↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死を回避したい悪役令嬢は、ヒロインを破滅へと導く  作者: miniko


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/116

61 再びの接触

 王宮へ向かうアイザックと別れた私達は、食堂へと移動した。


 職員のおばちゃんにお勧めされたサーモンのムニエルをトレーに乗せて、生徒達で賑わう食堂内をグルリと見回す。


「窓際にしましょうか」


「そうですね」


 人気があって、いつも直ぐに埋まってしまう窓際の明るい席が、今日は運良く空いている。

 その席を陣取って食事を始めると、隣の席の椅子を引く音がした。

 何気なくそちらへと視線を移す。


「……ゲッ」


 思わず品のない呟きが漏れてしまった。


「やあ、奇遇だね。フィーも昼食かい?」


 隣席から私に問いかけたのは、クレイグである。

 奇遇も何も、昼休みの時間帯に食堂で昼食を食べるなんて事は、大半の生徒が行っている、ごく当たり前の行動である。


 それにしても、他にも空いてる席が沢山あるのに、何故わざわざ私の隣に座るの?

 嫌われてるのが分からないのだろうか?

 それとも生ごみを見る様な目で見られる事で快感を得るドMなのか?

 そーゆー特殊なプレイは、是非とも私と関係のない所で楽しんで頂きたい。


「態々質問なさらずとも、食事中なのは見ればわかりますよね?

 それから、愛称で呼ばないでくださいと先日お願いしたばかりですのに、もうお忘れになったのですか?

 だとしたら、記憶力の欠如が心配ですわ」


 冷ややかな眼差しを投げながら嫌味ったらしくそう言うと、困った様な笑みを返された。

 今日もまた、我儘を言う子供を宥めるみたいな目で私を見る。

 クレイグのその態度には苛立ちを覚えるけれど、過剰に反応したら負けだ。


「心配してくれるのかい?

 やっぱり君は優しいな。惚れ直したよ」


 渾身の嫌味にもめげないクレイグ。腹が立つやら気持ち悪いやら。

 ベアトリスも流石に黙っていられなくなったらしく、クレイグを睥睨しながら口を開いた。


「ボルトン子爵令息。

 元婚約者に付き纏うなんて、みっともなくてよ?

 これ以上、私とオフィーリアの大切な時間を邪魔しなでくださらない?」


「これは失礼致しました。でも、もう少しだけ。

 フィー、今日家に帰ったら素敵な事が待っているから、寄り道はしない方が良いよ」


 ベアトリスの苦言も笑顔で躱し、クレイグは機嫌良さそうに意味の分からない事を言い出した。


 ってゆーか、素敵な事って何よ?

 嫌な予感しかしないんだけど。


「もう黙って頂けません?

 折角の食事が不味くなるわ」


「はいはい。我儘なお姫様だな。

 まあ、そんな所も可愛いんだけどね」


 ゾワッと背筋が粟立った。

 嫌いな奴からの甘い台詞って、こんなにも気持ちが悪い物なのね。


 さっきから、美味しいはずのサーモンムニエルの味が全く感じられない。

 窓際の席もゲットして、とても良い気分だったのに台無しだわ。

 目の前に座っているベアトリスも、苦虫を噛み潰したような顔で、黙々と食事を続けている。


 その後はクレイグが話し掛けて来る事もなかったが、私達は無言のまま、令嬢とは思えないスピードで食事を終えた。

 後で胃が痛くなるかも。




 食べ終わった食器をサッサと片付けて、食堂を後にする。

 クレイグが「またね」と手を振っていたが、当然無視だ。


「何なの、アレは?

 無駄にメンタルが強過ぎて、気持ち悪いんだけど」


 食堂を出た途端、ベアトリスが溜息と共に呟いた。


「巻き込んでしまってごめんなさい。

 カフェテリアに移動して、口直しにお茶でも飲みませんか?」


「そうね。食べた気がしなかったから、何か甘い物も頂きましょう」


 お昼休みの残り時間を、お茶を飲みながらたわいない話をして過ごし、無理矢理気分を浮上させた。


 そして午後の授業を終え、下校時間となったのだが───。



「帰りたくねぇぇぇ……」


 帰路を進む馬車の中で、私は頭を抱えて、盛大な溜息を吐き出していた。

 アイツ絶対ろくでもない事を考えてるよねぇ?

 面倒臭い事が起きる気がして仕方がない。


 嫌だ嫌だと思っていても、我が家の優秀な馭者が操縦する馬車はスムーズに家路を辿り、あっという間に自邸の敷地内へと到着してしまった。


 重い足を引き摺る様にして玄関をくぐると、難しい顔をした執事が待ち構えていた。

 嫌な予感、的中?


「お帰りなさいませ、お嬢様。

 お疲れの所を申し訳ありませんが、旦那様がお呼びですので、談話室へお越しくださいませ」


「分かったわ。着替えてからでも良いかしら?」


「かしこまりました。その様にお伝えしておきます」


 私室へ戻った私は、リーザの手を借りながら、制服から普段着のドレスへと着替える。


 せめてもの抵抗で牛歩の様にノロノロと廊下を進み、談話室に辿り着くと、既に私以外の家族全員が揃っていた。

 心なしか室内には重苦しい空気が漂っている。


「只今帰りました。

 お待たせしてしまい、申し訳ありません」


「お帰り、オフィーリア。

 取り敢えず、座りなさい」


「……はい」


 言われた通りにソファーに座して、紅茶を一口頂いた。

 深刻な顔をしたお父様は、なかなか口を開こうとしない。

 そんなに言い難い話なのか?

 嫌な予感がどんどん強くなって行く。


 暫くして、意を決したように顔を上げたお父様は、徐に話し始めた。


「実は……、ボルトン子爵家からオフィーリアに再婚約の打診が届いたのだが……」


「………………はぁっ!?!?」


 私は思わず、素っ頓狂な声を上げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。