第十三話:強盗を強盗する?
問刀は宿泊している宿に戻った。宿の裏手には山林が広がっていた。
問刀は山林へと足を踏み入れ、人目につかない人里離れた場所を見つけ、そこを普段の訓練場とした。
早朝、太陽が昇ると、問刀は上半身裸になり、彫像のように完璧な筋肉のラインを露わにした。
彼はゆっくりと「噬刀」を抜き、剣術の練習を始めた。この十三年、毎日がそうであり、一度も途切れたことはなかった。
問刀の体から流れ落ちる汗の粒は、まるで真珠のように、肌から地面へと滑り落ちていった。
彼の呼吸の音も非常に大きく、手元を振るうだけで、一本の木を斬り倒した。
「ふっ!」30分もの間、練習を続けた後、問刀はようやく刀身を鞘に収めた。
その後、彼は傍らにある滝を利用し、勢いよく流れ落ちる水で体を洗い流した。
洗い流した後、問刀は岸辺へと泳ぎ着いた。岸辺には金属製の刀剣が十数本ほど置かれていた。
これらの普通の武器は、それほど高価なものではなかった。
問刀は噬刀を握りしめた。体内の血のような赤い金属エネルギーが血管の中で赤く輝き、掌から流れ出し、噬刀へと注ぎ込まれた。
噬刀も反応し始め、黒い影の輪郭が現れ、強力な磁力を帯びているようだった。
まるで歯のように、黒い影が金属に触れると、瞬く間にそれを飲み込んだ。
わずか数分のうちに、噬刀はすべての金属武器を飲み尽くした。
このプロセスを起動したことで、問刀の体内のエネルギーの大半が消耗された。
問刀が自身のエネルギーの放出を止めるまで、噬刀は正常に戻らず、黒い影は消えなかった。
「宝器の特殊能力は、主人自身がエネルギーを注入して初めて発動するのだ。」
「これほど多くの金属を喰らったせいで、喰刀の重さは10倍になった。」
「本来なら軽々と扱えたはずなのに、今は異常に力が入る。」
問刀は歯を食いしばり、柄を握りしめてゆっくりと喰刀を引き抜いた。引き抜いた途端、刀身は地面に落ち、真っ直ぐに突き刺さり、刃の半分が地中に埋まった。
「噬刀はさらに重くなったが、この方法なら自身の力を強化できる。むしろ、筋骨のエネルギー吸収を促進し、より早くレベルアップできるのだ。」
問刀は両手で刀身をしっかりと握りしめ、苦労して噬刀を持ち上げた。このさらに重くなった噬刀を操るため、問刀の体内でエネルギーがより速く巡り、血管の中の赤い光は泉のように奔流し、その速度は極めて速く、ますます猛烈になっていった。
彼はいつものように、この重くなった刀を使って剣術の練習を試みた。
疲労は増したが、それは筋骨の変容と、自身のエネルギーとの融合を促進することにもなった。
こうして、丸一ヶ月間、訓練を続けた。
一ヶ月後、問刀は重量が十倍になったこの噬刀を、すでに軽々と操れるようになっていた。
太陽が昇る頃。
問刀は噬刀を手に、滝へと向かった。
「ザアアッ!」滝の水流が激しく落下し、轟音のような水音を立てた。
問刀は滝の下へとたどり着き、滝の水流が猛烈な勢いで彼の身体を洗い流した。
今の問刀は、力が数倍に増し、筋骨もさらに強靭になっていた。
彼の段位も、武道二段上級へと突破しようとしており、あと一歩のところまで来ていた。
それゆえ、天から降り注ぐその激流は、 その勢いは洪水を遥かに凌ぎ、あらゆるものを破壊するのに十分だった。しかし問刀の体は、なんとその水流に耐えきった。
今回、問刀は滝の水流に身を任せて刀術を練ることを選んだ。これは彼にとって前代未聞の試みだった。
「ドボン!」一瞬の油断で、問刀は滝の下の水たまりへと流されてしまった。
