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新グライフトゥルム戦記~運命の王子と王国の守護者たち~  作者: 愛山 雄町
第十章:「奮迅編」

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第三十九話「大賢者、帝国軍の救援に向かう」

 統一暦一二一七年六月十七日。

 ゾルダート帝国南部エーデルシュタイン北東。大賢者マグダ


 ゾルダート帝国軍が魔神の襲撃を受けた。

 儂は今その現場に向けて急行しておる。


 もちろん、最も危険なグレゴリウスを引きずり出すためで、儂自身の存在を強調するよう力を放出しながらじゃ。合図が来れば、即座にエーデルシュタインに戻る。


 マティアスからの情報では帝国軍の位置はエーデルシュタインから北東に約六十キロメートル。儂が本気で飛べば、二十分ほどで到着できる。

 それに儂の力を魔神たちが察知すれば、奴らは尻尾を撒いて逃げ出すはずじゃ。


 町を飛び出してから北東を探るが、強力な魔導(マギ)の力を何度も感じた。


(まずいの。帝国軍もマティアスの策を受けて広く散開しようとしておるのじゃろうが、あれほどの力の魔導ではあまり意味がないの……)


 儂が感知した力は第七階位に匹敵する。

 第七階位の魔導は一キロメートル四方の城塞都市を一撃で殲滅できるだけの威力がある。襲撃から十分ほどの時間では、深夜の深い森の中では数百メートルしか離れられぬ。この程度の距離ではあまり意味がない。


 十分ほど飛ぶと、魔導が更に激しくなった。

 まだ直線距離でも三十キロメートルほどあるはずじゃが、目的地の方がぼんやりと明るく、時折閃光のようなものも見えた。


(幸い町までの距離が近いからすぐに戻れる。まずは帝国軍を救うべきじゃろうな)


 マティアスの計画では帝国軍を襲う魔獣(ウンティーア)は無視し、エーデルシュタインの住民を守ることになっておる。しかし、管理者(ヘルシャー)の忠実な僕である儂に、この状況を放置することはできなかった。


 近づいていくと、森のあちこちで火災が発生しているのが見えた。

 それ以上に危険な兆候に気づき、暗澹たる思いになる。


魔素(プノイマ)が溢れておる。間違いなく魔素溜まり(プノイマプファール)ができるの……)


 あと一キロメートルほどの場所まできたところで、魔獣の気配を感じた。


(上級悪魔と悪魔か……大物がおらぬの。どこに隠れたのじゃ? 逃げ出しよったか……)


 気配を探る範囲を広げると、魔将と魔竜は儂を恐れて逃げ始めていた。それに上級悪魔どもも倣う。


(帝国軍の動きを真似られたか……まあよいじゃろう。時間を稼げれば、それだけ兵士たちは逃げられるのじゃからな……)


 後ろを見るが、まだ合図の火球は上がっていない。

 雑魚どもを蹴散らしながら更に五キロメートルほど北東に進んだ。


 魔獣どもは未だに逃げ続けており、追いかければエーデルシュタインから更に離れることになる。


(完全に動きが見切られておる。力はそれほどでもないが、知恵だけはあるようじゃ。神霊の末裔(エオンナーハ)の魔導師たちの意識が残っておるのじゃろう……)


 儂は追いかけるのを諦め、火災を消すため、以前行ったように大規模な雨雲の召喚を行うことにした。


(問題は時間じゃ。空気はさほど乾燥はしておらぬが、最短でも五分は掛かるの……)


 上昇気流を作り出そうとした時、合図が見えた。

 街道沿いにいくつもの火の玉が上がり、まるで道を示すかのようじゃった。


(やむを得ぬの……)


 儂は雨雲の召喚を諦め、エーデルシュタインに向かう。

 その直後、儂を嘲笑うかのように魔将たちが戻り始めた。


(儂が戻らざるを得ぬことを知っておるようじゃの。まあよい。グレゴリウスを倒してから追い詰めてやるだけじゃ……)


 幸いなことに奴らの気配は完全に把握できた。これで相当遠くに行かぬ限り、見失うことはない。

 ただ、魔神がおらぬことだけが気がかりじゃった。


(ダグマーに憑依したであろう魔神は最後まで姿を見せなんだ。儂を警戒しておるのじゃろうが、まずい状況じゃ。恐らくグレゴリウスだけではなく、魔将らも囮にするつもりじゃ……)


