新たな友人
本日の投稿はここまでです。
「へぇ~…東雲博士はロボットとAI技術で海外にも行く程の研究者だったんだ?」
「ああ、日本以外にも色々な国を飛行機で飛び回って現地の研究者と技術を共有し合ったり意見を交換しあったりと忙しかったと言っていたな」
どうも神代の時代のオートマタ、ココロ・シノノメと背中を預け合って話をしてる僕です。
「シオンは日本で何をしていたんだ?」
「僕は医者になりたかったんだけどなれなくて…でも、医療の世界には関わりたくて医者が使う医療機器を売る仕事をしてたよ。小さいのなら注射器、大きい物ならレントゲン装置とかね?」
「なるほど…医者か」
「医者が使う機器を売る人だけどね」
懐中時計を見れば針は12時を差している…やっぱり昼の12時か夜の24時か分からないのは不便だな。
「…?どうしたんだ?」
「ん、ココロも落ち着いたみたいだし一旦僕は家に帰ろうかなって思って」
「そ、そうなのか」
僕が帰る事に動揺した…?何度か訪問して関係を築こうと思ったけど結構心を開いてくれてたみたいだな。
だったら提案してみるか。
「んで…どうしたい?勇気を出して外の世界に出るなら色々助けてあげるけど…」
そう言うとココロは床の一点をジッと見つめ、しばらくしてから口を開く。
「…私は魔人を殺す為に生み出された戦闘型オートマタ、兵器だ。その事実は変わらないだろ?」
「まぁ、そうだね?」
「それなのに東雲様に愛情を注がれて生み出された娘で…なんて、娘として嬉しいという感情と、戦争に出撃出来なかった兵器としての存在否定の悲しみと、東雲様を守れなかったという怒りの感情が…思考がエラーを起こしてるんだ…」
思考のエラーねぇ…本当に人間にしか見えないや。
「それが人間でいう葛藤だよ。人間はそういうエラーをずーっと抱え、どちらかを選んで失敗だったと後悔したり、正解だったと喜んだり、何も出来なかったと無力感や怒りを感じるんだ」
「葛藤…というのか、この思考のエラーは…シオンは何が正解だと思うんだ?」
「んや、それは自分で決めるんだ。他人の意見を参考にする事があってもその決断を他人に委ねちゃいけない、最後の決定だけは絶対に自分の意思、自分だけの答えを出すんだ。僕はココロの事を何でも命令通りに動くオートマタじゃなく、一人の人間として接しているからね」
「………そうか」
「それに僕の意見は既に言った。一人娘には幸せになって欲しい…東雲博士がそう思ってるんじゃないかってね。久しぶりに目覚めて突然の事だっただろうし…すぐに答えを出す必要は無いよ。悩んで悩んで答えを出す…それは正に人間の行為だからね」
「そうか…」
「うん。もしココロが外の世界に出る決断をしたのなら僕はココロが人間らしく過ごせる様に最大限手助けする。外の世界に出ないのなら友人としてここに通って話し相手になってあげる。もしもう誰とも関わらずに一人でここに居続けると言うならここの存在を忘れて二度と関わらない様にする。もちろんこの場所を他の人に教えるつもりは無いし、信じられないなら東雲博士のカードキーもココロに渡す…いや、東雲博士の娘なら僕が持つよりココロが持っていた方がいい。僕の技術じゃカードキーの複製なんて出来っこないしね」
【空間収納】からカードキーとホログラムを操作していた手袋をココロに差し出すが、ココロはその手を遮り立ち上がる。
「いや…それは同郷のシオンが持っていていい」
「いいの?一応東雲博士のい……思い出の品みたいなものだけど…」
