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新グライフトゥルム戦記~運命の王子と王国の守護者たち~  作者: 愛山 雄町
第十章:「奮迅編」

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第四十話「軍師、敵の能力に驚愕する」

 統一暦一二一七年六月十七日。

 ゾルダート帝国南部エーデルシュタイン、総督府軍本部屋上。マティアス・フォン・ラウシェンバッハ伯爵


 魔神たちの攻撃が始まった。


「Cの五にて魔導(マギ)による攻撃を確認! 上級悪魔(グロースデーモン)悪魔(デーモン)が約十体!」


「Aの三でも同様! 約十体の悪魔が建物に炎の魔導を撃ち込んでいます!」


「Cの一も同様! 二棟で火災発生を確認!」


 町に配置した通信班からの情報が次々と入ってくる。


 エーデルシュタインの町は一キロメートル四方であるため、二百メートル四方を一区画とし、南北にAからE、東西に一から五の番号を振って管理している。

 それぞれ報告してきた場所は東、北、西の各門に近い場所だ。


 敵は門に近いところから火災を起こし、一網打尽にするつもりらしい。


 入ってきた情報を参謀たちが確認し、予め作ってあったマニュアル通りに、それぞれの担当の通信班に命令を出していく。


「ユーダ隊は放水の魔導で対応! 延焼が防げないならその区画は放棄!」


「地上部隊攻撃開始! 弩を使え! 当たらずともよい! 建物以外にも注意を払わせろ!」


「増援が必要ならすぐに司令部に連絡してくれ! 後手に回ると収拾がつかなくなる!」


 一気に慌ただしくなる中、ラザファムが冷静に命令を出す。


「マティ、大賢者様に攻撃が始まったと合図を送ってくれ」


 その命令を受け、私が指示を出す。


「了解。偵察大隊に攻撃開始と伝えよ」


「了解しました! こちらエーデルシュタイン……」


 通信兵が街道沿いに配置した偵察大隊に命令を伝えていく。

 更に南の城壁から主力が到着したという報告が入った。


「クローゼル中将より報告あり! 一つ目巨人(クークロープ)約二十、合成獣(シメーレ)約三十が接近中。率いているのは以前より強力な魔将、恐らく魔神ではないかとのことです!」


「了解」


 通信兵にそう答えた後、総司令官であるラザファムに話し掛ける。


「魔神が出てきたようだね。本気になられると困るから、一つ目巨人が接近してくるまでバリスタは温存した方がいいね」


「そうだな。グスタフ、五十メートル以内に接近するまでは弓と弩で攻撃するようヘルマンに伝えてくれ。但し、魔神が本気で攻撃してくるようなら即座に退避だ」


 ラザファムは城壁を担当するグスタフ・フォン・ヴェヒターミュンデ中将に命令を伝える。


「了解です」


 グスタフは真剣な表情で頷いている。


「逃げ道を塞いで町を焼き払いにくるようだ。君の予想通りの展開だな」


「そうだね。姿が見えない魔将(アークデーモン)死霊魔導師(リヒ)は南以外の門を封鎖しているはずだ。下手に攻撃に参加させて、高出力の魔導を使われることを懸念しているだろうから」


 妻のイリスが私の意見に賛同する。


「そのようね。それに偵察大隊を使った連絡手段にも気づいていないはずよ。大賢者様が戻ってくるのは帝国軍を救出してからと考えている可能性は高いと思う。だから強力な魔導を使うことはないわ」


 グレゴリウスとしては大賢者が戻ってくることを避けたい。

 だから魔導師としての能力が高い魔将と死霊魔導師は最終的に止めを刺すときまで温存しておく。


 また、ここ数日は大賢者がここにいたため、敵は偵察を出すことができなかった。それに加え、我々も偵察を出していないから兵士を捕らえて情報を引き出すこともできなかった。


 そのため、こちらに増援があったことに敵が気づいていない可能性が高い。当然、こちらに魔導師隊がいることは想定していないはずだ。


 そんな状況で比較的低出力の魔導だけを用いて住民を確実に殺すには、門を封鎖した上で大規模な火災を起こせばいいと考えるだろう。


 高速で飛行する悪魔たちが木造家屋に火を点けていき、風の魔導で火を煽れば、簡単に大規模な火災を発生させることができる。それに対し、防御側の方はバケツリレーによる消火くらいしかできないと考えているだろうから、すぐに手が付けられなくなると思うはずだ。