 ダグマーの考えは何となく読めておる。

 魔将と魔竜に魔素溜まり(プノイマプファール)を作らせて自らの力を強めるが、自らの存在を隠しておく。


 更に儂がグレゴリウスに対応する間にこの場を離れ、リヒトロットか帝都に向かう。

 配下がおらずとも魔神の力であれば大都市を壊滅させることは容易い。そして、その力をもって我らに対抗しようと考えておるのじゃ。


(更に十万以上の民が死ぬことになるやもしれぬ。じゃが、グレゴリウスを放置するわけにはいかぬ……)


 儂は苦々しく思いながらエーデルシュタインに向かった。


■■■


 統一暦一二一七年六月十七日。

 ゾルダート帝国南部エーデルシュタイン南。元第二王子グレゴリウス


 遂に大賢者が町を離れた。

 すぐに配下の者たちに進軍を命じた。


「エーデルシュタインに向かえ! 大賢者に気取られぬよう、力を抑えて進むのだ!」


 これまでの経験で分かったことだが、大規模な魔導さえ使わなければ、大賢者の探知範囲は十キロメートルほどだ。

 その距離を保っておけば、町に近づいても戻ってくることはない。


 町に一キロメートルほどまで近づくが、大賢者の気配はまだ三十キロメートルほどしか離れていない。


「念のため、あと五分待ってから総攻撃だ。但し、第五階位以下の魔導しか使うな。そうすれば、大賢者に気づかれる恐れはない」


 帝国軍の位置はここから北東に六十キロメートルほどだ。大賢者の飛翔速度なら二十分ほどで戻ってきてしまう。


 そのため、奴に気づかれないことが重要だ。

 気づかれさえしなければ、連絡する手段はないのだから、ダグマーたちが全滅するまでの一時間ほどは戻って来ない。


「南は俺が押さえる。魔将(アークデーモン)は北と東の門を、死霊魔導師(リヒ)は西の門を押さえよ上級悪魔(グロースデーモン)はそれぞれ十体ずつ悪魔(デーモン)を引き連れ、町の北側を中心に火を放て」


 配下である魔将二体、死霊魔導師五体、上級悪魔五体、悪魔五十体に命令を出す。


 作戦は至って簡単だ。

 東西南北の城門を押さえて袋のネズミにしておき、町の中に火を放つ。木造の建物に火が着けば、城壁が竈の役目を果たし、住民たちを焼き殺してくれるはずだ。


 北側を狙うのは商業区と居住区であり、住民が多くいるからだ。

 ダグマーに聞いたのだが、エーデルシュタインは南側に軍の施設が集中しており、住民もほとんどいない。また、防衛拠点にもなっているため、頑丈な建物も多く、効率が悪いと判断したのだ。


 その間に後方から一つ目巨人(クークロープ)のドシンドシンという足音が聞こえてきた。振り返ると、一つ目巨人と合成獣(シメーレ)の走っている姿が見えた。

 その数はそれぞれ二十二体と二十八体。


「お前たちは俺と一緒に南門を突破する。付いてこい」


 一つ目巨人と合成獣はあまり頭がよくない。魔将と組み合わせてもよかったのだが、これだけの数になると、命令を無視する奴が出てくる。


 だから一箇所から攻め込み、町の中で思う存分暴れさせた方がいいと考えた。それに火を恐れて南側に逃げてくる住民たちを効率よく殺せるはずだ。


「攻撃を開始する!」


 俺の命令で魔将たちがそれぞれの場所に飛んでいき、上級悪魔たちが星の煌めく美しい夜空に向かって高く舞い上がった。


 南の城壁から五百メートルほどに近づくと、ラウシェンバッハの部下たちが城壁の上で待ち構えていることが分かった。

 夜目の利く獣人ならこちらの姿は見えているはずだが、動揺した様子は見られない。


「健気なものだ」


 そう言って鼻で笑い、更に前進を続ける。

 百メートルほどまで近づいたところで、城壁の上から矢や太矢が降り注ぐ。

 その数は千本ほどで勢いは強く、普通の兵士なら盾があっても大きな被害を出したはずだ。


 しかし、俺には全く効果がない。

 矢は俺の身体に触れることなく、落ちていく。


「無駄だ」


 そう言って鼻で笑う。後ろにいる巨人たちにも当たっているが、弱点である目を手の平で覆っており、全く効いていない。

 その間に町の中から爆発音が聞こえ始めた。


「始まったようだな。では、俺の方も本格的に攻撃するとするか」


 俺は高く舞い上がると、巨人たちに命令を出した。


「城門を破壊しろ! 町の中の人族を一人残らず殺せ!」


 巨人たちは俺の命令を受けて咆哮を上げ、突進していった。


下に前作のリンクがあります。こちらもご興味があれば、よろしくお願いします。

また、地図や世界設定などを集めた設定集もありますので、興味のある方はご確認ください。


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