「東雲様…いや、母親との思い出は私のメモリの中に鮮明に記憶されている。それに私の体には生体認証機能も搭載されているからこの施設の物はその手袋が問題なく操作出来る。権限も母親と同等の権限を与えられているから問題ない」
「そっか…僕が他の人を連れて来るとかは思わないの?」
「…ここを他の魔人に知られて困るのはシオンの方じゃないのか?」
「…何でそう思うの?」
「理由は二つ、シオンが私の母親と同じ記憶を持っている事。その事を抜いたとしても魔人の中でもかなり特別な個体…平和的で思慮深い、戦争を望んでいないと分かるからだ。ここにある兵器や技術を完璧に理解していなくても危険性を知っているだろ?」
ここの技術や兵器を他の人の目に触れさせれば絶対と言っていい程に技術と兵器を求めて戦争が起きる…だからここの存在は秘匿したいし、戦争等に使われない平和な技術を流用するとしても、魔法技術との掛け合わせで火薬や原子炉なんてものは絶対に広めない様にしなくちゃいけない。
それに…同郷の者として、ココロと東雲博士の大切な場所を人間の醜い悪意に触れさせ、悪意のままに利用させたくない。
それを見抜いているのなら…流石としか言いようが無いな。
「なるほどね…まさかそんな駆け引きをして来るなんて思わなかった、その通りだよ。さっきも言った通りココロからしたら外の世界は原始的…そんな世界にこんなオーバーテクノロジーを持ち出したら知識と技術を独占しようと心が醜い悪党共が群がり争う。だから外に出るなら絶対に一人で出ないでよ?」
「ああ、分かってる。母親も良く嘆いていたからな…」
「なんて?」
「“最新技術は最初に武力、その次に医療に転用されるの。私は争いとか大っ嫌いだし、私の技術が戦争に使われるのは本当に嫌なんだけど…でも、そうしないと奪われちゃうからさ…こうやって割り切って私にとって都合がいい様に正当化させないと…”とな」
「…東雲博士とこうして話せなかった事を本当に残念に思うよ…本当に…」
「…きっと話が合ったんじゃないか?」
「そう思う」
クスリと笑うとココロの目が見開かれる…なんで?
「ん?どうしたの?」
「ああ…何故かシオンの笑顔が私の母親と被って見えたから驚いただけだ…」
「…?東雲博士と?」
「ああ…顔のパーツは似ていないが…何故か被って見えた」
「んー…まぁ、僕可愛いしね?」
食らえ、満面の笑みアタック。
「いや、シオンは生物学的には雄だろ?」
チッ、やっぱり効果無いか。
「あれ?分かるの?」
「ああ。雄の生殖器を持っている雌はいない。もしかして今の外の世界には雄の生殖器を持つ雌がいるのか?」
無表情で僕の腰辺りを指差してそう言うココロ。
「…判断材料がそれは些かマズいけど…」
これは外の世界に出るならいろいろ気を付けないと───あれ?何か違和感があるな?生物学的?
「ねぇ…僕の顔だけで判断するなら男と女、どっちに見える?」
「雌だな」
「…なのに一目で僕が男だって分かったの?」
「ああ。雄特有の生殖器があるからな」
…待て待て待て、そう言う事か?
「もしかして…僕のこの服を透視してあるかないかを確認したの?」
「ああ。さっきシオンもレントゲンと言っていたし理解は出来るだろ?ちゃんとスキャンして確認したぞ、シオンの生殖器」
「おい!勝手に人の裸見んな!!」
まさか白雪以外に裸を見られるとは…!しかもこんな形で…!
「スキャンしたのは接敵した時だ、今はスキャンしていない。武器を隠し持っているかもしれないし、体内に何か仕込んで殺した時に爆発する可能性もある。戦闘するかも知れないならスキャンするのが普通だろ?」
戦闘型オートマタ故の正論…!僕もめっちゃ調べるから反論出来ない…!
