第3配信 お前、関西の奴だったんか
「コラボってまだなんですか〜?」
まるで駄々をこねるように恵那は言う。
「もうそろそろやってもいい頃合いだと私も思いますけど、まだあっちからオーケーもらってないんですよねぇ」
「むー!」
「アラサーの膨れっ面はきついもんですね」
「う゛」
とんでもないナイフを刺された。痛いよぉ、心が。
「……!恵那さん、コラボのきょk……」
「準備はできてる。いつからだ?」
「そんなに楽しみだったんですね……」
そりゃあねぇ。楽しみに決まってる!
「何をするんですか?」
「無難に雑談配信ですかね」
「にふふ、わかりました」
「恵那さん気持ちが悪い」
「スイマセン」
そんなこんなでコラボが決定した。
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今回のタイトルは、
『念願のコラボ!』
simple is best.ってやつだ。
「ふふ、今回はよろしくお願いしますね」
同期に挨拶をする。
「はぁい、よろしくお願いしますぅ」
変に間延びした母性を感じる天使のような声が聞こえる。
「こちらこそ!よろしく!」
今度はキレの良い返事が返ってくる。元気っ子を連想させるような声だ。
事前の打ち合わせは十分。不測の事態に陥った時の対処から、パンツの色までしっかり念入りに固めた。ちなみに両方とも黒らしい。私のムラムラが高まり、棒があったらそれすら固めた。大丈夫だと思う!さぁ、
「スタートしますよ!」
ライブ、スタート!
「皆様、こんばんわ。『ホロ日和』所属、清楚系アイドルVtuberの煌女鬼エナです」
「みんなぁ、こんばんわぁ。『ホロ日和』幼稚園の先生、豊潤カノだよぉ」
「『ホロ日和』所属の陸上部部長の喜伊良ソウラだよ!」
それぞれが挨拶をする。カノさんはデカい。何がデカいってπがデカい。そして、目はおっとりしていて、エプロンのようなものも身につけている。ふひひ、やっぱたまらんわ。
そして、ソウラさんは、小さい。何が小さいって……。いや、やめておこう。目元はキリッとしていて、少し幼さを感じる。運動しやすそうな服をしてて、体操服に近い。すごくいい。特に体のラインが見えるあたり、じゅる。
「今日はぁ、何をするんですかぁ?」
「雑談!」
「ナニ!」
「エナさん、ソウラは伝わりませんよぉ?それに最初からぶっ飛ばしすぎですぅ」
「え?純粋すぎません?」
「ナニは何だろ!」
「ほらぁ」
「ガチかよ」
純粋すぎるだろ、本当に。この子、汚したくなるなぁ。いや、やっぱ汚したくないかも…?不思議……。
「雑談って言っても何するんですかねぇ」
「だからナn」
「いい加減にするのよぉ」
「スイマセン」
うん、何事も加減って大事だよね。
「へへ、怒られてやんの!」
「ソウラちゃん、あんまアラサーをナメないほうがいいよ?いいの?私のリスナーと、マカロンを送りつけるよ?」
「どんな化け物なんですかぁ?貴方の視聴者さんはぁ」
・なんでそんな酷いことできんの?
・ソウラちゃんが可哀想だと思わないのか!?
・酷いなぁ
・人の心とかないんか
・今すぐ落とした優しさをとりに行きなさい!
・アラサーこえぇw
・確定で起きるからワンチャン、ノストラダムスの大予言よりタチ悪りぃぞ
「リスナーの皆様、それ、私を非難すればするほど自分たちにダメージ入りますよ?」
「なんか愉快な人が多いな!」
「愉快っていうかぁ、もうみんな芸人さんみたいですよねぇ」
なんか、もうソウラちゃんとカノちゃんのリスナー息してなくね?大丈夫?見た感じおとなしそうな人ばっかだったからさ、こーいうの苦手だったりしないかな……。
まぁ、そんな不安はさておいて、いい感じに会話できてるんじゃないかな。
よし!ここからは質問責めだ。答えられなかったらHなお仕置きだ!……どちらかといえばされたいなぁ。
「そういえば、幼稚園の先生ってアイドルVtuber扱いなんですかね」
「あぁ〜、そうですねぇ。よくわかんないですねぇ。リスナーさんに聞いてみましょうかぁ」
「リスナーさぁん!」
・俺ら年長さんのアイドルだな
・いやいや、年中さんのアイドルでもあるから
・お前ら中年だろ
・草
・ぼくのおかあさん
・↑嘘をつくなァァァァァァ!
