柊大和視点2
武を呼び出して、小一時間。
遅い。
「バイクで来れば、もう着いてるはずだが……」
「武兄さんは、持ってませんよ?」
ん? あれ?
「そうだよねー、ずっと欲しいとは言ってたけど、買ったとは聞いてないもんねー」
「はい。ずっとバイク雑誌見て、ため息ついてます」
「バイトも探してたみたいっすよ」
あるぇ?
「なぁ、俺が見たのは幻覚か?」
「何を見たのさ」
「武がバイクに乗ってるのだよ。先週辺りかな?」
「あれは大和兄さんのを、借りてたんです」
「ぬぁんと?!」
あいつ、マジぶっ殺す。
「でも、あれは仕方なかったんだよねー」
「そうっすよ。バイクがなければ、大変だったっす」
「たすかりー」
「よし、胡桃。詳しく話せ」
まったく話が見えん。
武への殺意が消えん。
「あの日は、私とタマが助っ人だったの。けど、タマが遅刻したの」
「ターマァー」
「ごめ」
素早く頭を下げたタマを、一発叩く。
叩く、というか、小突く。
「正確には、迷子っす」
「まあ、置いといて。んで、タマを迎えもとい、探しに武が駆り出されたと」
「それで、何故俺のバイクを使う」
「距離があったんだよ」
聞きなれた声が、背後からした。
ちょっと待て。背後は壁と窓だ。
振り返ると、窓の向こうに、俺の殺意を倍増させる顔があった。
「よーし、そこを動くな。今楽にしてやる」
「落ち着けカスが。話を最後まで聞けドカス」
「てめぇのボスは俺だ。すなわち、カスはてめぇだろうが」
「その単語は、それ以上使用しないでくださいね」
んもーう、可愛いなぁ美琴は。
「話戻すよー。迷子になったタマから、美琴に連絡が行って、武が頼まれたってわけよ」
「美琴ぉ。何でお兄ちゃんを頼ってくれなかったんだよぉ」
「何でって……。あの時、大和兄さんは部屋にいて、パソコンに向かってニヤニヤしてたので……」
「気持ち悪くて近寄れなかったんだとよ」
……あの時?
……あの時のことか?
……しょうがないじゃないか。狙ってた子との両思いフラグが立ったんだから。
「またエロゲーしてたの?」
「エロゲーじゃないわい。恋愛シュミレーションゲームだ!」
「私にとってはどちらも同じですが」
美琴はシュミレーションゲーム嫌いだもんなー。
俺は何でもやるけど。