「…っはぁ、まぁ…そうだね…とりあえずこのカードキーと手袋を持ってていいって事は、一人で居るって選択肢は無いって事でいいんだよね?」
「ああ。…外に出るか、出ないかは…少し一人で考えさせて欲しい」
「おっけー。じゃあ、時間が出来た時に立ち寄る様にするけど…場所分かるかな…」
「…はぁ、ちょっとこっちに来い」
「うん?」
床に置いていた重そうなオーバーテクノロジーの武装を軽々と手に持ち通路を進んで行くココロ。
「シオンなら使い方も分かるだろうし、悪用しないだろうからいいが…」
そんな事を言うココロについて行けばカードキーをタッチさせる様なコンソールが付いた壁があり、ココロがそのコンソールに手を乗せると腕に緑色の線が浮かび上がり、幾何学模様を描きながら緑色の線がコンソールに触れると繋ぎ目の無い壁がスライドする。
「おお…めっちゃかっこいいね…」
「格好がいいかは分からないが…」
その部屋は歩兵兵装格納庫の様に様々な武器が置かれているが、ここは火薬を利用した実銃ではなく光学兵器…ココロが使っているオーバーテクノロジーの武装が緑色の光を発する板の上で浮きながら並べられていて、何も浮いていない板に手に持っていた武装を掲げると展示される様に宙に浮いた。
「うわー…本当に凄いね…」
「それは『反重力武装格納盤』だ」
「ほえー…この光学兵器でいいのかな?これって誰でも扱えちゃうの?」
「いや、私の生体情報と私の中にある動力源が揃っていないと起動しない様になっている。更に私が破壊されたとしても活動を停止した時点で全てのプログラムが消去されるから残骸を集めて武器の起動を試みても起動させれない様になっている」
「へぇ~じゃあココロの専用武装なんだね」
「ああ。だから汎用量産型のオートマタには扱えないし、私以外のオートマタは基本火薬を利用した銃器、高周波ブレードを装備するぐらいだな」
「ふむふむ…」
部屋の奥で何かの端末を操作しているココロに説明を受けながら浮いている武装を眺めていく。
(ビームライフル…レーザーブレード…さっきの羽みたいな武装は対象をロックオンして半径500mまで追尾するドローンビット…飛行用ユニット…光学迷彩…で…)
ずっと目に入れない様にしていた一際異彩を放つ二つの光学兵器…これは明らかにヤバい。
一つ目はホログラムで映されているのだが、全長120m、重さ250tの超大型の大砲で、名前は『対都市拠点防衛魔法障壁破砕砲メルトレールガン』。
二つ目も同じくホログラムで映されているが、全長2㎞、重さ6,500tの超超大型爆弾で、名前は『対都市拠点消滅シュピーゲル』。
こんなのを都市の頭上に落とされれば一瞬で地図から消え去るし、二度とそこに生物が生まれる事が無いと分かる。
(こんな一発逆転どんでん返しの出鱈目な火力を出す科学サイドが魔法サイドに負けた理由は…単純にコストの所為だろうな…)
科学は物質的コストが必要不可欠になるが、魔法サイドは人の知識のみで時間さえあればほぼコストは掛からない。
(しかも戦争だから精密な魔力操作なんていらないし、ただ殺す為に全力でぶっぱなすだけだもんな…子供でも立派な魔法兵になるだろうし…あー、想像したくない地獄絵図だったんだろうなぁ…)
軽く眩暈を感じながらも絶対にこんな物を外に出さないと誓っていれば、
「ほら、シオンの『デバイス』を用意した」
ココロが振り向き何かを投げて来る。
「おっと…デバイスって何?」
キャッチした物を見れば消しゴムぐらいの大きさのL字を重ねた長方形の白い機械があった。
「デバイスはデバイスだが…携帯端末と言えば分かるか?」
「っ!?携帯端末!?」
その機械をじっくり見て見ればレンズの様な物が両側に付いていて、側面はソーラーパネルの様な黒になっているだけ。
「ど、どうやって使うの?」
「まずはさっきの手袋を付けてデバイスを広げてくれ」
「デバイスを広げる…?」
