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語られる真実

祝100話目という事で本日の投稿はここまでです。

「…私、教皇直属近衛聖騎士第一席次アルメリア・パラディア・ティクセントは『死神』の手を借り、私達同一人種主義派閥と対立するアルナ・アーチ・アラライズ含め人神至上主義派閥を粛清…虐殺しました」



どうもローゼン王国とリテュアリス神聖国の会談に同席して爆弾発言を聞いた僕です。



「虐殺とな…まだ魔界に攫われたと聞いた方が優しく聞こえるが、リテュアリス神聖国らしからぬ言葉の使い方だな?」



その発言に驚きながらもルクスがそう問えば、またもフリューゲルからではなくアルメリアの口から語られていく。



「耳障りのいい言葉で包み隠さず真実を伝える為です。ご不快な思いをさせてしまうのであれば言葉を選ばせて頂きますが…」


「…よい。続けてくれたまえ」


「はっ。…私とフリューゲル教皇猊下はアルナ・アーチ・アラライズが率いる人神至上主義派閥の悪行を知り、その悪行を同一人種主義派閥の同士と共に全て明るみに晒し公正に裁きを下そうとしました。ですがアルナ・アーチ・アラライズは何かの拍子に強硬手段を取る事を決定し、悪魔を使役し同一人種主義派閥の人間を洗脳し始め、自身が教皇になる為にフリューゲル教皇猊下を孤立させ大教会カセドラルへ軟禁しました」


「ふむ…」


「その際、私もアルナ・アーチ・アラライズの手により悪魔を宿らされそうになりましたが免れ、この状況を打破する為にその場を後にしました」


「…教皇直属近衛聖騎士の、更に第一席次なんて役職を与えられている貴女が巨悪を前に剣を捧げたフリューゲル・ホープ・リテュアリス教皇を置いて逃げ出したのかしら?」


「…はい、フリューゲル教皇猊下を守る近衛聖騎士として恥ずべき行為をしました。ですが、私には確信がありました。逃げ切った先にリテュアリス神聖国を変える鍵があると」


「変える鍵…?」


「はい。アルナ・アーチ・アラライズに悪魔を宿らされた追手を撃退しながら逃げた先、右腕を失いながら辿り着いた場所には桃色の髪と瞳をした一人の女性が居ました」



今はある右腕を撫でながら続けるアルメリア。



「その女性の名はユーリ、Cランクの冒険者で手練れの魔法使いでした。そのユーリに治療され、食料も分け与えられ一命を取り止めた私は、命を助けたお礼に私が置かれている状況を説明して欲しいというユーリに状況を説明し、ユーリと話していくにつれて彼女こそがリテュアリス神聖国を変える鍵だと確信しました」


「…何故そう思ったのだ?」


「私には【虫の知らせ】という才能があり、この才能のおかげで私は聖騎士になれたと言っても過言では無いと言える程に信頼を置いています。その才能に導かれるままフリューゲル教皇猊下の傍を離れ、森に入って深手を負いながら追手を撃退してユーリに出会い、ユーリと言葉を交わしていくにつれて才能が強く反応して確信しました。…信じて頂けるとは思えませんが」


「ふむ…信じるか信じないかはおいて、そのユーリという人物と会ってどうしたのだ?」


「ユーリにアルナ・アーチ・アラライズの魔の手からリテュアリス神聖国とフリューゲル教皇猊下を救って欲しいと協力を持ち掛けました。一度は断られましたが協力をしてくれる事になり、どうやって救い出すかを話し合っていたのですが…」



そこまで言うとアルメリアの眉と手にギュッと力が入る。



「…ユーリが出した答えは敵対派閥の皆殺し、虐殺でした」


「…その者が先程言っていた死神か」


「はい。もちろんその時の私は反対して他の方法が無いか模索しました。ですが、悪習を断ち切きり国を変えるのであれば根本から根絶しないといけないと、真の平和は数多の犠牲の上に成り立つのだと、現実から目を背けるなと、今までの私の考えがいかに甘いのかを説き伏せられました。そして…その犠牲の上に平和を築き上げた国があると希望を示されました」