・アイドルかなぁ
・幼稚園の先生系アイドルVtuber
・味噌汁作んのうまいよ、俺の嫁
・寝言は寝て言え
・寝てても言うな
・まぁ、アイドルかなぁ
・ソウラちゃんの元気な声で今日も俺の耳は孕む
・俺もうそろそろ生まれるで
・デビューしてから一週間しか経ってねぇのに生まれそうなの草
・アイドルだよ!
うーん、私のリスナーは鍛えられてんなぁ。鍛えた覚えないのに。
「ほへぇ、結構アイドルって認めてくれてるんだな!」
「ふ、ふふ、そうですな」
「エナさん、いっつもこんな感じなんですかぁ……?」
「恥ずかしながら……」
「大変そうですねぇ」
リスナーさん達に支えられて生きているのはわかってるけど、結構ひでぇ。アイドルのコメント欄じゃねぇよ、これ。
と、そろそろリスナーにお仕置きが必要かな?と思っていると、
「オリオン座の下で〜」
急にソウラちゃんが歌い出した。……?これって続き……。セック◯じゃなかった?いや、替え歌の可能性も……。でも、この流れはまずい!
「せっk」
「んなァァァアァァァァ!」
「ソウラアァァァァアア!」
二人揃って大声を出した。
危ねぇ!声入ってないよな?聞こえてないよな?本当に焦ったぁ!
「びっくりした!」
「こっちだわ!」
「こっちのセリフだ、このやろー!」
カノさんがキャラ崩壊してる。このやろーとか言うキャラじゃないもん。でもまぁ、しゃーない。私が言うのとじゃ全然違う。……?私が言う?あれ?もしかして……。いやそんなわけないか。
不安を振り払うように、カノさんの言葉に耳を傾ける。
「ほんまに自分が何しようとしたかわかってんのかー!?」
……?カノさん、関西の方だったりするのかな?どっかでそれっぽいこと言ってった気がするし。いや、気になったのはそこじゃなくて、あの、でもさ、これだけ言わせて。
「カノさん棒読みすぎない!?」
そう、すっごい棒読みの関西弁だった。
しかし、私の叫びなんか聞こえていないのか、説教を続ける。
「セック◯なんて配信で言っていいとおもてんのかー!?」
言っちゃってるよ、カノさんが、もう。
「ごめんなさい、エナさんが歌ってて頭に残っちゃってたから、つい………」
………?あれ、やっぱ、もしかして私も一枚噛んでる?これ。
やはり、先ほどの嫌な予感は的中したようだ。いや、的中してしまった、そう言うべきだ。
「エナさん」
「はい。正座はもうすでにしてあります」
うん。セック◯すら知らなそうな子がこんな歌、歌うわけないもんね。
「あ、その前に、ソウラはセック◯の意味は知ってるんか?」
「ううん」
「エナさん、自分が何したかわかってるんか?」
「スイマセン」
くそ!めっちゃ棒読みなせいで緊張感がねぇ!ってか、素がめっちゃ配信に出てるけどいいのかな?
その後、10分程度説教された。
「はぁ、これからは気をつけてくださいねぇ」
説教が終わる頃には口調は元に戻っていた。しかし、
・切り抜き〜
・もう切り抜きあがってる〜
・棒読み関西弁〜
・セック◯すら知らない純粋元気っ子〜
・年下に説教受けるアラサ〜
・戦犯〜
・そろそろエナさん反省しろ〜
・ってか、関西弁意外すぎん?
