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とんでもスキルで魔国建国 ~ネットスーパーの供物で魔王を餌付けしたら、最強のグルメ大国ができました~  作者: 限界まで足掻いた人生/大場 雷怒


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第38話:暗殺者の隠し味

デヴォンの「天龍の食卓」は、今日も朝から異様な熱気に包まれていた。黄金のフライドチキンの虜となった聖女マミが、修道服の袖を油で汚しながら「これも修行、これも試練です……」とブツブツ呟きながら三本目のドラムスティックを頬張っている。


そんな平和(?)な光景の裏で、一人の男が厨房の影に潜んでいた。名をゼロ。内務大臣アリウスが、レンを確実に始末するために巨額の報奨金で雇い上げた、王国随一の毒使いである。


「……ふん、料理人風情が。貴様の命も、このスープ一杯で終わりだ」


ゼロは給仕係の隙を突き、大鍋で煮込まれていた特製コンソメスープに、無色無臭の禁忌薬「千夜枯れの魔毒」を数滴落とした。それは魔力を帯びた猛毒で、一口啜れば五臓六腑が灰に帰すと恐れられている。


違和感と「やかんの師匠」の殺気

その瞬間、厨房の空気がピリリと凍りついた。


「……? なんだ、今の妙な気配は」


ミナがピクリと耳を動かし、毛を逆立てる。彼女の視線の先には、相変わらずケンタの背後で腕を組み、不機嫌そうに佇む「白髪のやかん師匠」の霊がいた。


師匠は毒が投入された鍋をじっと見つめると、抱えていた銅製のやかんを激しく震わせ始めた。霊感のない者には聞こえないが、厨房には「……俺の弟子が仕込んだスープに不純物を入れたのはどこのどいつだ、やかんで頭を割るぞ」という、沸騰したお湯のような凄まじい怒号が響き渡っている(ような気がした)。


レンもまた、お玉でスープを掬い、香りを嗅いで眉を寄せた。


「……ちっ。変な雑味が混じったな。内務大臣の差し金か?」


レンは動じない。彼は懐のスマートフォンを取り出し、万象市場(ネットスーパー)の「プレミアム食材コーナー」を素早く検索した。


プレミアム薬膳セット(一等品):あらゆる毒素を分解し、深いコクと滋養へと変換する幻の漢方群。


「ポイントなら余ってるんだ。……よし、注文完了」


調理:毒を極上の旨味に変える魔法

レンは光と共に現れた、見たこともない形状のキノコ、乾燥したクコの実、そして門外不出の熟成高麗人参を次々と鍋に投入した。


「おい、何を……!? 毒が入ったスープにさらに得体の知れないものを入れるのか!?」


物陰で見ていたゼロが、思わず声を上げそうになる。

だが、次の瞬間。大鍋から立ち上ったのは、これまで経験したことのないほど深く、温かく、そして魂の奥底を優しく撫でるような芳醇な香りだった。


魔毒の成分が薬膳の酵素と激しく反応し、その毒性を完全に中和。それどころか、魔毒特有の「魔力濃度」が、スープのコクを通常の十倍以上に引き上げる触媒へと変化したのだ。


「……よし、いい出来だ。ミナ、あそこの柱の影で震えてる男に、この『特製・魔薬膳スープ』を出してやれ」


実食:暗殺者の自白

「……っ、なぜ私がバレている……いや、それよりもこの匂いは……」


差し出されたスープを前に、ゼロは困惑した。自分の入れた毒は「千夜枯れ」のはずだ。なのに、目の前にあるのは命の輝きそのもののような金色の液体。


彼は自暴自棄になり、毒が入っているはずのスープを一口、思い切り啜った。


「ッ――――!!!」


瞬間、ゼロの全身を熱い衝撃が駆け抜けた。

喉を通り抜けるたびに、こびりついていた殺意や汚れが洗い流されていくような感覚。スパイスと薬膳の苦味が、肉の旨味を最大限に引き立て、最後にはハチミツのような柔らかな甘みが余韻として残る。


「う……うまい。なんだ、この温かさは……。俺は、ずっと冷たい闇の中で、人を殺すことだけを考えてきたというのに……っ!」


ゼロはボロボロと涙を流し、その場に膝をついた。


「……レン殿。申し訳ない! 私を雇ったのはアリウス大臣だ! 毒を入れた……だが、こんなに美味いものを、俺は、俺は殺したくない……っ!」


暗殺者ゼロの改心。それは、どんな司法制度よりも確実に、一人の悪人を救い出した瞬間だった。

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