その言葉にルクスとシルヴィさんの雰囲気が変わる。



「その希望を見せられた私はこの身を悪に窶してもリテュアリス神聖国を変える事を決意し、ユーリの手を取り変装を施されアルナ・アーチ・アラライズの手中に落ちる寸前の聖都へ進入し、そこで今までの悪習によって虐げられていた者達の現実をこの眼で見て…決意を覚悟に変え、ユーリの皆殺しを肯定しました」


「…それが悪魔に取り殺された…か」


「はい」


「…一体どれだけの善良な民が改革の為に巻き込まれたのかしらね…」



シルヴィさんがそう呟きを零した時、何故僕が同席している時に真実を明かしたのか悟る。



「いえ、死んだのは悪党のみ…いえ……正確に申し上げるのであれば魂が黒い者のみです」


「「っ!?」」



アルメリアの言葉に動揺も隠さず目を見開くルクスとシルヴィさん。


その動揺のまま僕に視線を向けなかったのは流石だとしか言いようが無い。


この二人の前でその言葉を口にする事がどれだけの意味を持つのかはアルメリアには分からないだろうが、この人選、このタイミングで話すのがリテュアリス神聖国の平和に繋がる鍵だと【虫の知らせ】で感じたのだろう。


同じ系統の才能を持ってるからこそ分かる…きっとこの会談でローゼン王国はリテュアリス神聖国の移民を受け入れる事になるだろうと。



「それは…本当なのか?」


「はい。彼女は皆殺しにする前に私に言いました、“私は白い魂を持つ人は何があっても絶対に殺さない。でももし、アルメリアの知人が死んでいた時はそう言う事だったと理解して”と。何故か彼女のその言葉はとても力強く絶対に違えてはいけない誓いの様なものを感じて自然と信じられました。だからでしょうか…もちろん死神の皆殺しには同一人種主義派閥の者や私の知人、同じ教皇直属近衛聖騎士の仲間も居ましたが…不思議と私の胸の内には悲しみも無く、これでリテュアリス神聖国が平和になるのならと冷静に死体を見下している私が居ました」


「誓いか…」



そう呟くとルクスは何かを考える様に俯き、まだ動揺の残るシルヴィさんはアルメリアに問う。



「その…ユーリという女性…魂の色が視えると言う事なのかしら…?」


「はい。彼女は【魂視】という神の贈り物(ギフト)を持っていると明かしてくれました」


「【魂視】…」



僕に視線を送りたいのか組んだ手にギュッと力が入る。



「…その女性は今もリテュアリス神聖国に居るのかしら?」


「それが…」



その問いに今度はアルメリアの眉に力が入り、騎士服のポケットに入れていた赤い染みが付いた紙を取り出す。



「ユーリは私とフリューゲル教皇猊下宛てに一言“頑張れ”と書いた手紙を抱いたまま息絶えていました…まるで役目を終えた様に…」



テーブルに置かれる僕が書いた手紙とユーリのギルドカード…そんな大事に取っておかなくていいのに。



「そう…出来れば話を聞いて見たかったのだけれど…」



その手紙を広げるのに合わせて視線を隠し僕を見るシルヴィさん…とりあえずとぼけて首を傾げておこう。



「長くなりましたがこれが真実…昔の私利私欲と悪習に塗れ罪を積み上げたリテュアリス神聖国は死神によって終わりを迎えました。そして今のリテュアリス神聖国は“死神によって選血された”同一人種主義派閥の一枚岩…これはローゼン王国にとって信用する手掛かりに成り得ませんか…?」



