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お前の全てを奪ってやったぜ。と言われたがほとんど無傷な俺はどうすればいいの?悲しむマネをすれば満足してくれるのか?  作者: 月鈴
第八章 現れる悪意

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王国崩壊の序曲

【エラソン王太子視点】


「くっ、私は王太子だぞ。何故、辺境伯如きに気を使わねばならん」


 今、私の周りにはタイタニア王国に属する貴族が取り囲んでいる。この私にユリウスに頭を下げてレギオンのと橋渡しをしてくれと……断わっても断わっても。

 本当にしつこい。

 現在、タイタニア王国ではヨツバ総合商会から物が入って来なくて、さらに物を買い取って貰えない。要するに地域の特産品などが、余りまくってる。そうするも貴族達も税金が取れず、必死なのだろう。だがな……プライドが邪魔をする。


「王太子殿下は我々がいつまでも、支援出来ると思わないで頂きたいものですな……この分ですと、エリザベス王女殿下に勇者ワルツ殿に嫁いで頂き、我等を導いて頂くという方法もありますぞ」


 この貴族達は私を後押ししてくれている貴族達。

 この貴族達に逃げられると後の治世どころか王位まで危うくなる。

 勇者ワルツは王位には興味は無さそうだが、腹違いの妹エリザベスはどうだ? アイツはタイタニア王国の存続を何よりも望んでいる。


 愛国心が強いからこそ貴族達にそそのかされて、王位を狙ってくる可能性がある。


「ちょ、ちょっと待て。お前達……」


 くっ、何故だ。大国タイタニアの王太子である私が、王位の心配をしなければならない。



「殿下、少しよろしいですか? 私の実家が……」

「あっ、私も……」「私の妹が……」


 貴族達を説得しようと後を追う為に急いでると……派手なドレスを着込んだケバケバしい女達に囲まれる。

 以前、手を出していた下級貴族の娘達だ。

 顔はイマイチだが身体だけは良かった。

 少し遊んでヤッたら私の女ヅラしてくる。


 全く、うっとおしくてたまらん。事ある毎に品物や金を強請ってくる。

 私が使える金も相当減額されている中でコイツらに使える金はない。

 どうする? コイツらとは縁を切るのか? 下級とはいえ貴族だぞ。しかもコイツらの親にも私の後ろ盾になって貰っている。


 屈辱だがコイツらまで失うワケには……また私の金が無くなっていく。


「殿下〜、王太子殿下はどちらに〜」


 あ〜、遠くから私を呼ぶ声が聞こえる。最近は私が呼ばれる時はトラブルが元気に手を振って近づいて来る。

 ここは逃げの一択に限るな……


 捕まった。そりゃ、見事に……

 既に城内で包囲網を敷かれていて、いくら修行した私でも逃げ切れなかった。

 くそ、とりあえず話を聞いてやるかな。


「ああ、分かった。話を聞いてやる。早く申せ」


 私を捕まえたのは軍務卿と騎士達だ。彼らという事は戦争か……いや、すぐには来ないはず。


「民衆からの不満が溜まり、内乱の予兆があります。ノースタン神聖国に近い地域で、創造の神[ゼビウス]を唯一神とする宗教【暁と黄昏の双子月】が民を扇動しているらしいのです」


 くっ、ヤツラか……ノースタン神聖国は、宗教国家だけあって面倒くさい。しかも、宗教に国境は無いためタイタニア王国の北部には【暁と黄昏の双子月】の信者がたくさんいる。そこが、また面倒くさい所でもある。自国の国民でありながら信仰の為と、神聖国の兵にもなり得るから……


 ノースタン神聖国には神聖騎士団という軍隊があるが、それとは別に特に武勇の優れた者が、所属する部隊がある。

 神ゼビウス様の代理であり、実行者『聖血』と言われる集団だ。これらは世界最強といわれる不知火隊長と同等な力があるのではと、ウワサされるほどの戦力。

 大事な戦には必ず彼らの姿が、確認されている。


「くっ、北部か……『聖血』は誰がいるのか確認出来ているのか?」


「いえ、確認は出来てません。信者のみで港町ノーフェリアを目指してます」


 以前のタイタニア王国ならサウス辺境伯に命じて、ノースタン神聖国を抑えるのに……現在はそれもできん。

 ノースタン神聖国は北国だけあり冬は寒く、国内の主要な港町は凍りつく。

 港町ノーフェリアはタイタニア王国の北部に位置して、ノースタン神聖国の近くでもある。この港町はタイタニア王国でも大きな港町に入る重要拠点だ。

 そして以前からノースタン神聖国が一年を通して、凍らない港町ノーフェリアを欲しがっているのは明確だったが……今回は勇者メンバーで行くしかないのか。


「分かった。兵の準備と勇者パーティーを出す。召還してくれ」


「はっ、ただしユリウス殿がいない今は王国も大変で、以前のような遠征費は出せませぬ。馬車も、宿も、食事も……」


 ここにきてユリウスが資金繰りしてくれてた頃の遠征が、いかに快適だったかが分かる。

 しかし、文句を言ってても始まらん。何とかしなければ……さらに別の者からは、


「なんだと……ミリアンがいない? ガルフ公爵はどうした?」


 ミリアンを迎えに行った者は首を横に振る。

 領地に帰ったのか? この忙しい時に……


「すぐに使いを出せ。今は非常事態だ」


 サウス領から取り寄せられる魔石も限りがある為、通信魔道具も気楽に使えない。ここでもユリウスのサウス領か。追放などしなければ……いや、今言った所でもう遅いな。


 だけど、私の想い人であったフローラ姫を掻っ攫い、魔の森を開拓して巨大な都市を築いて……いかんいかん。

 張り合っている場合ではないな。とにかく今集まれるメンバーだけで、港町ノーフェリアを守らねば。


 兵の集合状況を確認すると……準備しているのは百名にも満たなかった。

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