【空間収納】から取り出した手袋を嵌めてL字を外す様に動かしてみればL字の間に緑色のホログラムが現れ、“Activate...”という英語の下に何かをダウンロードしている様なゲージが動き始める。
「…!凄い!次はどうするの!?」
「アクティベートが終われば次に生体認証をしろと指示が出てくる。それに従ってくれ」
「わ、分かった!」
ゲージが満タンになると今度は“Touch”と英語が書かれその上に掌を置く様なマークが出てくる。
「あ…これ、広げるので両手が塞がってるんだけど…」
「広げた所で端末同士の相対位置が固定されているから片方の手を放しても問題ないぞ」
「ま、マジか…凄すぎる…」
手を放してそのマークに片方の掌を乗せればスキャンしているのか上から下、下から上と緑色の線が何度か動き、消えたその後も続く指示に淡々と従っていく。
そして興奮しながらも淡々と従っていけば最後に“Wait...”と出る。
「……よし、データが来た。データベースにシオンの情報を追加するから少し待ってくれ」
そう言うとココロは両腕に幾何学的な緑色の線を浮かばせながら別の端末を操作し始め、しばらくすると僕の端末の表示が“Welcome”に変わり、緑の光から半透明の黒い光に変わった。
「なんか色が変わったよ?」
「ああ、それでアクティベート完了だ。そのデバイスにはカメラや録音録画機能、メモ機能やデータ閲覧が出来る。そのデータの中にこの場所の地図があるからこれで迷わないだろ」
「ほええ…あ、通話とかメッセージは…って、電波塔も無いし無理か…」
「いや、出来るぞ。宇宙に人工衛星を飛ばしているからな」
「凄すぎるだろ…さっきから凄いしか言ってない気がする…」
「事実、凄いしか言っていないぞ」
「あはは…」
試しにカメラ機能を起動して撮影して見れば腕を組んだ黒いボディースーツ姿のココロが撮れる。
「おおおお、ちゃんと撮れた…充電とかはどうしたらいいの?」
「太陽でも照明でも光に当てるだけでいい。暗い場所に放置しても1年なら無充電で動く」
「これは科学じゃない…紛れもないオーバーテクノロジーだ…」
魔法より魔法なオーバーテクノロジーに驚いているとカメラの向こうのココロが首を傾げる。
「ああ…そうか、生体チップを埋め込んでいないから不可視化出来ないのか」
「不可視化?」
「ああ。生体チップを埋め込めばそのホログラムを空間に投影せずに網膜に直接映像を映す事が出来るんだが…埋め込むか?」
もう何でもありだな…。
「ん、んー…埋め込みたい…けど…そのチップって電気に強い?」
「どうだろうか…何故そんな事を聞くんだ?もしかして日常的に高電圧に晒される拷問でも受けているのか?」
「いやー…それがさ…」
手袋とデバイスを【空間収納】に仕舞って両手の間に紫色の雷を生み出せばココロは目を見開く。
「なっ…生体電気を増幅させて操っているのか…!?」
「いや、これは雷鳴魔法って言って電気を生み出す魔法なんだ。偶に全身に纏ったりするからその時に生体チップが壊れないかなって…」
「…これは壊れるかも知れないな」
「そっか…じゃあ諦めるか」
雷を消して残念そうにすればココロは少し難しそうな表情を浮かべる。
「しかし…シオンが特別なのか…?」
「うん?どう言う事?」
「私のデータでは魔人は火、水、土、風しか操れないはずなんだが…」
「え、神代の時代ってその四属性しか操れなかったの?」
「私のメモリにある戦闘データではそうだが…そうか…雷も扱えるのか、今の魔人は…」
「あー…扱える人は限られるけど、ここにある光学兵器は電気に弱そうだよね」
「そうだな…天候による雷ぐらいなら問題ないが、それ以上の電圧になれば機器がショートするな。そうなると幾分か銃器の方が扱いやすそうではあるが…銃器も弾丸の火薬がマガジンの中で爆発する可能性もある…」
「…え?落雷耐えられるの?」
「ああ」
「…何か電力測定器とかあったりする?」
「あるぞ。ついて来てくれ」
そう言えばココロは部屋を後にするが…確か、雷って1億Vとかだよね…?それ耐えられるなら大丈夫じゃない?
