第四十一話:麒麟の鍵
「信じられない。お前一人で鉄爪熊の半分も平らげるとは」
洞窟の中、焚き火の上には串に刺した肉が焼かれていた。問刀のそばには、いくつかの骨が置かれていた。
問刀は指についた脂を舐めると、笑みを浮かべた。「大したことじゃない。レベルが上がると体が強化され、胃も強靭になる。より多くの食べ物を収容でき、消化も早くなるんだ。」
「この鉄爪熊は金属属性で、俺と同じ元素属性だ。その肉を食べれば、体の変異が早まり、エネルギー吸収に有利になる。」
「もし怪我をしたなら、同じ属性の妖獣の血肉を食べた方が、薬草よりもはるかに効果がある」と問刀は言った。
一方、藤原桜司は肉を一口食べて、噛み切れないことに気づいた。
「硬すぎる。牛肉の10倍は硬い。噛み切れない」
「妖獣の肉はそういうものだ。体が変異しているため、普通の獣のような旨味はない。だが、無理やり飲み込めば、普通の獣の肉よりもはるかに体に良い。」
問刀が説明した。
「わかった、試してみるよ。」藤原桜司は苦々しい表情を浮かべ、そのまま飲み込んだ。
おそらくこのような肉を味わうのは初めてだったのだろう、彼の胃は突然、まるで火炉のように青い光を放った。
「うわっ、胃の中でジュージューと燃える音が聞こえる。」藤原桜司は驚いた。
「体が未知の物体に適応できない時、丹田のエネルギーが自動的に体の各部位に作用し、胃にそのような反応を引き起こすのだ。」
藤原桜司は火属性であるため、彼の胃は今まさに火炉のように燃え上がり、食物を完全に吸収していた。
しかし、明らかに彼はこの食べ物を好んでいないようだった。
そのため、この鉄爪熊の大部分は問刀に食べられてしまった。
翌日。
未明、太陽が昇った。
馬車も時間通りにこの谷に到着した。そして藤原桜司と問刀も、とっくにここで待っていた。
二人の無表情な様子から、夏山は昨晩何が起きたのかを察したようだった。
「お二人の様子を見る限り、特に影響は受けていないようですね。ただ、藤原桜司、君の武器はどうしたんだ?」
夏山は笑った。
「これからの訓練では、君の宝器である龍槍を使ってもいい。だが、私の許可がない限り、宝器に備わっている特殊な武法は極力使わないように。」
夏山は馬車の車内から、長さ2メートルの青い美しい箱を取り出した。
その箱を見た瞬間、藤原桜司の心には安心感が広がった。
龍槍の威力さえあれば、藤原桜司は自ら手を下すことなく、3階級の妖獣を簡単に倒すことさえできる。
何しろ、これは5億両の黄金を費やして作られた上等な完成品の宝器なのだから。
「それでは、乗ってください」夏山は笑った。
藤原桜司と問刀は馬車に乗り込み、共に赤葉荘園へと戻った。
「先生」
その時、夏山は馬車から降りたが、藤原桜司と問刀は馬車に残った。
「私と問刀には、もう一つ用事がありますので、これにて失礼いたします。」藤原桜司は一礼した。
「ああ、気をつけて。」夏山は笑った。
すると、馬車は赤葉荘園を後にした。
数時間後、馬車は目的地である蒼都府に到着した。
「麒麟の鍵は、我が藤原家の代々伝わる宝物であり、私が絶対的に信頼する者にしか見せることはできない。私の師である夏山でさえ、その情報を一切明かすことはない。」藤原桜司は、馬車の窓越しに外を眺めながら言った。
「ここは蒼都府、私の父・藤原征宗の縄張りだ。だから、金風群よりもはるかに豪華なのだ。」
窓の外には、壮大な古建築が並んでおり、その光景は実に圧巻だった。帆船を模した数階建ての酒楼もあれば、古木を模した独特な造りの建物もあった。
金風群ではめったに見られないような壮大な建築物も、蒼都府ではごく普通の家屋のように至る所に見られる。
30分後、馬車はゆっくりと止まった。
窓の外には、もはや通りではなく、厳重な兵士が警備する重要な区域が広がっていた。
巨大な石門の前で、藤原桜司と問刀はすでに馬車から降りていた。
その石門は単なる目印に過ぎず、その上には「天山陵墓」という四文字が刻まれていた。
「ここが、我々藤原一族が先祖を祀る陵園だ。中には、我々の先祖全員の墓が埋葬されている。」
藤原桜司は、前方の山々を指さして言った。目の前の山々は深緑色で、植物が生い茂っていた。
それぞれの山が一つ一つの墓であり、通常、藤原家の先祖の一人がその中に埋葬されている。
そして、山々に囲まれた場所には、「祭殿」と呼ばれる大理石造りの建物があり、それは祭祀を行う殿堂で、非常に壮大で巨大だった。
どのような技術によって、このような建築物が造られたのか想像もつかない。
この祭殿の中には、藤原家のすべての先祖の位牌が安置されており、麒麟の鍵もまた、先祖たちの位牌と共に置かれている。
