結婚式 Ⅱ
『ソール城前広場』新領都ソラリスに設けられた特設会場、今回の結婚式の為に座席が設置されそこには各国の代表、要人、関係者が座っている。
それを避けるように立ち見で民衆も同じように、特設会場に詰めかけている。
その数も、新領都ソラリスの全人口が集まっているのかと思える程の民衆で……その熱気も空気を焦がしてしまうのではないかと、心配になりそうな程だ。
サウス領軍・アルブル王国軍が総出で警備を行っているので大きな混乱は無いが、ユリウスとその婚約者達の人気が伺える。
各国代表もその熱気にあてられているが、極めて冷静に状況を把握する為に情報収集に努めている。
この『魔の森に出来た巨大な都市』。世界一の冒険者クラン不知火、経済の中心的なヨツバ総合商会、軍隊としてはまだ小規模だがサウス領軍の戦闘力やアルブル王国軍の『樹木魔法』など……現在の大陸内で注目されているサウス領・新アルブル王国連合の情報を少しでも本国に知らせる為に。
そして、新たに創立されたギルドに代わる新しい組織『レギオン』。現在はまだ別の組織とされているが、不知火もヨツバ総合商会もこのレギオンに含まれている。
近い内にはギルド対レギオン……この大陸を舞台にせめぎ合いが繰り広げられるだろう。
その中心人物となるのがゴーレムバスに乗りながら周りを美姫に囲まれ、民衆に手を振るサウス辺境伯家嫡男ユリウスになる。
元は勇者パーティーの荷物持ち兼雑用であった男。
パッとした成果もなく、婚約者だった全員を勇者パーティー男性メンバーに奪われた冴えない男……というのが各国代表の共通認識だった。
しかし、タイタニア王国で開かれた魔獣『オルトロス』討伐を祝う会で行われた、ユリウスの勇者パーティー追放で本性を表した男。
この時に時代の流れは大きく傾いた。『ユリウス・フォン・サウス』という男を中心に……
この男の本当の狙いは何なのか? 野心はどこに向かっているのか? 自国の立ち位置は? ギルドとレギオンどちらにつくのか……
各国共に表面上のお祝い事の雰囲気を出しながらも、裏では腹の探り合いを広げている。
少しでも自国に有利になるように……
ただ、ノースタン神聖国とウエスタニア帝国だけは少し違う。
この先進的な都市を含めた技術力や人材を手に入れる為に……どの様にすれば『サウス領・新アルブル王国に勝てるのか』を……その為にタイタニア王国を攻める絶好のタイミングを逃して、自国の地盤固めを行っているのだから。
今の大陸はただの広い広大な土地の奪い合いではなく、技術力や経済などの奪い合いになりつつある。
各国の思惑とは関係無しに、大多数の観衆はユリウス達の結婚を喜んでいる。
この結婚では今では魔の森周辺に広大な土地を有する新アルブル王国フローラ姫、サウス領での昔からの寄り子貴族ザンゲル子爵、冒険者クラン不知火副リーダーでもあるユキミ、ヨツバ総合商会の統括でもあるシャルロット……これらが全て婚姻により繋がる。
観衆はそこに誕生するだろう新しい『魔の森経済圏』にある人は夢を、ある人は故郷を、ある人は野望を、それらを託す新たな夫婦の誕生を皆が祝う。
特設会場に設けられた演説台にサウス領、新アルブル王国、不知火隊長、ヨツバ総合商会の重役達が並ぶ。
その中からユリウスの父親でもあり現辺境伯当主グレイ・フォン・サウスが前に進み演説する。
「あ〜、俺はこういうのは苦手なんだが……何か言えと言われたからな。まぁ、ユリウスはどーでもいいけどフローラちゃんもネメシアちゃんもユキミちゃんもシャルロットちゃんもありがとうな。とってもキレイだぞ。ユリウスにはもったいないぐらいだ。俺もアリスに支えて貰ってここまで来たからな、君達もユリウスを支えてやってくれ」
グレイはぶっきらぼうに左の頬を掻きながら話しを始め、その隣に妻のアリス・フォン・サウスが寄り添っている。
そしてお互いを見てうなずきながら……
「ユリウスもこれで頼れる妻が出来て俺達も安心だ。よってこれを持ってサウス辺境伯当主の座をユリウス・フォン・サウスに譲る。これより、みんなはユリウスを盛りたててやってくれ……」
親世代の領民は泣いている。グレイは無能な領主では無かったが、武に寄ってる。領内の事はアリスが上手く回していた。その役目をユリウスと妻達に譲ろうというのだ。
最初はユリウスと妻達も反対したが……グレイとアリスは譲らずサポートに回る事を強く希望した。
これからの時代はユリウスと妻達が先頭に立ち、若い世代を導いて行く時代になる。周辺の状況もサウス領の状況も目まぐるしく変化していくので、ちょうど良い機会であった。
観衆である領民はスゴイ歓声を上げて新しい領主を歓迎している。この新領都を築いて自分達の居場所を作ってくれたのはユリウス達だが、その基礎を作り育み守ってきたのは間違えなくグレイ達、親世代なのだ。
空が割れんばかりの歓声の中でユリウスと妻達はグレイとアリスの前に立ち、深々と頭を下げる。
今までありがとう、これからは任せてくれ……と。




