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刀武士  作者: ノナ
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第三十一話:重傷

  貪鬼は、まるで凧のように、数人のボディーガードの頭上を飛び越えた。ボディーガードたちは跳び上がり、武器で彼の体を打ち据えた。

  「ガシャン!」

  貪鬼の体に傷ができたが、奇妙なことに、その傷は黒く、血は一滴も流れていなかった。

  貪鬼は再び鷹のようにボディガードの群れに飛びかかり、ボディガードたちはひよこのように逃げ惑った。その時、貪鬼は群れの真ん中に着地した。ボディガードたちは雄鶏のように一斉に武器で彼の体を打ち据えた。

  「プシュッ!」貪鬼の体には、まるで死体のように傷口が現れたが、血は流れていない。しかも、彼の体には何の影響も及んでいないようだった。

  「ハハハ~」「貪鬼」は恐ろしい笑いを上げた。「捕まえたぞ!」

  「下等武法:障魇!」貪鬼の体から、イカが墨を吐くかのように黒い濃煙が噴き出し、まるで意思があるかのように数人の目の中に潜り込んだ。

  「これは!」突然、全員の視界が漆黒に包まれ、何も見えなくなった。聞こえるのは貪鬼の不気味な笑い声だけだ。

  「ああっ!」悲鳴が次々と上がり、ボディーガードたちが次々と地面に倒れていった。

  問刀もまた、この武法の影響を受け、目には夜のような闇しか残らず、何も見えなくなっていた。

  「ふふっ。」今、貪鬼は死体の1メートル上空に浮かんでおり、すべての死体から、それぞれの魂が彼の口へと飛び込んでいた。

  「美味い。」貪鬼は満足げな表情を浮かべ、視線を問刀に向けた。

  今の問刀は、何も見えなかったため、その場に立ち尽くすしかなかった。

  「さて、お前が最後だな。18歳くらいに見えるな。これほど若い魂は、より美味で、俺をさらに強くしてくれる。」

  貪鬼は、まるで黒い鷲のように問刀に飛びかかり、その速さは残像しか残さないほどだった。

  「死ね。」貪鬼の口元から涎が垂れた。

  一方、問刀は視界がぼやけていたため、冷静さを保ち、耳を澄ませて周囲の音を鋭く聞き取っていた。

  「ここだ!」

  問刀は無意識に刀を振るった。

  「ガシャン!」視界がなくても、問刀の刀身は、鷹のような貪鬼の鉄の鉤爪を正確に防いだ。

  「ん?」貪鬼は困惑した表情を浮かべた。彼の爪は刃のように鋭く、これまで護衛たちの武器はすべて彼によって折られてきたからだ。しかし、問刀のこの「喰刀」は、極めて堅牢で、到底破壊できるものではなかった。さらに、問刀の力は彼が思っていた以上に凄まじく、刃から伝わる巨大な衝撃力が、貪鬼の体をまるでビリヤードの球を打つように数メートルも吹き飛ばした。

  「なかなかの反応速度だ。しかも、俺がどこから攻撃してくるかを判断できたとは。どうやら、背後から攻撃するしかないな。」

  「シュッ!」貪鬼は風のように問刀の周りを旋回し、突然、問刀の後方から攻撃を仕掛けた。

  「ガシャン!」

  問刀は再び貪鬼を捉え、彼を吹き飛ばして後退させた。

  「なかなかの相手だ。視界を失っても、引けを取らないとは」貪鬼は少し感嘆した。

  「それなら、お前を殺すことで、さらに達成感を得られるだろう。」

  「不滅決!」問刀の体から血のような赤い光が、洪水のように溢れ出した。黒い陰のエネルギーは黒煙と化し、彼の目から飛び出し、視界は正常に戻った。

  「お前は武道二段上級の実力しかないのに、三階級の邪霊である私の攻撃を何度か防ぐことができた。お前の実力と才能は、実に強靭だ。だが、階級差は明白だ。長くは持たないだろう。」

  貪鬼は突然、両手で印を結んで呪文を唱えた。

  「下等武法:定魂呪!」貪鬼の口から、歪んだ魂のような符が次々と飛び出し、問刀に向かって飛んでいった。実に百個もの符が、突然一つに絡み合い、鎖となって問刀を縛り上げた。