「麒麟の鍵は、上等な残品である宝器であり、木川国において、国王を除けば最高権力の象徴でもある。先祖たちと共に安置されることは、この上ない栄誉である。」
問刀は、その祭殿を遠くから眺めていた。彼の鋭い視線は、この陵園内に多くの藤甲兵がいることに気づいていた。
これらの藤甲兵の胸には、黒い鉄製の徽章がかけられており、その模様は一本の桜の木であった。
このマークは、彼らが蒼都府に所属する地方の藤甲兵であることを表していた。
「この陵園内には、蚊一匹さえも侵入できないよう、五千人の藤甲兵が駐屯している。」藤原桜司は笑った。
見れば、前方の石門の石柱の下には数人の藤甲兵が立っており、入り口は木製の柵で塞がれていた。
「そのうちに、君のピンクの令牌『桜花信令』を出しなさい。そうしなければ、藤甲兵たちは君を中に入れはしない。」
藤原桜司がそう言うと、前へと歩き出した。
「若殿!」 それまで厳粛だった藤甲兵たちは、藤原桜司の姿を見ると、慌てて頭を下げた。
「止まれ!」 問刀はそう大声で制止されたが、ピンクの令牌を提示し、藤甲兵にじっくりと確認された後、ようやく入ることを許す合図が出された。
「桜の令牌をお持ちということは、若殿が最も信頼する方ですね。それでは、どうぞお入りください。」
藤甲兵の表情も、厳粛なものから和らぎ、笑顔を浮かべた。
ついに大理石の祭殿の中に入ると、その建物が途方もなく高く、非常に壮大なものであることに気づいた。
藤原桜司の案内によって、ようやく内部に入ることができた。
内部のどの通路にも、藤甲兵が立ちはだかっていた。
しかし、藤原桜司の姿を見れば、彼らは道を譲った。
「この祭殿内部の道は、迷宮よりも複雑だ。道を間違えれば、迷子になるだけでなく、至る所に致命的な罠や仕掛けが仕掛けられている。」
「だから、私の案内なしには、安易に中に入らないほうがいい。」
藤原桜司はそう言った。
やがて、ある部屋に到着した。その部屋は極めて広大だった。前方には、階段のように高低差をつけて多くの木製の位牌が並べられていた。
最上段には、遠い祖先が、下段には、より近代の祖先が安置されていた。
藤原桜司はまず祖先たちに向かって一礼し、それから空に向かってこう言った。
「先祖たちよ、今回、麒麟の鍵を少しお借りしたい。お邪魔して申し訳ない。」
すると藤原桜司は最前列へと向かい、つまり階段を登るように歩いていき、最前列にある一つの石台へとたどり着いた。
特殊な設計により、一筋の光が、まるで花のように、この石台にある唯一の宝箱を照らしていた。
宝箱を開けると、中には生き生きとした麒麟の鍵が入っていた。
その鍵は、何にも支えられずに宙に浮いており、実に奇妙だった。
しかも、宝箱が開いた瞬間、まるで生き物のように動き出し、走り出したのだ。
「麒麟の鍵。もし他人がこれを手に入れようとしたら、間違いなく逃げ出してしまうだろう。藤原家の血筋を持つ者だけが、これを握ることができるのだ」
藤原桜司はそう言うと、麒麟の鍵を手に掴んだ。そして、ポケットから手のひらサイズの宝箱を取り出した。その表面には、十数個もの鍵がかけられていた。
「開け!」藤原桜司は静かに言った。すると、十数本の金色の光が、まるで糸のように、麒麟の鍵から鍵穴へと射し込んだ。
「カチッ!」
一瞬にして、すべての鍵が同時に外れた。
続いて、藤原桜司は麒麟の鍵を石台の上に置いた。まるで麒麟が生き返ったかのように、それは空中を駆け抜け、元々の収め箱へと滑り込んだ。
錠前をすべて外した後、宝箱を開けると、中には精巧な品が横たわっていた。
「これは『探宝磁盤』だ。中級の欠損宝器である。この宝物を身に着けていれば、近くの宝物を検知することができる。」
この宝物は手のひらほどの大きさで円形をしており、羅盤のように多くの目盛りが刻まれている。ただし、針は全部で3本ある。
1本目の針は属性を示す。2本目の針は年代と品質を示す。3本目の針は宝物の位置を示す。
「宝探しの磁気盤は、古来の宝物であり、製作の難易度は極めて高い。製作法が失伝しているため、市場ではほとんど出回っていない。その希少性から、1000万両の金で売れるはずだ。」
「ただ、少し破損しているようで、その能力に影響が出るかもしれない。」宝探しの磁気盤の縁は欠けており、完全な状態ではなかった。
突然、3本の針がすべて動き出した。
「火属性、100年物の下等宝石、真前方に。」
藤原桜司は針の指示に従い、石台の下にある橙色の石を見つけた。
「どうやら、今のところまだ近くの宝材の位置を検知できるようだ。もし完全に修復できれば、宝器の鑑定にも使えるだろう。そうなれば、その価値は倍増するはずだ。」