岸まで泳ぎ、再び元の場所に戻るしかなかった。
そうして、力尽きるまで続けた。
また一ヶ月が過ぎた。
今日も太陽は高く輝き、その陽光の下、滝は勢いよく流れ落ち、水流が水たまりの縁の岩にぶつかって水しぶきを上げ、水霧の中に一本の虹が現れた。
滝の中に立つ問刀の姿は、まるで白い霧に包まれているかのようで、ぼんやりとした輪郭しか見えなかったが、彼が刀術の練習をしていることは見て取れた。滝の水流の勢いが彼に多大な影響を与えているにもかかわらず、彼の体はそれに耐え、熟練した手つきで刀法を練習していた。
「ザッ!」問刀が横一閃、瞬く間に滝の流れを切り裂き、まるで傷口のようにした。
問刀の姿はゆっくりと滝の中から現れ、岸辺へと歩み出た。
日差しで体の水気を乾かしてから、ようやく岩の上に置かれた黒い服を身にまとった。
「 この二ヶ月、噬刀の重さが増しただけでなく、私も滝の下で訓練を積んできた。滝の水が私の体を打ち付ける様は、まるで重りを背負っての訓練のようだった。」
「私の力は数倍に増した。滝による負荷訓練の下、体内のエネルギー吸収力も驚くほど高まった。わずか二ヶ月で、今や私は武道二段上級を突破し、筋骨は完全に脱皮を遂げた。」
問刀は、まだ刀身を鞘に収めていなかった。彼は左手に持った鞘を掴むと、前方へと放り投げた。
「ドーン!」金属製の鞘は瞬く間に一本の木に命中した。「パキッ!」木は折れた。そして鞘は跳ね返り、問刀の手元に戻ってきた。
「私の力は、少なくとも十倍以上は増した。恐らく、とっくに薄乱刹を超えている。」
「今、私と彼の差は、宝器にある。私の噬刀を強化するためには、もっと多くの宝材が必要だ。残念なことに、それを買うだけの黄金が私にはない。もしかすると、別の方法を考えなければならないかもしれない。」
「あと数日で、ボディガード大会だ。私は必ず優勝し、藤原桜司に近づかなければならない。残された時間はもう多くない。」
問刀は刀の柄を強く握りしめ、体が微かに震えた。眼前には、山海村の村人たちが彼を見送る光景と、朧影骸の脅しが浮かび上がった。
「武士として、これが私の信念だ。そしてお前も、私の刀よ。」問刀は噬刀をじっと見つめ、刀身を鞘に収めると、その場を後にした。
夜が訪れ、月が空高く浮かんでいた。真っ白な月光はまるで一盞の明かりのように、闇の中の万物を照らし出していた。
一台の馬車が疾走していた。この馬車に積まれた宝物はそれほど多くないからだ。
そして馬車の前後には、それぞれ数人の騎手が同等の速度で従っていた。
彼らは皆、護衛であり、この馬車の護送を担当していた。
馬車には金属属性の宝材や鉱石が数多く積まれており、総額は約1000両の金に相当した。
この宝材は、金泉町の取引所へ運ばれる予定だった。
屋根の上、問刀は軒先が突き出た部分に腰を下ろし、笠を被って下方の様子を観察していた。
「もし、この荷物を直接奪えば、私は強盗になってしまう。しかし、もし強盗がこの荷物を奪い、私がその強盗を襲えば……ふふ」問刀は、疑問の表情を浮かべたが、答えを見つけたようだった。
「あっ!」突然、馬車の隊列から悲鳴が上がった。
見ると、隅から数本の矢が放たれ、的確に彼らを射抜いていた。
驚いた馬たちはしばらく走った後、立ち止まった。
そして隅から、数人の男たちが弓や弩を手に現れた。彼らは黒い夜行服を身にまとい、顔を覆っていた。
「ハハハ、朝飯前だ。この荷物を奪い、馬も数頭手に入れたぞ。」