アルメリアの語りが終わり、部屋に重苦しい沈黙がしばらく続き…



「…どれだけの決意と覚悟でその道を進む事になったかは痛い程理解出来る。そして今のリテュアリス神聖国が昔のリテュアリス神聖国では無い事も理解した」


「では───」


「だが、依然としてローゼン王国が正式に手を貸す事も民を受け入れる事も出来ない」



ルクスの拒絶の言葉が響いた。



「そう…ですか…」



フリューゲルは声を震わせ、アルメリアは表情を歪ませ、もう一人の聖騎士は俯き震える。



「だから非正規で民を受け入れ、身分を隠してくれるのなら今後のリテュアリス神聖国の為に王都の見学も許可しよう」



だが、続くルクスの言葉でフリューゲル達は呆気に取られ驚きの表情でルクスを見た。



「そっ…それは…本当でしょうか…?」


「シルヴィ、良いな?」


「…はぁ、そうね…でも、受け入れに必要な住居が今日明日で用意出来る訳も無いわ。それにいくら非正規とは言え、色々な条件も話し合って決めていきたいし…少々時間が掛る事は覚悟してくださいね」


「…!はいっ…寛大なお心を持つ貴方様方に、ローゼン王国に女神ヘイルミナの御加護があらんことを…!」



涙を零しながら祈りを捧げるフリューゲル…その後ろではアルメリアともう一人の聖騎士が深く敬礼している。



「さて…フリューゲル・ホープ・リテュアリス教皇…否、フリューゲル殿、ずっと王城に居ても息が詰まるだろう。希望するのであればすぐに王都を見学できる様案内と馬車を手配する。もちろん後ろの護衛二名も連れて構わない、どうする?」


「…ではお願いしてもよろしいでしょうか…?」


「相分かった。…シオン、外で待つルナティアとセバスを呼べ」


「はっ」



ルクスの指示に従ってルナティアとセバスさんを部屋に招き入れれば見学する為の馬車の手配をセバスさんに、ルナティアはリオンとシエラと共に案内や変装、護衛の指示を出されていく。



「ではフリューゲル・ホープ・リテュアリス教皇猊下方、お召替えが出来るお部屋にご案内致します」


「はい、お願いします」



そしてルナティアがフリューゲル達を連れて部屋を出ようとした時、アルメリアと視線が交わる。



「……シオン・ユニコード・ラザマンド様、不躾と思われるかも知れませんが一つ質問をさせて頂いてもよろしいでしょうか?」


「答えられるかどうかは分かりかねますが…どの様な質問でしょうか、アルメリア・パラディア・ティクセントさん」



アルメリアのまさかの行動にフリューゲルが驚いて足を止めるが、僕はただ笑みを浮かべてアルメリアを見る。



「先程説明させて頂いた私の才能がずっとシオン・ユニコード・ラザマンド様に反応しているのです。その意味をずっと考えているのですが…何かユーリ殿と関りがあるのでしょうか?」



その言葉で場が凍り付く。


ほんっとうに厄介だ【虫の知らせ】…いや、厄介は僕の【直感】さんもか。



「いえ、全く。ユーリという方との面識は一切ありませんし、私は冒険者ですら無いので噂すら知りません」


「……そうですか」



そう呟くがアルメリアの表情は全く納得していない。


生死の輪舞(ナイアラトテップ)】で自身を完璧な別人へと変貌させても僕らしくないと疑われたり、何となくそんな感じがするからって疑われるなんて…今度から別人に成りすまして動く時はもっと大々的に動くべきかな?


