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お前の全てを奪ってやったぜ。と言われたがほとんど無傷な俺はどうすればいいの?悲しむマネをすれば満足してくれるのか?  作者: 月鈴
第七章 幸せの形・不幸の形

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ルナティックパークでハーレム Ⅳ

 迷路『そこ押すなよ! そこ踏むなよ!』でエリザベス王女様と遊んだ……良い気分転換になったようで、終わり間際には良い笑顔で笑う王女様がいた。


「ユリウス、楽しかったわ。ありがとう」


 エリザベス王女様は満足そうに、皆がいる方に歩いていく。



 次はユキミとのアスレチック『苦労と困難に立ち向かう者』だね。

 身体を動かす事が大好きなユキミの尻尾はユラユラと揺れていて、期待しているのが良く分かるよ。

 その綺麗な銀髪が風に流されながら、ユキミはソワソワしているようだね。


 初めて会ったときはユキミは奴隷だった。後から聞いたのだが……故郷がノースタン神聖国に滅ぼされた時に、命からがら逃げた。

 しかし、途中で奴隷狩りに捕まってしまい、タイタニア王国で奴隷市場にいた所をユリウスが見つけた。

 その時のユキミはボロボロで、人に対して警戒心が凄かった。

 まだ白髪だった髪の毛もホコリだらけで、そこから覗く瞳には人に対しての怒りがにじみ出ていた。


 それが今は銀髪を揺らしながら……楽しそうに川の上に浮かぶ丸太を、飛びながら渡っている。

 いち早く向こう側に着いたユキミは、コチラに振り返りながら手を振っている。

 あのときはこんな笑顔になってくれるなんて、思ってなかったよ。

 まして、婚約者になってくれるなんてね……


 ユキミを奴隷として買ってから、一緒に冒険者をやって各地を回っていた。

 最初は反抗的だったけどユキミは冒険者の活動を通じて、次第に心を許してくれて仲良くなった。


 その中で冒険者として活動するユリウス・ユキミにある伝説の魔物の討伐依頼がされる……

『魔獣:フェンリル』大陸北側にある、氷に閉ざされた山脈に生息するとされる魔物。

 一説では神をも殺すとされる災害級の魔物だ。

 始めはユリウスが依頼を断わろうとしたが、ユキミの様子がヘンだった。

 理由を聞くと、依頼を受けて欲しいとの事。

 その頃にはユキミも大分落ち着いていたので悩んだが『魔獣:フェンリル』の討伐を受ける事にして、大陸北へと旅立った。


 大陸北はさすがに人の世界から隔絶(かくぜつ)された場所だけあり、棲息する魔物も強敵が多い。

 苦戦しながらもフェンリルがいるとされる、場所まで着いた。

 そこには大型ダンプくらいの大きさで、キレイな銀色の狼が横たわっている。

 すでに何者かに襲われたのか周囲には戦闘痕が残され……激戦だった事が良く分かる。


「人の子か? なにゆえ、この場所まで来た。我の首でも取りに来たのか? だったら持って行くがいい。もう、我には抵抗する力も残ってない。アヤツに殺られるくらいなら……」


 力ある魔物は言葉を喋る個体もあると聞いた事があるが、フェンリルはその個体だったようだ。それならば敬意を表して……


「気高きフェンリル殿。俺はユリウス、こっちはユキミと言います。アナタ程の魔獣がこの様なキズを受けたのですか? 先程から回復魔法を掛けているのですが効いている様子もありません」


 そうなのだ。回復魔法が何か黒いモヤの様な力が阻害して、上手く効果を発揮しない。


「これは呪いだ。アヤツが我に掛けて行きおった」


 呪い……か。俺に掛けられている『服従の呪い』もかなり強力な呪いだが。

 フェンリルを蝕む呪いも同様に強力なのだろう。

 そもそも、高位魔獣であるフェンリルに呪いをかけられる存在がいるなんて……


「フェンリル殿程の存在に呪いをかけられるアヤツとは?」


「アヤツは魔族だ! しかも、恐らくは『魔王級』だ。そして、おヌシにかけられている呪いも同じ『魔王級』が関わっておる。魔力波長が同じだ」


 なんだと……この呪いに魔族が関わっていたとは。


「……そうだったのですね。魔族、しかも魔王級ですか。呪いを解く手がかりになります。ありがとうございます」


「そこでもう力も無い我を静かに眠らせてはくれぬか? そっちの狼獣人は白狼族だな?」


「はい、フェンリル様」


 ユキミは横たわっているフェンリルの前にひざまずく。


「やはりな、おヌシに我のトドメを任せたい」


「いや、フェンリル様。私には……」


「いや、おヌシにお願いしたい。我の心を思って頼む。我を長年崇拝してくれておる白狼の娘ならば我心も納得出来よう……アヤツの手では死にきれん」


 フェンリルはユキミの目をしっかりと見ながらも、慈しむような優しい表情だった。


「……分かりました。フェンリル様」


「確かユキミと言ったか……我はおヌシに救われる。我の力もユキミの中で生きるだろう、最後におヌシ達に会えて良かったぞ。我の死もムダにはならずにすむな」


 そう言って目を瞑るフェンリルは真っ赤に燃えるような夕陽を背に、ユキミの手により葬られる。

 その瞬間に白かった髪の毛が銀色に変わりユキミには『フェンリルの加護』が付く。

 白狼族から世界で一人の……銀狼族になった。

 フェンリルの亡骸は『魔王級』に渡さないように埋葬はしないで、武具の素材にして欲しいとのフェンリルからの要望だった。

 そうして、ユリウスと二番隊隊長サミーによって作り出される事になるユキミ専用双剣『霧氷六花(むひょうりっか)


「ご主人様〜、こっちですよ〜。ユキミを捕まえて下さい」


 大きく手を振るユキミ。あのフェンリルの死と同じように夕陽に照らされて、悲しみを越えたその強さが銀色の髪に現れているのだろう。

 まさに今も挑んでいる『苦労と困難に立ち向かう者』だね。





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