第十一話:刀の殺し屋
宝器は、極品、上、中、下などに分類される。
特筆すべき点は、さらに「残品」と「成品」という2つの品質に分けられることである。
例えば、下等残品とは、下等の半製品を意味し、対応する下等宝器の威力をまだ完全に発揮できない状態を指す。一方、下等成品宝器は、下等宝器が本来持つ能力を完全に満たしている。
問刀が持つこの噬刀は、現在下等残品宝器であるため、金属を喰らう能力はまだ非常に弱い。
噬刀は、金属と金属のエネルギーを喰らうことができる。金属を喰らうと、噬刀の密度は高まり、重量が増加する。一方、金属のエネルギーを喰らった場合、噬刀自体の重量は変わらないが、材質と内在するエネルギーが強まり、それによって品質を向上させる効果が得られる。
現在の噬刀は、自身のエネルギーが弱いため、まだ欠陥品の段階にある。その能力を高めたいのであれば、金属物質ではなく金属エネルギーを喰らう必要があり、そのためには金属属性の宝材が必要となる。
下級の宝材鉱石は、最も安いものでも10両の金が必要であり、非常に高価だ。
水市町で半月ほど休養した後、問刀と回復した当岩は、金泉町へと戻った。
今日、問刀が宿の契約を更新する日でもあった。問刀が住んでいる宿に戻り、店主のカウンターへ向かって支払いをしようとした。
すると、残りの2ヶ月分の家賃はすでに誰かが支払ってくれたと告げられた。
「残りの2ヶ月分の家賃、計1両の黄金ですが、あの方が代わりに支払ってくれましたよ」店主は、酒卓の前に座っている白衣の男を指さした。
その男は、一塵も付かない白い武術用の長袍を身にまとい、白い帷帽を被っていた。その帽子の縁からは白い紗が垂れ下がり、彼の顔立ちを隠していた。
腰には、血のように赤い打刀が下げられていた。その刀からは血の匂いが漂い、見る者を戦慄させた。
「お前が問刀か。お前の話は聞いたことがある。」白衣の男が立ち上がった。彼の身長は180センチもあり、問刀と同じくらいの体格だった。
その時、一陣の風が吹き抜け、彼の帽子のベールを翻し、その端正な顔立ちと、氷のように冷酷な瞳を露わにした。その眼差しには、感情の欠片さえも許されないようだった。
「私の名は薄乱・刹。金を受け取って人のために仕事をする。報酬さえ十分であれば、どんな任務でも遂行できる。」
「君の家賃についても、誰かが私に代わりに支払うよう頼んできた。それと、その依頼主から警告を伝えろと言われた。自分がすべきことを忘れるな、そして君たち間の秘密の取引を第三者に漏らすな、と。さもないと、その結果がどうなるかは分かっているだろう。」
薄乱刹は冷笑した。白いベールが顔を覆っていたが、口元に浮かぶ微笑みの弧ははっきりと見て取れた。それは極寒の笑みであり、まるで冬の中にいるかのような感覚を人々に与えた。
「問刀よ、君は十三年間剣術を修練していると聞く。私だって、丸十年剣術を修めてきた。私と君には似たような経験があるのだ。かつて、私が初めて山を下りた時、助けを求めてきた男に出会ったが、私は彼を助けなかった。その結果、彼は私の目の前で惨殺された。」
「武士として、私が刀術を修めたのは、ただ自分自身を守るため、そしてその技で富を稼ぐためだけだ。」
「だから、私は殺し屋になった。君のような刀の達人とは、ぜひ一戦交えて、どちらの刀術が優れているか確かめてみたいものだ。」
問刀は、白衣をまとった薄乱刹を見つめた。彼は、冬のような冷酷な殺意を放つ殺し屋だ。
彼の実力は、武道二段上級であり、問刀を上回っている。
さらに、彼の腰に差された血のような赤い刀は、中級の欠品宝器である!