いや、魔力で生み出してる雷だから自然現象とは違う反応をするかも知れないし、安易に大丈夫と結論を出すのは危ないか。
「ここだ。ガラスの向こう側に入ってくれ」
「分かった」
着いた部屋に入れば横長の機械が並べられた部屋で、その部屋の奥にもう一つガラス張りの部屋があり、その奥に入るとスピーカーからココロの声が聞こえてくる。
『今から測定器を垂らす。それを持ったらさっきの雷撃を徐々に強めながら流してくれ。危なくなればこちらから指示する』
「分かった。…なんかモルモットな気分だな…」
ガラス越しにココロに見つめられながら天井から垂れて来た金属の棒を両手に持って雷鳴魔法を流していくと、
『…1、6、28、55、180、325、920...もう少し上げて問題ない』
「了解…!」
ココロがGOサインを出し、僕は一気に魔力を上げていく。
『16,829…45,088…226,599……1,099,732…』
「くっ…もう無理…!上がらない…!」
『分かった、中止してくれ』
ココロの冷静な声がスピーカーから聞こえ、雷鳴魔法を解くとドッと汗が噴き出した。
「結果は…?」
『約110万V…かなり強力な暴徒鎮圧用のスタンガンと同程度だな。これなら私が使う兵器には問題なさそうだが、持続的に流され続けるとなると…不安要素があるな』
「ふむ…じゃあさ、もう一度やって見ていい?」
『…?さっきのが全開じゃないのか?』
「さっきのは間違いなく全開だけど、ちょっとやり方を変えてみる」
『やり方…?まぁ、さっきと同じ様に徐々に強くして見てくれ』
首を傾げるココロに笑みを向け、今度は魔力じゃなく魔気で雷鳴魔法を両手に持った鉄の棒に流す。
『いきなり10万…?』
「二割ぐらいなんだけどまだ上げて大丈夫そう?」
『…ああ、危険になったらもう一度指示する。そのまま徐々に上げて行ってくれ』
「了解…!」
二割、三割、四割と上げていくとスピーカーから聞こえてくるココロの声に驚きが混じり、僕の両手から発せられる雷光も紫から白、白から黒、黒から赤となって部屋に焼け跡を付け、防護ガラスに雷光が当たるとバキッ!!と音が鳴り罅が走る。
『…!シオン!中止しろ!』
そしてココロの焦った声で魔気を消して鉄の棒を離した。
『これは…とんでもないな…』
「ふぅ…結果は?」
『…測定不能だ。今のは何割程度なんだ?』
「七割だね」
『七割か…これはさっきシオンが熱心に見ていたメルトレールガンに匹敵するぞ…』
「おー…僕もやれば出来るじゃんね?」
『生身でそれだけの出力を出せる方がおかしいんだが…やれば出来ると簡単に片づけていい事じゃないぞ?』
「まぁ、そこは僕が魔人の中でも特別って事で片付けておいてよ」
僕がココロを危険人物だと思う様に、ココロにも僕が危険人物、何かをしでかせば力尽くで抑えられると印象を植え付けられたのなら魔気を使った甲斐があった。
「とはいえ…焦げ跡とかガラス割っちゃったけど大丈夫?」
「ああ、問題ない。この施設はオートリペア機能があるから一日すれば元に戻る」
「えぇ…?無機物の自動回復…?出鱈目過ぎない?」
「いや、生身でメルトレールガンを放てる方が出鱈目だ」
それからさっきの部屋までココロの方が出鱈目だ、僕の方が出鱈目だなんて軽い口論をしながら戻れば、ココロは静かに俯く。
「…最初に見せてくれた紫色の雷であれば生体チップを埋め込んでも問題ないが、次に見せてくれた赤黒い雷は確実に生体チップが壊れる。そうなれば生体チップ内部に含まれた物質が体に悪影響を及ぼす可能性があるな」
「そっかー…じゃあ残念だけど見送りだね」
「そうなるな。生体チップが埋め込めれば手袋無しでホログラムも操作出来るが…そこは我慢しろ」
「そうだねー…分かった」
神代の時代を生きたココロと交流を得た、オーバーテクノロジーの危険性を確かめた、デバイスと手袋をもらい、この研究所に出入りする為のカードキーももらった。