・可愛いけどなぁ
・怒ると口調変わるのいい
・エナ、ごめん。カノちゃんと突き合うことになりそうだ
・おいw
・漢字遊び好きだな、お前ら
・事実そうでは?
切り抜きはもうあがってるようで、これからあの口調はリスナーにいじられるようになるだろうと容易に想像できた。
若干焦っている様子を見せるカノちゃんを見ると、笑いがこみあげてくる。
「ふ、ふふ、ふふふ、にぇふふふふふw」
ダメだとわかっていても、笑いは止まらない。っていうか、無理に止めようとしたせいで変な笑い方になってしまった。
「あは、あははは!」
ソウラも笑っている。
「───!もー!このやろー!」
恥ずかしがっているもののカノも満更でもなさそうだ。しかし、やはり棒読みだ。
そんなふうにして、平和(?)に初のコラボ配信は終わった。
・平和やなぁ
・このやろー(棒読み)
・ちくしょう、可愛い
・おっとりとした子かと思ったら気象あらめの棒読み関西人で草生えた
・なんかこれを元にリスナー名つくられそうやな
・ソウラちゃんが純粋元気っ子で、もうどうしようもなく犯したくなった
・おまわりさーん
・あれでいいんだよ、ソウラは
・早くもユニコーン現れてて
て草w
・汚すのは僕が最初なんだから
・前言撤回お前はエナコーンだわ
・エ ナ コ ー ン
・エナがもう変態の代名詞みたいになってて草w
・変態の代名詞がエナだぞ?
・どっちでもええわー(棒)
・速攻いじられてて草
・僕のちく◯もいじってください!ソウラちゅわん!
・叩け
・オラァ!
・ふんぬ!
・ビュル!
・イッた奴いなかった?
・草wwww
今日も平和だ!
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「フヒー!やっと終わったぁ!」
「そうね、疲れた」
「いやぁ、疲れましたねぇ」
配信終了後、ホロ日和のサーバーにて、3人が会話する。
「配信終わりの通話にエナさんがいるって新鮮〜」
「いつもはお二人で?」
「そうですね、まぁ、反省会と称した愚痴の溜まり場ですが」
ふーん。こんなおばさんが入っていい場所ちゃうやん。あ、そういや。
「そういえば、お二人って本名の方は?」
「あー、そういえば言ってませんでしたね」
「確かに!」
まぁ、ここは最年長から名乗るとしますか!
「煌女鬼エナ改め、桜宮恵那と申します!」
「豊潤カノ改め、橘未来です」
「喜伊良ソウラ改め、鳴ヶ瀬ひまりです!」
各々名乗り、
「いいお名前ですね」
など、お互いの名前を賞賛しあった。
てか、ひまりちゃんは、日常でも若干キャラが滲み出てるな。……?そういえば、
「質問ばかりで恐縮ですが、未来ちゃんは日常では標準語なんですか?」
「………はい。私、方言が入ると抑揚が◯ぬので」
「でも、標準語もまだ慣れてない時棒読みだったよね」
「う、うるさい!」
顔真っ赤なんだろうなぁ。可愛い。方言もあれはあれでよかったけど、本人がそうしたいならそれでいいよな、うん。
「!そろそろ寝なきゃ!」
「確かにそうだね。すいません、明日朝早いのでここで失礼します」
「あぁ、はーい。それじゃ、またね」
プツッ!
通話が終わった。
「なんか、これからどうなっちゃんだろう」
不安や恐怖すら今は感じない。ただ今はは心地がいいだけ。ベランダに出て、夜空を見上げても、星空は見えない。やはり、現代だからなのか。でも、きっと、あの雲の奥には吸い込まれそうなほどに綺麗な星々があるのだろう、そう信じている。いつしか、この星が煌めかない現代の大空に、私という、一等星を一つ、輝かせて、誰の目にも届いて、綺麗だと、美しいと言われたい。それが、新たな私、煌女鬼エナの夢だ。
方言って、僕好きですよ