…とりあえずはこれ以上疑われるのもあれだし、時間も掛けたくないからこれで終わりにするか。



「と言っても先程の才能が反応しているのであれば納得してもらう事は出来なさそうですね。納得出来る答えを返すのであれば───」



僕はアルメリアの耳元に口を近づけ囁く。



「私もそのユーリさんと同じく【魂視】の神の贈り物(ギフト)を持っているからでしょうか。正直、驚いてます」


「…!」



驚いて見つめてくるアルメリアに笑みを向ければアルメリアも気の抜けた笑みを浮かべる。



「これで納得しましたか?」


「…詮索する様な真似をしたのにお答え頂きありがとうございます。何かシオン・ユニコード・ラザマンド様も私に対して質問がありましたらお答え致しますが…」


「ローゼン王国は様々な種族が手を取り助け合いながら生きている素晴らしい場所です。きっと今回の滞在中には全て見切れないと思いますので、私に時間を使うよりリテュアリス神聖国の為に時間を使ってください」


「そうですか…お気遣い頂きありがとうございます。ではその為に時間を使わせてもらいます」



敬礼して部屋を出ていくリテュアリス神聖国一行を見送り、一件落着と思いながら笑みを浮かべていると…



「…聞きたい事があるからとりあえず座って頂戴、シオン」



笑みの中に怒りを隠したシルヴィさんが僕に声を掛けて来た。



「失礼します。…聞きたい事とは何でしょうか?」


「とぼけないで頂戴。今回のリテュアリス神聖国の一件…あなたの仕業じゃないのかしら?」



…はぁ、今日は疑われてばっかで気分が落ちるな。



「いえ、私は本当に何もしておりませんし、リテュアリス神聖国の状況も知らなければアルナが殺されたという事もルナティアから聞いたばかりです。先程の聖騎士からも語られた通り、ユーリというCランク冒険者の仕業では?」


「『真実の眼』の前でも同じ発言が出来るのかしら?」


「はい、同じ事を言えますし、何ならここ二ヶ月殆ど自宅で過ごし魔道具の研究と技術の研鑽を行っていました。何故その様に私が疑われるのかが理解出来ないのですが…」


「…あなたが明かした【魂視】の神の贈り物(ギフト)を持つ者が現れ、ローゼン王国と同じく改革を実行したのよ?疑うなと言う方が無理な話じゃないかしら?」


「そう言われましても…私は桃色の髪でも瞳でも無い、ましてや女性ですらありません。私と同じ神の贈り物(ギフト)を持ってる事には流石に驚きましたが、既にユーリという人物は死んでいて、あの聖騎士は頑張れと書かれた手紙と一緒に遺体も見ているんですよね?もしそのユーリという人物が私ならここに私が居る事はおかしい事では?」


「…ユニコードなら何かそういう魔法があるんじゃ無いのかしら?」



何だその根拠の無い疑いは…選血の時代を生き、ルクスを支えたローレライの才女が聞いて呆れる。


いい機会だし、これから都合よく扱われない様に線引きをさせてもらうか。



「確かに師匠が見せてくれた失伝した禁忌の魔法(ロストマジック)にはもう一人の自分を生み出す魔法がありましたが、碌に魔法の修行もしていない私じゃ使いこなせるものじゃありませんし、生み出せるのは自分自身。全くの別人を作り出す事は出来ませんよ」


「……」


「それに無礼を承知で言わせて頂きますが、ただ自宅で魔道具を作って過ごしていたのに大した根拠も証拠も無く、偶然同じ特徴を持っていたからと身に覚えのない出来事の疑いを掛けられるのは流石に気分が悪いですし意味が分かりません。今後も同じ様に他国や国内の別の街で殺人が起きたら犯人が男だから、魔法が使えるから、子供だから、白髪だからと私と同じ特徴を探して疑いを掛けるつもりですか?」


「…そういう訳では無いわ」


「そういう訳では無いと言いますが、今まさに同じ様な疑いを私に掛けていらっしゃいますよね?私をローゼン王国の敵にでも仕立て上げたいのでしょうか?」


「……」


「それに何故毎回私だけを呼び出すのでしょうか?大師匠であるメルクリアさん、師匠であるエルルさんの前で私を貶めた時にユニコードと関係性が悪くなる事を懸念してでしょうか?」