初の接触としてはこの上ない成果だし、ずっとここに取り残されたココロに救いの手…烏滸がましいけど手を差し伸べ道を示せたと考えれば手放しで喜んでいいだろう。
ここからはココロ次第…東雲博士の娘、人間として外の世界に出るか、オートマタとしてここに残るのか…どっちを選ぼうとも僕はココロの友人として、東雲博士の一人娘として接していこう。
「…っし、じゃあ僕は一旦家に帰るよ」
「ああ…」
そしてもう一度【空間収納】からデバイスと手袋を取り出し、通話や他の機能を確かめた僕は───
「これからは外の世界がどうなってるのか映像を送ってあげるから楽しみにしててね?」
「…ああ、楽しみにしてる」
東雲博士に似ているらしい笑みをココロに向けて研究所を後にした…。
■
「やっと…帰れた…」
ココロと別れた三日後の深夜…約二ヶ月ぶり自宅の前に来た僕は今まで溜まっていた疲労感がドッと押し寄せて来ていた。
「あー…情報共有で死ななきゃいいけど…【直感】さん、どう思う?」
【直感】さんは反応しない…という事は死なないのか。
「…確実に寝込む?」
【直感】さんが反応する。
「一日?」
【直感】さんは反応しない。
「二日…三日…四日…五日……十日?」
十日で反応する【直感】さん…マジか、十日も寝込むのか…。
「じゃあ寝込んだ後の白雪のご飯とかも用意しておかないといけないか…」
ドアノブには入っても大丈夫な白い布が巻き付いていて、ゆっくりと扉を開ければカウンターに頬杖を突いた笑顔の僕と、その隣にティーカップを優雅に傾ける人型の白雪が待っていた。
『おかえり、僕』
「おかえりなさい、マスター」
「ああ…ただいま、僕、白雪」
促されるままカウンターの前に置かれた椅子に腰掛けカウンターに項垂れると、白雪が僕の頭を撫でつけ伸びた髪を弄り始める。
「かなり伸びましたね?」
「うんー…そろそろ切らないとなぁって思ってるけど…結構流暢に喋れる様になったね?」
そう言うと白雪は無表情な顔に少しだけ笑みを浮かべる。
「ええ、マスターに教えてもらいましたし、記憶を共有する時に寝込むかもと知らされていたので料理も自分で作れる様に教えてもらいました。起きたら私が髪を整えてもいいですか?」
「そっかそっか、じゃあ起きたら白雪に整えてもらおうかな。あ、余り短くしないでね?」
「ええ、マスターの髪を纏めるのは私の楽しみの一つであり、マスターの傍に居られる私の特等席ですからね」
「おおう…マジで成長してる…」
白雪の成長に驚きながらも頭を撫でてあげれば白雪は目を細め心地良さそうに僕の撫でを受け入れる。
『それで?もう情報共有しちゃう?』
「してもいいんだけど…多分、十日は寝込むみたいなんだよね」
『あー…一応こっちでは直近で何かしなくちゃいけない事は無いかな?ずっと魔導義肢の開発と資格勉強ぐらいだったし』
「私も寝ている間のお世話や来客の対応、家の事に関しては出来るので安心してください」
「そっか…それなら早速情報共有しちゃおうか」
『だね』
そして僕は寝室で【空間収納】から着替えや食材、白雪が買い物出来る様に金貨が詰まった袋を取り出し、
「あー…ぶっちゃけ怖い…」
『だねぇ…こんな長期間空けるのは本当に無しにしよ…』
「んだねぇ…」
黒いぶかぶかのシャツと下着だけの姿になり、ベッドの上でもう一人の僕と一つになった。
「おやすみなさい、マスター。寝ている間の一切をお任せください」
白雪が髪を梳く感触を感じながら…。
明けましておめでとうございます。
と言う事で…5年連続で年末に体調を崩した自分ですが、今年は体調を崩す事無く無事に年を越せて一安心しています。
今年は出来るだけ更新頻度を上げつつ完結まで持って行けたらなぁ…と思っています。
今年もどうぞよろしくお願いします。




