。


 対し、悪魔は憐憫を持ちぺこぺこと。


 やっぱりロウルートは駄目ですね。

 カオスルートこそ至高。


 というわけで魂を悪魔さんに売りたいのですが、どうしたら良いでしょうか?


「ちょっ!? こ、困ります。正式な契約もなく……。それに自分の魂ですからもっと大切にしてください」


 ぷんすこと叱られてしまった。


 可愛い。


 そう言ったら照れた。

 可愛い。


「私は?」


 天使がそう尋ねて来た。

 そっと目を伏せておいた。




 というわけで、天使さん、悪魔さん。

 わたくしめは何をすればよろしい感じでしょうか?


 そう尋ねると、二人……二人? は、顔を見合わせる。

 天使は退屈そうに、悪魔は困った顔に。


 そして悪魔様は、こうおっしゃられた。


「いえ……その……私達、人間の頭の中に現れるタイプですので、魂だけとなった田中様に出来ることは……」


 え? 頭の中に現れてくれない?

 がーんだな。

 出鼻をくじかれた。


「すいません……。というわけですので、とりあえず死後のプランニングについて上司と相談しました結果、幾つかお勧めの方針を定めました。とりあえずこちらをご確認下さい」


 おぉう……天界安楽コースやら地獄観察コースやら六道学習コースやら色々ある……でもこれ悪魔さんのお仕事なんです?


「そう言うわけでもありませんが……袖振り合うも他生の縁と言いますので……」


 可愛い。

 もう悪魔さん結婚して。

 もしくは魂を持ってって。


「だから魂は大切にしてください! 最後の財産なんですよ! け、結婚は……その……もっと親しくなってからで……」


 可愛い。


 というわけで私、どうしたら良いです?

 悪魔さんと一緒にいるために。


「え、えぇ……でも私、悪魔だから……」


 そう言って困っていると。


「別に一緒に居れば良いんでは?」


 そう、天使さんは呟きました。


「いや、駄目でしょう……。私達は天使と悪魔という立場なんですから……」

「それ、何か問題ありますか? むしろ、人と悪魔が一緒にいるなんて面白――素晴らしい愛じゃないですか」


「えぇ……他人事だと思って楽しんで……」


 そう言って顔を赤らめ、困った顔の悪魔さん。

 可愛い。




 そうして数日後……。


 とある場所にて、男は財布を拾う。

 その瞬間、頭の中に天使が現れ囁いた。


『誰かが困っているはずです。すぐ、警察に届けるのです』


 また次の瞬間には、悪魔が現れ囁いた。


『ば、場所を覚えて報告するのです。どこで落としたか分かった方が発見しやすいと思います』


 ……いや、これ悪魔か?


 というか意見一致していて出てくる意味ないじゃないか。


『あ、でしたら私が甘言を囁きましょうか? 一枚くらい抜いてもバレませんって……クレジットカード』


 いや、バレるだろ。

 というかいきなりクレカ窃盗勧めるっておかしいだろ!


 刻めよ! 段階を!

 普通千円札一枚とかで、刻むだろ!?


『人間って面倒ですねぇ』


 お前天使じゃないだろ!

 ペ天使だろ!?


 そうこうしてると再び頭の中に……普通のおっさんが。

 いや誰だよ!?


『あ、どうも地縛霊の田中です』


 なんで地縛霊が混じってるんだよ!?


『ストーカーですので』


 こえぇよ!

 死んでまで何をストーキングしてんだよ!?


『失礼な。ちゃんと死んだ後、本人の許可を取ってストーキングしてますよ』


 もうわけわからねぇよ。

 わけわからないからお前らまとめて消えてくれよ……。


『はーい。そうそう。そこのコンビニに今警察の人いるから声かけたら良いと思うよー』


 そう言ってすーっと消えていく天使と悪魔と田中。


 何か田中が一番有用なアドバイスをしていって、色々解せぬ気持ちのまま男はコンビニに向かった。


 丁度銀行強盗の対処中だった。

 男は田中を恨んだ。


ごめんなさい。


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