盗賊たちは馬に飛び乗り、馬車を人里離れた山のふもとに乗り入れた。
「親分、この荷物は1000両の金に値するらしいぞ。」盗賊たちは馬から降り、馬車の前に集まった。
「あの護衛どもは本当に油断していたな。戦ってもいないうちに、我々の弩矢で射殺してしまった。」 「親分」と呼ばれる盗賊は、片目に刀傷があり、その目には皮肉な表情を浮かべていた。
「武道二段では、弓矢に正面から耐えることはできない。武道二段で変化するのは、筋骨だけだ。武道三段に達して初めて、皮膚や肉体が銅や鉄のように硬くなり、刀や槍も通さず、弓矢も肌に傷一つつけられなくなる。体毛さえも、鉄線のように硬くなるのだ。」
「もちろん、これは金属属性の武士に限った話だ。もし炎属性なら、全身が炎と化し、その高温であらゆるものを焼き尽くすだろう。」
「この荷物は、皆で均等に分け、こっそり持ち出して売りさばくんだ。」傷跡の盗賊が命じた。
「承知しました!」すべての強盗が声を揃えて答え、黒い袋を取り出し、戦利品の分配の準備をした。
「つまり、今のこの荷物は、お前たちのものなのか?」見知らぬ声が聞こえてきた。影の中から、笠をかぶった黒衣の男が現れた。
「お前は誰だ?」強盗の頭目は、この男を見たことがなかった。
「問刀。」黒衣の男は顔を上げ、答えた。それは若く端正な顔立ちだった。
「ふふ、ただの子供に過ぎないな。」盗賊の頭目は警戒を解いた。
「この件は、絶対に漏らしてはならない。殺せ!」
盗賊たちは弩を構え、問刀を狙った。
「それなら、俺がお前たち盗賊を襲うのは、盗賊とは言えないだろうな。」問刀は口元を歪めた。
「ハハハ、本当に死にたいのか!」盗賊たちは怒りを露わにした。そしてすぐに弩から矢を放った。
しかし問刀は、噬刀の刃さえ抜くことなく、ただ鞘だけで、飛んでくる矢を気ままに弾き飛ばし、両脇へと逸らした。
「矢がこんなに速いのに、あいつは全部弾き返したのか?」盗賊たちは驚愕した。
「ああ、言い忘れていたが、たとえ蚊一匹でも、俺は正確に刺し殺せるんだ」問刀は冷笑した。
「蚊を刺し殺す?冗談だろう?」明らかに、盗賊たちは信じていなかった。
「無駄口はよせ、さっさと奴を殺せ。俺たちは戦利品を分け合うんだ」盗賊の頭目は冷静沈着で、動揺を見せなかった。
残りの盗賊たちは弓や弩を捨て、斧や太刀などの武器を抜き出した。
問刀に向かって突進し、彼を取り囲んだ。彼らの武道ランクは皆、二段中級だった。
凶獣のように猛々しく襲い掛かってくる盗賊たちを前にしても、問刀は恐れる様子を見せなかった。
むしろ彼らに向かって、自ら突進していった。
「これほど若い小僧が死を望むのを見るのは初めてだ。よし、その願いを叶えてやろう。」一人の盗賊が両手で太刀を高く掲げ、問刀に向かって横薙ぎを放った。
すると問刀は瞬時に刀を抜き、その刃を太刀にぶつけた。
「ガシャン!」
自信満々だった盗賊の目に、一瞬、驚きが走った。というのも、彼の太刀は本来、馬に乗る際に使用する武器であり、疾走の勢いを借りてこそ、その強力な殺傷力を発揮できるものだったからだ。
彼は馬に乗っていなかったが、疾走する速度と両手での一斉斬撃があれば、問刀を圧倒できると確信していた。
しかし、剣が交わった瞬間、両手で握った太刀はまるで鉄の壁にぶつかったかのようだった。両手の虎口は引き裂かれ、鮮血が噴き出し、太刀も手から離れ、後方へと飛んでいった。
問刀はその隙を突いて、一刀で彼の喉を突き刺した。その盗賊は、驚愕に満ちた眼差しで息絶えた。




