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お前の全てを奪ってやったぜ。と言われたがほとんど無傷な俺はどうすればいいの?悲しむマネをすれば満足してくれるのか?  作者: 月鈴
第八章 現れる悪意

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黒く染められていく初恋

【アルメリア視点】


 ああ、私はかき乱されてしまう。何度、こんな気持ちを味わってしまったのでしょうか……

 まるで夢を見ているかのようで、フワフワした感じがしています。


 新領都ソラリスは旧領都なんか比べ物にならない程に、巨大で最先端の技術が詰まっていたハイテク都市でした。

 それだけでなく人々も皆が笑顔で、イキイキとしてます。

 そんなサウス領の新領都は魔の森にあるので、他国からは簡単には攻められないでしょう。

 これは繁栄が約束されたようなモノですね。


「羨ましい。妬ましい」


 やはり思ってしまう。本当なら私が、私達が全てを手に入れていたはず。

 誰のせい? 私のせい? 王太子殿下のせい? ユリウスのせい? 時代のせい?


 分からない。私の心が弱かったから、こうなったのでしょうか? 王太子殿下に全てを許してしまったのは、私の決断ですね。だって身体は私の物ですもの。私の自由にして何故悪いの?

 それを何で周りの関係ない人にまで……言われるの。私の事など関係ないじゃない。放おっておいてよ、それに……


「私は頑張ってますよ……タイタニア王国の敵も倒してますし、危なかった事もいっぱい。傷ついた兵や民にも、回復魔法で癒してますよ。でも、何でみんなは、そんなに憎しみの眼差しをしているの?」


 そんな殺伐とした状況で、結ばれた停戦協定。ユリウスからの結婚式の招待。

 結婚式が始まるまでは幸せでした。海で遊んで、遊園地で遊んで、カジノで遊んで……ユリウスとは恋人気分を味わえました。このまま、私は幸せの中にいられるような気分でした。ついこの間までは戦場で、毎日が命のやり取り。それがウソのように毎日が楽しくて、その中心にはユリウスの姿がありました。私もダメと思いながらも、目で追ってしまいます。


 そんな元婚約者とは別れる事になったのに……私が選んだはずの王太子殿下は他の女達と遊んでいるのでしょうね。

 でも今は少しも気にはなりませんね。ただ、私の身体だけが目当てだったのでしょうね。手に入れたらそれで満足なのでしょう。それよりも……


 幸せそうに笑うユリウス。なんで私が辛い思いをしているのに笑ってるの? もう少し気を使ってよ。優しくしてよ。抱き締めてよ。私を見てよ。私だけを……


 喉を通り過ぎて口から出そうになる言葉達は、まるで踊っているかのように私を黒く染めていく。それがドンドンと私の中で、積もって、固まって、冷えて、濁っていく。それが意識があるように私の中からコチラを見ている。そして語りかけてくる『このままでいいの?』っと……


 私達は結婚式当日はソール城のバルコニーからパレードを眺めてました。ゴーレムバスに乗って観衆に手を振るユリウス。

 まるで英雄が凱旋をしたかのよう。まるで一枚の絵画のように神秘的。私はその英雄譚を外から眺めているだけの部外者。


 こんなにユリウスと私達の境遇に差が出るなんて……思わないじゃない。

 この結婚式が終わった後に私達に待っているのは、また戦いの日々でしょうね。

 私は嫌味を言われながら……回復魔法を使い続けるだけの日々になるのでしょうか。

 回復魔法を使っているのに、吐かれる暴言の数々。

 身体を簡単に許す軽い女だと、兵達にウワサされ実際に言われた事も数しれず……ヤラせろばかり。


 私が今こんな思いをしているのに……許せないのは、あの女達だろうか……以前からユリウスの結婚を、納得したフリをしてきたけど。


 フローラ姫、ユリウスの正妻になる女。

 ユリウスの一番近くでお互いを気遣っているのが良く分かる。だからこそ……そこは私の場所だと思ってしまう。


「お前が奪ったのか? 私の居場所を……返せ! 返してよ」


 そんな事を思っているが私は言えないでいる。



 ユキミ、いつもユリウスにくっついている女。

 護衛を理由にいつもユリウスと一緒にいる。

 目障りな女。


「お前がいるからユリウスは、私と一緒にいる時間が無くなったのよ……」


 そんな事を思っているが私は言えないでいる。



 シャルロット、ユリウスと一緒に商売をしている女。ユリウスの資産も管理している。それは私がやるはずの役目。


「お前がいるからユリウスは、私を頼ってくれないのよ……」


 そんな事を思っているが私は言えないでいる。



 そして、ネメシア。私の妹。

 ゴーレムバスから手を振るネメシア。今日は少しオトナっぽい雰囲気で、とてもキレイ。服もカワイイし。

 幸せそうに笑っているね。昔からずっとユリウスが好きでその思いが叶ったね……そんな姿を私はこれからもずっと見ないといけないの? 一番近くで見続けるの? もう一生、手が届かないのに?


「だから、私がこんな外野で見ているだけの脇役になってしまったの……憎い」


 そんな事を思っているが私は言えないでいる。



 次から次へ自分の中の黒い塊が周辺の幸せを吸い込んで大きく成長しているかのようで、私の中だけでは処理出来なくなって来ている。

 私はこの幸せ空間を全て……そう、全てを壊してしまいたいのかも。


 初日が終わり二日目は、大聖堂での結婚式。

 この誓いを持ってユリウスと女達は夫婦になってしまうの。もう、壊していいよね。


 祭壇前で待つユリウスはカッコよかった。だけどね……なんで待ってた花嫁は私じゃないのよ。

 憎たらしい女達がユリウスの下に集まる。ユリウスが赦してくれてたら、そこは私の場所だったのに……

 そして、神前での宣誓。


「ああ、私の幸せが終わってしまう……」


 その後の指輪交換。


「私の指輪……」


 その後の口づけ。


「アハハ」


 私の心も身体も救われる事は、ないようですね。

 目の前にある巨大な女神像は優しげな眼差しで、夫婦になったユリウス達を見つめている。

 私の事など眼中にないと、言っているようですね。


 あーあ、こんな所は滅びればいいのに……

 私に優しくない世界なんか……

 私を構ってくれないユリウスなんか……

 私からユリウスを奪っていった女達なんか……


「アハハ、アハハ……」


 私の中の黒い何かがさらに、私の初恋を染めていく……黒く染められ濁って……




『大罪スキル:エンヴィー(嫉妬)の覚醒を確認しました。場所は……特定出来ませんでした』


 天王星都市ウラヌスでフローラ姫直属のヨツバ報道の観測魔道具が反応を捉えたが……追いきれなかった。







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