↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とんでもスキルで魔国建国 ~ネットスーパーの供物で魔王を餌付けしたら、最強のグルメ大国ができました~  作者: 限界まで足掻いた人生/大場 雷怒


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/48

第39話:天使のシフォンケーキ

デヴォンの「天龍の食卓」の前に広がる緊迫した空気。聖女マミは、震える手で聖杖を握りしめ、自分を誘惑する「油の香り」を必死に振り払おうとしていた。


「いいですか、レン殿。……先ほどの鶏肉は、不意打ちのようなものです。私の信仰心は、あのような脂ぎった暴力に屈するほど安っぽくはありません!」


マミの頬は赤らみ、目はわずかに潤んでいる。フライドチキンの衝撃で理性が揺らいでいるのは明白だったが、彼女は「聖女」としての最後の意地を張っていた。


「わかったよ、マミ。なら、脂っこくない『清らかなもの』なら文句はないんだな?」


レンは不敵に笑い、厨房の奥へと引っ込んだ。


神の指先と「やかん師匠」の監視

厨房では、レンが万象市場(ネットスーパー)の最高級ラインを操作していた。


極・比内地鶏の卵:濃厚なコクと、シルクのようなキメを持つ卵白。


特選・極低アミロース小麦粉:口に含んだ瞬間、雪のように溶ける魔法の粉。


アルプス産・天然バニラビーンズ:天界を思わせる高貴な香り。


その時、ミナは再び全身の毛を逆立てた。

ケンタの背後に立つ、あの「白髪のやかん師匠」の霊が、今度はオーブンの目の前に移動していたからだ。


「(……ま、また来た! あの白いTシャツのおじさん、今度はオーブンの温度設定を睨みつけてる……!)」


ミナはガタガタと震えながら、柱の陰で小さくなった。師匠の霊は、抱えた銅製のやかんをコンロの上で鳴らし、完璧な予熱が行われているか厳しくチェックしている。彼にとって、製菓もまた火と温度の真剣勝負(バトル)なのだ。


調理:究極のふわふわシフォンケーキ

レンは卵白を泡立て始めた。一点の曇りもないメレンゲは、まるで冬の朝に降り積もった新雪のように美しく、弾力に満ちている。そこに卵黄とバニラを合わせた生地をさっくりと混ぜ合わせ、オーブンへと滑り込ませた。


じっくりと熱が通り、生地が膨らんでいく。

厨房から漂ってきたのは、先ほどの揚げ物の暴力とは正反対の、優しく、甘く、鼻腔をそっと撫でるような「慈愛」の香りだった。


「……っ!? なんという……清らかな……」


店の外で待つマミの鼻腔を、その香りが貫く。それは彼女が教会の奥深くで嗅いできた高価な香油よりも、はるかに気高く、心を安らげる香りだった。


実食:聖女の陥落と真の救済

レンは焼き上がったシフォンケーキを型から外し、一切れ皿に載せた。生クリームすら添えない、素材の力だけで勝負する究極の一皿。


「ほら、マミ。これが俺の考える『浄化』だ。食ってみろ」


マミは吸い寄せられるように皿を受け取った。フォークを刺すと、シュワッという微かな吐息のような音が聞こえる。一口、口に運んだ瞬間――。


「あ…………っ……」


マミの体から、眩いばかりの神聖な魔力が溢れ出した。だが、それは戦闘のためではない。


噛む必要すらなかった。舌の上に乗せた瞬間、ケーキは実体を失い、甘い香りの霧となって消えていった。厳格な規律、硬いパン、冷たい水。彼女が「聖なるもの」と信じて耐えてきた苦難が、この一切れの優しさによって、すべて包み込まれていく。


「……これ……これこそが……救済です……」


マミは皿を抱えたまま、その場に膝をついた。目からは大粒の涙が溢れ、石畳を濡らす。


「神よ……私は、何を間違えていたのでしょう。こんなに温かく、優しい世界が、ここにあるというのに……っ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。