憧れのサウス辺境伯夫人
【アルメリア視点】
久しぶりに帰って来た辺境伯領なのに心が踊らない……それはやはりアリス奥様から伝えられた、
「皆さん、ユリウスちゃんから結婚式の招待ですわ。もちろん強制ではございませんが……出席して貰える方は飛空艇に乗ってくださいな。新首都ソラリスへご案内させてもらいますわ」
という、言葉のせいだろう事は分かっています。これが私が選んだモノの結末。それをしっかりと見なければ……
新首都に向かう飛空艇から見える景色は何故かボヤケて見える。その上、パステルカラーのように滲んでは消えていく。大粒の雫が頬を滑り落ちて床を濡らす。
「ああ、私は泣いていたんだね」
分かっている、そう……分かっているの。いつかは来るその日の事を。でもね、笑顔なんてなれるわけがないじゃないですか。
恋に恋した女の末路、誰も同情してくれない。
あったのは軽蔑と罵声の数々。
戦争にまでなり多くの命が亡くなり、恨まれる。
私達のせいで……、王家や貴族のせいで……
毎日、影で言われ続けた。平民や兵の家族達に仇のような目を向けられています。
だから私は償いの為に敵を倒す。少しでも亡くなった人の死が無駄にならないように。
それしか出来ないから……
アリス奥様から呼ばれた晩餐に出席する為に、ダイニングを目指す。ミリアン様と会い、お互いに並んで向かっているとエリザベス王女様とも一緒になる。
ミリアン様は楽しそうですがエリザベス王女様は、私と同じような顔をしていた。
エリザベス王女様はタイタニア王国の繁栄を誰よりも望み、実行してきた人。王女様もユリウスを裏切ってしまった事を後悔しているのでしょう……
この屋敷は前領主邸になる。
見た事もない魔道具にあふれ、美術品なんかも洗練されている。
高い技術力と豊富な資金が良く分かる。
メイドの所作なんか私がいた時よりも、訓練されているのが良く分かった。
ダイニングに着き私の心情のように重いドアに手をかけて、開いていく。中に入ると王太子殿下と勇者ワルツがいた。
二人には珍しく静かに決められた席で待っていた……
サウス辺境伯領が思った以上に発展していた。
どちらかというと、二人はサウス辺境伯領をいつもバカにしている感じがしていた。
私にとっても生まれ故郷をバカにされて、良い気分はしていなかった。
でも、私は発展が凄すぎて今は、故郷という感じはしないんだ。
私がサウス領にいた時はこんなに人はいなかったし、魔道具なんてランプくらいしか無かったはず……
それが便利になり人々が笑顔になりモノがあふれている。
もう、私の故郷とは言えないのかも……
そうして始まった食事会は新鮮な野菜や魚介類や上質なお肉など、食材は魔力にあふれて……こんな食材、いったいいくら掛かるのだろう? 鉄板でこんがりと焼いたそう『お好み焼き』があっと言う間に出来ていた。
『お好み焼き』……ユリウスが昔に作ってくれた事があったな〜。
今ほど食材は無くて食べる事も苦労していた時にユリウスが、
「好きな具材を入れて焼くんだよ。だからお好み焼きっていうんだよ」
そういって『お好み焼き』をする時は私の好きな具材ばかりを選んでくれて焼いてくれてたな。
料理一つとってもいつもユリウスは自分を後回しして私を優先してくれてたんだ。それがいつしか当たり前になり……当然になり……絶対になり……足らなくなっていった……んだね。
この『お好み焼き』は私にとっては、ほろ苦い味になってしまいました。
食事も終わりついに、アリス奥様からのお話がなります。サウス領の女性達はみなが、アリス奥様に憧れる。
辺境伯様を上手く使いながらサウス領をきり盛りしていく姿に……
当然、私も初めて声を掛けて貰えた時は嬉しくて、興奮で夜も寝れなくなってしまったほど……
ユリウスとの婚約が決まった時も、優しく頭を撫でてくれて、
「アルメリアちゃんが娘になってくれて嬉しいわぁ〜」
と、最後は抱きしめてくれたんだ。それが今は、
「息子であるユリウスとここにいる、義娘の結婚式を行う為にお集まり頂きありがとうございますわ。殿下や勇者殿にはユリウスもお世話になったそうで……」
愛している息子をバカにされたのも同然。笑顔の下には激しい感情が見えていた。
「王女様やミリアン公爵令嬢、アルメリアちゃんもね……」
小さな頃から憧れた女性に失望された……王太子殿下と関係を持ってからも時折感じてしまう、薄暗い階段を一段づつ降りて行くような、そう……絶望の螺旋階段を。
時を戻せる魔法が欲しい……神様お願いします。
しかし、それだけでは無かった。
「これから貴方達が我が領地で見ることになる数々の事、それを自ら手放してしまった現実に打ちのめされる事でしょう……それほど我が領地は時代を進めてしまいました」
この旧領都だけでも凄すぎなのに新領都はそれ以上なの? さらにアリス奥様は話しを続ける、
「そして、女性達はけしてユリウスに甘えないで下さいな。あの子は優しいから手を貸してしまうでしょう。大人である貴方達が選んだ結果なのですから……後戻りなんてさせませんわ」
……事実上の決別宣言。ユリウスから言われた時よりも、キツイかもしれない。私は泣かないよう、堪えながら、話しが終わるのを待っていた……下を向きながら。