  問刀は突然、自分が身動きが取れなくなっていることに気づいた。体に巻き付いた鎖は金属ではなく、魂のような物質だった。

  彼の魂はそれによって制御され、体は動かせなくなっていた。

  「さて、今回はどう抵抗する?」

  貪鬼は得意げに笑った。

  「身体が支配されただけでなく、話すことも、まぶたを一度も瞬かせることさえできない」問刀は心の中で思った。

  これでは、到底抵抗などできない。

  そう訝しんでいる隙に、貪鬼はすでにこっそりと前方に飛んで来ていた。その掌が、問刀の頭部を掴んだ。

  「貪魂喰!」

  貪鬼の口から、陰のエネルギーが渦を巻き始め、回転し始めた。すると、彼の口の中に巨大な引力が生まれ、問刀の体の中から光が浮かび上がり、彼と同じ姿をした光の人影が現れた。それが彼の魂だった。

  「金色の……魂!」問刀の魂を見て、貪鬼は極度の驚きを覚えた。彼はこれまでに千人以上の魂を喰らってきたが、金色の魂を見るのはこれが初めてだった。

  「金色の魂は、彼の魂がこの世界の汚れに染まっておらず、欲望が微塵もないことを示している。だが、男にどうして欲望がないなどあり得ようか?それとも、彼は幼い頃からすでにその基礎を築いていたというのか。」

  「おかしい、どうして飲み込めないんだ!」貪鬼は突然、自分の口から発する吸引力が、問刀の魂を体から引きずり出し、口の中に飲み込むことができないことに気づいた。

  貪鬼は口の中の暗雲のような陰のエネルギーを増幅させたが、結果は同じだった。問刀の金色の魂は微動だにしなかった。

  「まあいい、本当に残念だ。金色の魂を味わったことは一度もないのに。」貪鬼の表情には、目の前の絶品料理を食することができないという悔しさが滲んでいた。

  「それなら、お前の魂を殺してやる。そうすれば、お前も一緒に死ぬだろう。」

  貪鬼は掌を上げた。その漆黒の爪は、まるで死体が変異した爪のようで、問刀の金色の魂へと突き刺さろうとした。

  「ガシャン!」

  突然、巨大な衝撃力が貪鬼の爪を弾き飛ばし、その猛烈な力によって、貪鬼は数メートル後方へと吹き飛ばされた。

  「誰だ?」貪鬼は、見知らぬ者の気配を嗅ぎ取った。

  問刀の目の前には、血のように赤い服を纏った男が立っていた。顔はベールと帽子で覆われている。

  長身のその男は、まるで鮮血のように紅い刃を手に握っていた。

  「お前は誰だ?」貪鬼は訝しげに尋ねた。

  一方、問刀は目の前の男と、その刀を見つめながら、「薄乱刹? なぜ彼が私を助けに来たんだ」

  「私が誰かは重要ではない」薄乱刹は、ベールの下の口元に冷笑を浮かべた。「重要なのは、この男を、お前が殺すことを許さないということだ」

  「お前は何様だ?」貪鬼は激怒し、雷のような怒りの声が周囲の空間を震わせ、人々の心臓までもが震え上がった。

  「私は薄乱刹だ」薄乱刹は、血のように赤い刃を横に構えた。

  「薄乱刹?聞いたことがない」貪鬼の表情は極めて獰猛だった。「俺の縄張りである血戈町には、あらゆる凶悪な連中や殺し屋が潜んでいる。お前のような名前など、聞いたこともない。それだけで、お前が取るに足らないゴミ同然だということは明白だ。」

  「取るに足らないゴミが、よくも俺の邪魔をするとは。血戈町において、お前には俺を見る資格すらないだろう!」

  貪鬼の咆哮は雷鳴の如く、彼は三角凧のように薄乱刹へと飛びかかった。

  「ふふ」薄乱刹は目尻を細めて笑った。自分のレベルが貪鬼に及ばないことは承知していたが、動揺はしていなかった。

  「これは、胧影骸様の御意だ」

  薄乱刹がその言葉を言い終えた時、貪鬼の爪はあと1センチで薄乱刹の首を切り落とすところだった。しかし、その名を聞いた途端、彼は突然動きを止めた。

  そして、殺気立った気配は完全に消え去り、爪を引っ込めると、両手を背中に組んだ。「もしや、胧影骸様の命令なら、彼を放してやろう。」

  「あと、胧影骸様から、この方だけでなく、あの藤原桜司も殺してはならないと命じられている。彼の命令がない限り、誰もこの二人を殺してはならない。」

  薄乱刹が付け加えた。

  「わかった。」貪鬼は気だるげに言うと、凶悪な眼差しを問刀に向けた。「お前、運が良かったな!」 そう言うと、彼は掌を一振りした。

  問刀の体に巻きついていた鎖が切れた。問刀も、ようやく動きを取り戻した。

  「シュッ!」貪鬼は巨大な鳥のように素早く飛び去った。

  一方、薄乱刹は問刀を一瞥すると、冷笑を浮かべ、近くの屋根に飛び乗って、同様にその場を去っていった。

  

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