「貶めるなんて…私はただ真実を知りたいだけよ」


「真実を知りたい…であれば、フリューゲル・ホープ・リテュアリス教皇猊下とあの聖騎士が語った事が全てなのでは?何故そこで全くの無関係である私に結び付けるのですか?本当に偶々偶然同じ【魂視】の神の贈り物(ギフト)を持っているから、ただそれだけで私を女性で桃色の髪と瞳を持ったCランク冒険者のユーリだと決めつけた…その意図は何でしょうか?」


「……同じ神の贈り物(ギフト)を持つ人が二人も居るなんてあり得ないもの。疑うのは当然じゃ無いかしら?」


「その“同じ神の贈り物(ギフト)を持つ人が二人も居るなんてあり得ない”というのはこの世界に生きる全ての人間を調べて証明されている事実、世界の理なのでしょうか?それとも検証すらもしていないシルヴィ王妃の不確定の憶測で話されている推測、もしくは見た事が無いからこうなのではないかという世間の通説でしょうか?」


「…私の推測、世間の通説よ」


「であれば、確証も無いただの噂話を真実だと思い込んでユニコードである私に大師匠も師匠も居ないこの場で疑いを掛けた…と言う事でよろしいでしょうか?」


「……そうなるわね」


「…そうですか」



舌戦を終えて温度の無い表情でシルヴィさんを見れば隣に居たルクスが口を開く。



「…シオン、勘違いするな」


「勘違いとは?」


「我々はそなたを敵に仕立て上げたい訳でも無く、ユニコードとの関係を気にして器量の狭い事をしている訳でも無い。ただ守りたいだけだ」


「守りたい…何も関係ない事と無理やりこじつけて疑う事が守るという行為に繋がるのでしょうか?」


「少しでも関連性を残せば些細な綻びすら大穴に変えようと執拗に固執する者がこの世には居る。もしそなたが何かしらで関わっているのならそれを隠蔽しなくてはならないから確認していただけだ」


「確認…失礼な物言いをしますが、疑いを確認と言い換えるなんて随分と耳障りがいいですね?」


「…あらぬ疑いで苛立たせてしまった事は謝る。だが、そう噛みつくな」


「…噛みつくなって仰いますけど、私はこの国がより豊かになる様に自宅で魔道具を作り続けていたんですよ?なのにその国を纏めるシルヴィ王妃に一方的な決めつけで疑いを掛けられて…こんな仕打ちを受けるのであれば魔道具の製作を中止してこの国を出ても───」


