柊武視点1
涼風高校。俺達の通う高校。
一応、通っている。
「たーけー。またネトゲ?」
「ハッキング」
俺の趣味のひとつだ。
……犯罪には触れてないからな。学校の管理システムを覗いてるだけだ。
ここは俺が副部長をしている部活の部室。
助っ人部。
「ぐ」
「胡桃さん。珠樹君、お腹空いてるみたいですよ?」
「専用戸棚になんかあるだしょ?」
「ぐっぐー」
「空っぽみたいですよ?」
「ぐっぐぐー!」
「喧しい。胡桃、カー○ンクルを黙らせろ!」
手元にあったダーツを、左側にいた女、胡桃に投げる。
見事キャッチした胡桃は、自分の鞄から大量のクッキーを取り出した。
「ほーら、タマ。大好きなシナモンクッキーだよー」
「ぐぐっぐー!」
胡桃に向かって、珠樹は飛び出した。
……自己紹介がまだだったな。
俺はこの部活の副部長で、二年の柊武だ。
左側の菓子袋を取り出した女は、同じクラスの木羽胡桃。喧しい男女。
美琴と珠樹は知ってるだろう。妹で一年の美琴と、美琴と同じクラスの珠樹。
「お疲れ様っす」
「おう、蒼真か。お疲れー」
「お疲れ様です。何飲みますか?」
「今日はアールグレイのミルクティーが良いっす」
要望を聞いた美琴は、部室の右端にある仕切りの奥に向かった。
ちなみに、新しく増えた女は、美琴のクラスメイトで、部員の咲良蒼真。
「……ねぇ、タケ。私一度でいいからキッチンに行ってみたい」
「美琴に頼め」
うちの部室にはミニキッチンがある。
今現在、美琴がいる所だ。
元々宿直用の教室を改装して、部室にしてるからな。
で、備え付けのミニキッチンを戸棚とかで仕切って、部室からは見えないようにしている。
管理者っつうか、利用者は美琴。唯一使ったことのある蒼真いわく、いろんな種類の茶葉とコーヒー、ティーセットにケーキセットもあるらしい。
ちなみに。キッチンに絶対入れないのは、大和と珠樹の二人。
「蒼真ちゃん、お待たせしました」
美琴がトレイにのせて持ってきたのは、ミルクティーの入ったティーカップと、小さめのケーキ。
「けーくー」
「ダメですっ。それにこれ、胡桃さん特製の蒼真ちゃん専用激辛ケーキですよ?」
「むっー!」
激辛と聞いて珠樹は飛び退いた。
なんでも食べる珠樹の唯一食べれないもの。辛いもの。
しかし、辛いもの見て飛び退くのは別に構わないが、俺のところに来るのはやめてくれ。
「美琴、大和はどうした?」
「大和兄さん? 教室に迎えに来て、そのあと呼び出しされました」
美琴は部活中は誰にでも敬語だ。
余談だが、蒼真は味覚音痴並みに辛いものが好きだ。マイタバスコは最低二本あるらしい。
「大和が呼び出し……バイク登校か?」
「出席日数じゃない?」
「私服登校かもしれませんよ?」
「あるいは全部じゃないっすか?」
「どれもハズレだ、馬鹿共め」
全員で呼び出し理由を考えていたら、奴が現れた。
部室の入り口で分厚いファイルを抱えながら、仁王立ちしてる馬鹿が、部長で不本意ながら俺の兄の大和。
俺と風は二卵性双生児だから、こいつも二年。
「あ、美琴は馬鹿じゃないよねー。良い子だもんねー」
「贔屓だー」
「相変わらずっすね」
恥さらしのシスコンめ。
「てめぇ、自分で召集かけといて遅刻かよ」
「時間指定した覚えはねーよ」
「喧嘩するなら私達は帰ります」
「しないよー。あ、お兄ちゃん美琴の淹れたベルガモットが飲みたいな。ストレートで」
コロッと態度を変えた大和に呆れながら、美琴はキッチンに行った。
……むしろ、ベルガモットティーなんてのも用意してんのかよ。