これはまさに、その価値が街一つを買い占めるほどの宝物だ。この刀の値段だけで、金泉町の半分以上を買えるほどだ。
この二つの要素だけで、実力差において問刀が薄乱刹の敵になるはずがない。
「それでは、私もここを去ろう。」薄乱刹はそう言うと、振り返りもせず立ち去った。他人の視線を全く気にしていないようだった。
彼が完全に姿を消すまで、宿屋の主人は緊張のあまり額に滲んだ冷や汗を拭っていた。
「まさか、あの人が金泉町で名高いあの殺し屋だったとは、信じられない。」宿屋の主人は、その殺し屋について以前から噂を聞いていた。
第一に、彼は幼い頃から刀術を学び、刀の扱いに極めて熟練している。さらに、この殺し屋はこれまでに百人以上の標的を殺しており、そのすべてが成功で、失敗は一度もない。
そのため、宿の主人はこの殺し屋を怒らせることを恐れ、刀を尋ねるその目さえも、少しばかり畏怖の念を抱いて見つめていた。
一方、薄乱刹は路地裏へと進み、目立たない隅へとたどり着いた。
「用事は、すでに済ませた。」
彼の目の前、隅には、黒い夜行服を身にまとい、黒い覆面を被った、まるで盗賊のような男が立っていた。
その男の瞳は灰色で、まるで死人の目だった。
「よろしい。」彼の声もまた、悪鬼のようで、人を恐怖に陥れるものだった。
「すべて、計画通りだ。薄乱刹、お前はさすがトップクラスの殺し屋だ。これが、お前の報酬だ。」
黒衣の男が手元から放り投げると、黄金で満たされた布袋が薄乱刹の手に落ちた。
その袋の周囲からは、煙のような黒いエネルギーが漂い、薄乱刹の手のひらに触れた途端、枯れ果てたような感覚をもたらし、彼の手を幾分老けさせた。
薄乱刹の瞳孔が収縮した。
「これが、武道三段の力か? 抗いようのない強大さだ。もしこのエネルギーがもう少し強ければ、おそらく私は重傷を負っていただろう。」
薄乱刹は、ランクによる格差を痛感した。それは、彼の刀術の造詣では埋め合わせることのできないものだった。
彼の目は、黒衣の男の背中を見つめていた。まるで、いつでも自分の命を奪い去りかねない凶鬼を見つめるかのように。薄乱刹は、初めて恐怖と不安を覚えた。
「慌てることはない、友よ。お前にはまだ私にとって利用価値がある。協力関係を続けよう。」
「あの問刀という男だが、一年後、もし彼が麒麟の鍵を無事に手に入れられなかったら、お前が彼を殺せ。」
「もし彼が手に入れたら?」薄乱刹は額に冷や汗をにじませながら尋ねた。
「ふふ、それなら、お前が麒麟の鍵を奪い取り、それから彼を殺せ。私が必要としているのはあの黄金の麒麟の鍵だ。あの問刀など、どうでもいい。だから彼が成功しようが失敗しようが、一年後には、彼を殺してくれ。」
「わかった。」薄乱刹は唾を飲み込み、うなずいた。
「我々のために働いてくれれば、報いは惜しまない。」その場に不気味な声が残され、黒衣の男はとっくに姿を消していた。
「問刀か?ふふ、彼と私には似たような過去があるが、彼を殺すのは朝飯前だ。」薄乱刹は、極めて自信に満ちていた。
一方、問刀は宿屋の部屋で、自身の「噬刀」を研究していた。
宝器の品質は、修練の速さに直結する。そのため、問刀は「噬刀」の品質を高めるために、より多くの宝材を必要としていた。
問刀は部屋を出て、金泉町で10両の黄金を費やし、樹齢百年の下等な金属性鉄鉱石を一つ購入した。
それは黒色の鉱石で、暗く沈んだガラスのようであり、内部の黒いエネルギーは稲妻のようだった。
この鉱石は、実に百年もの間、宇宙に存在する金属のエネルギーを吸収してきた。そのため非常に堅固で、ほとんど破壊することはできない。
特殊な方法を用いることで初めて、これを宝器に作り上げることができる。
しかし噬刀は違う。その特殊な能力により、内部に秘められたエネルギーを吸収することができるのだ。