「済まなかった…」



僕の言葉を遮りフリューゲルよりも深く僕に頭を下げるルクスとその行為に驚くシルヴィさん。


…はぁ、普通の人に頭を下げられただけじゃ絶対に許さないのに…本当に立場って厄介だ。



「……分かりました、今日の事は忘れます。ですが、もし同じ様な事があればその時はこの国を出ていかせてもらいます。リテュアリス神聖国も暮らしやすくなりそうですから」


「…滅多な事を言ってくれるな」


「私だってこんな事言いたくありませんよ。…それで、聞きたい事はこれで終わりでしょうか?」


「どうなんだ?シルヴィ」


「ええ…そうね…」



すっかり覇気が無くなったシルヴィさん…少し悪い気もするが、これも自分を守る為だから仕方ない。



「…もうリテュアリス神聖国の工作が無くなった以上、秘匿していた聖女が誰か教えて欲しいのだけれど…」



それを明かして少しは機嫌が良くなるのなら明かしてもいいか…ルナティアにもバレたしね。



「そうですね…もう隠す必要は無いでしょう。聖女を紹介しますね」


「紹介…?そんなすぐ呼べる相手なのかしら?」


「…!まさか…!?」



僕の言葉に首を傾げるシルヴィさんだが、ルクスは宝物庫での出来事に思い至ったのか目を丸くし、



「白雪、挨拶して」


「はい、マスター。…御機嫌よう、ルクス・フォン・ローゼン国王陛下、シルヴィ・フォン・ローゼン王妃陛下。シオン・ユニコード・ラザマンド様の従者、白雪でございます」



僕の髪に巻き付いていた白雪がロングスカートのメイド服姿に変わり、とても綺麗なカーテシーを披露した。



「え…え?どう言う事…?」


「聖女が誰か明かして欲しいとの事でしたので明かしたのですが」



狼狽えるシルヴィさん、頭を抱えるルクス…ルクスは盛大な溜息を吐いてジットリとした視線を僕に向けてくる。



「…どういう事だ?もしかして『生者喰らい』を渡した時からか…?」


「確信を得たのはその後ですね」



本当は腹に風穴開けられてお風呂で呪いを解呪してもらった時だけど。



「ちょ、ちょっと待って頂戴…ルクスは魔人化する事を知っていたの?」


「ああ…褒美で宝物庫に連れて行った時に明かしてくれた」


「何で教えてくれなかったのかしら…?」


「シオンに口止めされていたからだ。…だが、まさかシラユキが聖女だとは…」



いや、本当に白雪が聖女だとは…だよね。


僕もそうなんじゃないかって思った時同じ事思ったよ…。



「で、でも…魔獣が聖女になるなんてあり得るの…?」


「私も驚きましたが神聖魔法は使えますし、リオンとシエラに憑りついていた悪魔を体から追い出し浄化しましたよ」


「神聖魔法…」



シルヴィさんがそう呟くとしばらく無言になる。


きっと次の言葉は───



「…ねぇ、シオン」


「はい」


「ルクスの左腕を神聖魔法で治す事は出来ないかしら…」



縋る様な声色で呟き僕を見るシルヴィさん。


そうなるんだろうなとは思ったけど…



「…私としては何も問題ありませんが…」



ルクスに視線を向ければ小さく首を横に振り、溜息交じりに言う。



「これは余の罪と今のローゼン王国に至るまでに犠牲にして来たものを忘れぬ為の戒めだ。治す気は無い」


「でも───」


「諄い。いくらお前の願いと言えど聞く訳にはいかない」



罪と犠牲を忘れない為の戒め…か。


だったら早くその罪の部分だけでも取り払ってやらないとな。



「…そう言う事らしいので左腕の治療は断らせて頂きます」


「……分かったわ」


「他に聞きたい事はありますか?」


「…無いわ」



ようやく終わりを迎える召喚…これ以上語るものが無くなった僕は、



「そうですか。これからは白雪が人の姿のままお伺いする事もありますので覚えて頂けると幸いです。では、私は魔道具の開発を続けますのでこれで失礼します」


「失礼致します」



白雪と共に自宅へ帰る…。









「はぁ~…気疲れしたー…」


「帰ったら気分が落ち着くお茶でも淹れます」


「おー、ありがとねー」



14時頃…ルクスからの召喚を終え、自宅前に着いた僕と白雪。



「…?」


「…マスター」


「うん…誰だろ?」



自宅のドアノブを握った瞬間に感じる気配…白雪も気付いたのか手袋を嵌めた手で拳を作る。


僕の自宅に物盗りに入るなんて、そんな事を思いながらドアを開けば、



「───!!お前は───!どういう───!」


「…あれ?」


「この声は…リベーラ様?」



聞き覚えのある声に戦闘態勢を解き、二階に上がるとそこには修羅場が繰り広げられていた。



「リオ!!何故お前がシオンの寝室で下着姿で寝ているんだ!!」


「知らねぇ!覚えてねぇよ!」


「まさかお前…!!」


「んなワケねぇ!!…だろ…?いや…?」


「おい!!!!」



僕の寝室で目をきつく吊り上げ怒鳴るリベーラさん、ボサボサの髪を掻き混ぜて首を傾げる黒い下着姿のリオさん…大体何でこうなったのか察しが付いた僕はもう一度気疲れする覚悟をしてニコニコ笑顔で近づく。