「問題は魔神がいつこのことに気づくかだな。大規模な火災になかなかならないと苛立てば、最悪の場合、第八階位の魔導を使われる可能性もある。そうなったらお手上げだ」


 ラザファムが深刻そうな表情で呟く。


 第八階位の魔導は戦略級と呼ばれ、地形が変わるほどの破壊力があると言われている。

 大賢者に聞くと、災厄級の魔神なら使えることは間違いなく、その場合、地下に退避した住民たちもその多くが命を落とすと断言した。


「あなたの考えた偽装に騙されてくれればいいのだけど」


 妻の言う通り、ちょっとした工夫がしてある。

 それは建物の屋根に麦藁などの可燃物を置き、炎と煙を多く上げる細工だ。これによって順調だと思ってくれることを期待していた。


 一つ間違えれば、火災を誘発しかねない策だが、屋根はスレート葺のところが多く、そこに泥を塗っておけば、短時間で消える麦藁の炎程度なら耐えられると考えたのだ。


 もちろん、昼間に襲撃を受けたらバレバレだが、陽動で帝国軍を襲撃するなら夜間になると確信していた。


 今のところ、その策が成功し、悪魔たちが炎を放っている地区では多くの赤い火が見えており、知っている私たちでも大規模な火災が起きているのではないかと思ったほどだ。


 のんびり話をしているが、この辺りに悪魔たちはあまり寄ってこない。

 理由はエーデルシュタインの南側は総督府軍の施設が多く、彼らが目標としている住民が少ないためだ。


「クローゼル中将より連絡! 一つ目巨人が五十メートル以内に入りました! 攻撃を開始するとのことです!」


「了解」


 城壁上には二十基のバリスタが設置してある。

 少しすると、城壁から歓声が上がった。


「クローゼル中将より報告! 一つ目巨人三体、合成獣二体の無力化に成功! 第二射に移るとのことです!」


 その報告に参謀たちが声を上げた。

 私はそれに応じることなく、ラザファムに進言する。


「ヘルマンに撤退のタイミングを見誤らないように伝えた方がいいね」


「そうだな。魔神がいるならバリスタごと蹂躙される可能性がある。通信兵! ヘルマンに撤退のタイミングを間違えるなと伝えろ!」


 初撃が成功したのは敵が油断していたからだ。

 魔神であるグレゴリウスは時間を掛けたくないから、自身で肉弾戦を挑む可能性が高い。

 それはすぐに現実のものとなった。


「強い力を持った者が来ます! 恐らく魔神!」


 叡智の守護者(ヴァイスヴァッヘ)の大導師、シドニウス・フェルケが鋭い声で警告する。


「撤退の合図を出せ! ラッパを鳴らせ!」


 ラザファムが命じると、即座にラッパの大きな音が響く。


「魔導師隊は防御魔導の準備を。すぐに必要になるかもしれません」


 シドニウスに伝える。


「分かりました。ですが、あの者が本気を出せば、一撃すら防げませんよ」


「承知しています。ですが、最初から本気の一撃は来ないはずです」


 戦術級と呼ばれる第六階位の魔導ならシドニウスでも防ぐことができる。第七階位の魔導になると、シドニウスだけでは無理で総司令部にいる魔導師隊二十名が防御魔導を展開して何とか一撃を防ぐことができるかどうからしい。


「城壁上で戦闘が始まりました! 退避、間に合いません!」


 グスタフが叫ぶ。

 視線を向けると、禍々しい翼を持つ大柄な悪魔が巨大な剣を振り回して、ラウシェンバッハ師団の兵士たちをなで斬りにしている。

 その圧倒的な戦闘力に背筋に冷たいものが流れた。


下に前作のリンクがあります。こちらもご興味があれば、よろしくお願いします。

また、地図や世界設定などを集めた設定集もありますので、興味のある方はご確認ください。


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