鉱石を噬刀に近づけると、内部の黒い稲妻が引き寄せられ、噬刀に打ちつけられて飲み込まれていった。
数分後、元は漆黒だった鉱石は灰色へと変わり、エネルギーの波動は微塵も感じられなくなった。地面に落ちると、完全に粉々に砕け散った。
一方、噬刀を取り巻く黒い影は明らかに広がり、その能力は強化され、品質も一部向上した。
周囲の宇宙エネルギーを掠め取る力も、より強くなった。
問刀が心の中でそう思うと、噬刀は再び震え、上部から血のような赤いエネルギーが発生し、問刀の体内に取り込まれた。
「やはり、吸収できるエネルギーが増えたな。」
ただ、今の彼の財力では、これ以上下級の宝材を買うことはできないため、ひとまず諦めることにした。
手持ちの金はあまり残っておらず、節約して使わなければならない。
ここ数日、問刀は金泉町を散歩していて、ある美味を発見した。
それは、中年の男が手押し車でラーメンを売っているものだった。内容はごくシンプルだが、そのラーメンから漂う香りは、問刀の脳裏から離れなかった。
「匂いだけでこれほど美味しいなら、実際に食べてみたらどんな味だろう?」
問刀は、そのおじさんに一碗のラーメンを買った。
「最高に美味しい!」
問刀はあっという間に一碗平らげ、そう称賛した。
「金泉町には『ラーメンの仙人』がいるそうですが、もしかしてあなたのことでしょうか?」
「その通り、湯川源次と申します。」屋台の主人は、中年で少しぽっちゃりした男性で、穏やかな笑みを浮かべて言った。
「ラーメンのレシピは、先祖代々受け継がれてきたものです。私は幼い頃からラーメンを作り始め、今や四十年になります。ですから、ラーメンに関しては、自分なりのこだわりがあります。」
「四十年も?」問刀は驚いた。
「あなたのラーメンは、美味しいだけでなく、温かみがあります。そんな温かみは、とても貴重です。」
「お褒めの言葉、ありがとうございます」湯川源次は頭を下げた。
「湯川源次、彼は金泉町の『ラーメンの仙人』だ。彼のラーメンは極めて美味しく、多くの人々から称賛されている。その中には、藤原桜司も含まれており、彼にとっては常連客とも言える存在だ。」
「だから、藤原桜司を不快にさせるために、血戮衆は私にこのラーメン職人を殺せと命じたのだ。」
薄乱刹が隅に姿を現し、頭の中の考えを整理した。
「たかがラーメン職人だ。殺すのは極めて簡単だ。」
薄乱刹はカートの前に歩み寄り、湯川源次を冷たく睨みつけた。
「いらっしゃいませ、お客様。何かお求めですか?」湯川源次は礼儀正しく尋ねた。
「なぜあいつがここにいる?まさか?」問刀は薄乱刹の背中を見つめ、不吉な予感を抱いた。
「ふふ、何もいらないよ」薄乱刹は皮肉な笑みを浮かべ、すぐに刀の柄を握りしめた。
湯川源次は、危機に気づいていなかった。
「その様子だと、体を温めるためにラーメンが一杯必要そうだね。」
薄乱刹は、空気に漂う香りを嗅ぎ、思わずよだれを垂らした。
「よし、お前を殺す前に、まず一杯ラーメンを食べておこう。」彼は心の中で呟き、テーブルの前に座った。
「ラーメン出来ました。どうぞごゆっくり。」
薄乱刹は箸を手に取り、ラーメンを味わい始めた。
食べ終えると、彼はなんと、涙を流した。
「これほど美味しいラーメン、その温もりは、まさに私がここ数年失っていたものだ。」
「なぜか、私の心にある殺意が、まとまらない。」
殺し屋として、これは許されないことだった。そのため薄乱刹は、慌ててその場を離れ、隅に身を隠した。
「よし、今回は、お前のことは見逃してやる。次からは、もう彼のラーメンは食べられない。そうしないと、刀を抜く勇気を失ってしまうだろうから。」薄乱刹は、闇の中に姿を消した。