「ただいまですリオさん、リベーラさん」


「シオン!?これはどういう事だ!?というかその格好はどうしたんだ!?」


「やっと帰って来たか…さっさとこいつに説明しろよ。後ウチにもな」


「分かりましたって…とりあえずリオさんは服着てください。アリア、お茶を淹れてくれる?」


「分かりました」


「アリア…?」



ずっと疑問符を浮かべてるリベーラさんを連れてリビングに入り、服と言ってもタンクトップとショートパンツというとてもラフな格好で現れたリオさんに話すべき事を話していく…。



………


……




「…なるほどな、勘違いをしてしまって済まないな、リオ」


「いや…あの光景を見りゃ誰だって勘違いすんだろ…ウチも久々に記憶飛んだけど思い出したわ」


「よかったです」



修羅場が終わり、とりあえず落ち着いた雰囲気になった所で僕は問う。



「それでリベーラさんは何か僕に用事があったんですか?」


「ん、ああ。ハーヴィス達を覚えているか?」


「ええ、ハーヴィスさん、ロッゾさん、イアンさん、シュイさん…リベーラさんが騎士団に居た頃の部下の方々ですよね?」


「そうだ。アルフレッド商会も全て一新してハーヴィス達に支店長を任せたり、足りない所に人を派遣したり…王家の方々に献上する為の服も仕上げた。ようやく仕事の方が一段落して余裕が出来たから以前約束したお疲れ様会をと思ったんだが…」


「おお!やっと落ち着いたんですね!やりましょうお疲れ様会!」


「まだあの約束が有効でよかった。その日程を決めたくて来たんだが…」


「日程…」



んー、リオさんに待ってもらってる最中だし…お伺いを立ててみるか。



「師匠…?」


「はぁ…聞くにずっと前から約束してたんだろ?やりゃいいだろ」


「いいんですか?」


「別に一日二日遅れても変わんねぇし、明確な期限も決めてねえからな」



おー…師匠って呼んでも呼ぶんじゃねぇって言われなかったし、右腕を治療したから少しは軟化したのかな?



「…じゃあ、今日とかどうですか?今からご飯作り始めれば大分豪勢に出来ると思うんで」


「今日か…分かった、アンリとユウリにも伝えておこう。問題が起きなければ20時頃に来れると思う」


「分かりました!用意しておきますね!」



そう笑顔で言えばリベーラさんも笑みを浮かべて僕の頭を撫でつける。



「…本当に息子なんだな?」


「ああ。…余りシオンにだらしない姿を見せるなよ?目に毒だ」


「ああん…?ウチの体が目に毒だと…?」



高身長のリベーラさんより更に身長が高いリオさんの圧…普通に怖い。



「まぁまぁ…僕はリオさんも十分綺麗で魅力的だと思いますよ?」


「なっ!?シオン!?」


「ハッ!」


「だけど、僕も一応男の端くれですので下着姿で寝てたりされると困りますし、折角綺麗なのに髪とかボサボサなのは勿体ないなって思っちゃいますね」


「…チッ、はいはいわーったよ…」



よし、これで丸く収めるには…



「と言う事なのでリオさんもよかったらお疲れ様会に参加します?」


「あぁ…?何でだよ?」


「えー?覚えて無いんですか?」


「はぁ…?何をだよ?」


「昨日、僕の手料理を食べて“お前の飯はマジで美味い、ウチの嫁にしてやるから毎日飯を作ってくれ”って肩組んで来たじゃ無いですか~」


「何!?」


「はぁ!?絶対にそんな事言ってねぇ!!」


「言ってましたよ~」


「リオ…!ちょっと話そうか…!」



喧嘩するほど仲がいい…そう思いながら僕は白雪と一緒にお疲れ様会の料理を作り始める…。

遂に100話まで投稿する事が出来ました。

偏に読んで頂けてブックマークや評価、リアクションをしてくれる皆様のお陰でここまでモチベーションを保ちながら続けられたと思っています。


これからも生暖かく話の行方を見届けて頂ければと思いますのでこれからもよろしくお願いします。

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