変わりゆく故郷
【アルメリア視点】
小さな頃から憧れた女性に失望された……アルメリアにとって目標にしていたはずの女性にだ。それだけでは終わらず……
「そして、女性達はけしてユリウスに甘えないで下さいな。あの子は優しいから手を貸してしまうでしょう。大人である貴方達が選んだ結果なのですから……後戻りなんてさせませんわ」
……分かってはいた……いや、本当の意味では分かってはいなかったのかも。泣きたいのを我慢するのが精一杯でした。それからも……
「私の義娘はここにいる子達ですから。それを肝に銘じてくださいまし」
アリスはそう言うと隣に座っていたフローラ姫の肩を抱く。それに対してフローラ姫はニコッとアリスに微笑む。
あぁぁぁ、ユリウスとの婚約が決まった時には優しく頭を撫でてくれて、
「アルメリアちゃんが娘になってくれて嬉しいわぁ〜」
と言っていた笑顔は今や私とは別の人に向けられていた。その席は私が座っていたはず、奥様の隣で仲良くお茶をしていたのは私のはず。イヤな気持ちが浮かんでは消えて、また浮かんでは消えて……
永遠に続いていく永久機関のように私の思いは、かき乱されている。その中で……
「なかなかお話出来ずに申しわけありません。フローラ・ド・アルブルと申します。ユリウス様にした仕打ちに皆様には心に思う所もございますが……ですが、ありがとうございますわ。私はユリウス様に恋をしていましたが婚約者がおられるのを知り、半ば諦めておりましたの。それはこちら側に座る方々も……
それがこの思いを実らせてもらい、その上アルブル王国の繁栄まで。本心で感謝しております……」
現婚約者達はフローラ姫と立ち上がり全員が綺麗なカテーシーをする。そこには嫌味ではなく本心からの感謝が伝わる。
だからこそ、お礼など言って欲しかったわけではない……むしろ罵ってくれた方が心が楽だった。私はどうする事も出来ずに、黙り込んで下を向くしかなかった。
その後はよく覚えてない。
ただ、私がフラフラしていなければ……あの場所は私の物だったのに。
何か胸の奥に黒くて醜い、ドロっとした液体だったモノが冷えて固まる。
そこに私の血が通いドクンドクンっと息づいていく感覚になる……
次の日は朝から飛空艇に乗り、新領都ソラリスに向かっています。
現在、ユリウスの結婚式の為に世界各地からエライ人達が集まる予定ですが、揃うまで時間がかかるからしばらくは、ソラリスに滞在する事になります。
でも、本当に魔の森に都市を築いて大丈夫でしょうか?
勇者パーティーの強化合宿でも魔の森に入った時も、強い魔物に出会った所ですし……そんな所で人が生活していけるのでしょうか?
不安な気持ちですが空は反対に綺麗な青空。一緒に乗船している人は楽しそうに笑い合って、これからの日程の事に思いを寄せているようです。
そして、しばらくすると飛空艇の前の方から歓声が上がる。
「あっ、見えたよ。新領都ソラリスが〜。大きな街だね……パパ」
子供のよく通る声ではしゃいでいるのが分かる……
その声に釣られるようにみんなが外を気にする。
そこには……勇者パーティーとして、色々な街を見てきました。
そのどれも該当しない巨大な都市。
飛空艇が近づくとその全貌が明らかになってくる……
飛空艇から見える新領都ソラリスは背の高い建物が多くて、綺麗に区画分けされ道が通る。
街灯が一定間隔で設置されていた。
行き交う人も多くて、華やかな衣装に身を包んでいた。空から見ても楽しそうな雰囲気なのが、伝わります。
飛空艇は新領都ソラリスから外れて、金星都市ビーナスへ進路が向いてます。
世界に二機しかない飛空艇の発着場は、この金星都市ビーナスにあります。
この都市は街全体がショッピングモールみたいな感じです。
新領都ソラリスの衛星都市で生産された物が全て集まり、世界各地に出荷されるのでしょう。
逆に世界各地の物がこの金星都市ビーナスに集まって来ます。人も物も……
飛空艇が到着する……搭乗口が開くとそこには空から見ていた時とは違い、人々の熱気ともいうべきでしょう……
そこら中から活気あふれる声が聞こえている。みんな腕には魔導ライセンスが巻かれて身分を証明しているようです。
買い物もその魔導ライセンスをかざすと品物を購入出来るようですね。
こんな魔道具なんか見た事ありません。
小さな子供まで持っていますね。
「これが新しい領都? 領都なんて優しい表現ではないですね。サウス領の面影すらありませんが、人々の雰囲気はサウス領のままです。いえ、それよりも生き生きしていて、楽しそうですね」
素直にユリウスは凄いと思った……私はこんな発想が出来ない。都市を丸ごと作りその上で発展させられる。まるで、身体が弱くて寝てばかりだった幼少期によく見ていた英雄譚に登場する人物みたいですね。少し『エッチ』ですが……
この楽しそうな空気がさらに私を締め付けてくる。
暗い空間に私だけ閉じ込められて、その空間からこの明るい都市を永遠と見せられているような……不安? 恐怖? いや嫉妬なのかも……




