嫉妬と妬み
【エラソン王太子視点】
イスマリ王国とハマト王国の軍事同盟との戦争中。
東部最大の城砦レーナーバラクを守る戦いが、膠着状態になっていた。
周りの兵達から聞こえてくる王家に対しての暴言や勇者パーティーに対しての暴言など、私には耐え難い屈辱だ。
城砦レーナーバラクを放棄するワケにはいかないので、この戦争中だけは生かしておいてやる。王族を侮辱するなんて万死に値する。
その後、サウス辺境伯夫人が戦場に現れ停戦協定が結ばれた。
それを合図に暴言を吐いていた兵達の処刑を言い渡し、飛空艇に乗ってユリウスの結婚式へ向かう。
それを見ていた勇者パーティーメンバーはウンザリした顔をしていたが、私はタイタニア王国王太子。当たり前の処置をしたに過ぎない。
のちに報告があったがこの兵達はサウス辺境伯領への難民になって、タイタニア王国とは関係なくなり処刑出来なくなったらしい。
あのダンテとかいう執事が裏でコソコソしていたから、辺境伯夫人が裏で手を回したのだろう。勝手な事を……
飛空艇……世界に二隻しかない空飛ぶ船。我がタイタニア王国が所有していない方がオカシイ。勇者パーティーの足にするのが良いと提案するが断られる。全く不敬なヤツらだ。
乗船しているメイド達を怒鳴り、どちらが上かを、分からせてやった。全く、辺境伯家は使用人の教育も出来てないな。所詮は田舎者だな。
初日はサウス領の旧領都に着き領主邸に泊まる事になった。
「……こんな魔道具見た事が……あの絵はカピソの……あの壺は旧魔法帝国時代の……くっ、国宝級ではないか」
タイタニア王国王城でもありえない品の数々……私の王国が、たかが辺境伯ごときに負けている?
私はどこかでタイタニア王国以上の国など存在しないと思っていた。
それなのに今、目にしている一領主の屋敷のはずが、これはなんだ? 宝の山ではないか……
私の見間違いでなければ使用人などが着ている衣服も、デススパイダーの糸を編んだモノか? 高級品だぞ。それを使用人ごときに……
それに平民に至るまで王国より上等な質の服を着ている。この屋敷に来てから私の自尊心が、傷ついてばかりだ。
「私は大陸一のタイタニア王国の王太子だぞ。この私は敗北はない。今は遅れを取ろうとも必ず挽回してやすさ、たかが辺境伯家ごときに……」
その後の食事会では魔力豊富な食材が、たくさん用意されている。魔の森が近いから魔力が多いのだろう。
こんなモノ買えばいくらになるのか……くそ、自慢か? その後辺境伯夫人から不吉な事を聞いた……
「これから貴方達が我が領地で見ることになる数々の事、それを自ら手放してしまった現実に打ちのめされる事でしょう……それほど我が領地は時代を進めてしまいました」
………………?
これ以上なのか? 今の領主邸だけでも国宝のオンパレードだぞ。
あんな事を言って私を謀ろうとは……辺境伯も落ちたものだな。
翌日、再び飛空艇で魔の森上空を進んでいる。本当にこんな場所に都市があるのか……まさか! 人が来ない所で、大国であるタイタニア王国王太子である私の命を狙っているのか? まさかな……
辺境伯夫人から勇者パーティーの女性に、厳しい事が言われている。確かにミリアンもアルメリアも身体を頂いたが、それはアイツらが選んだ事。私は悪くない。
飛空艇が飛び立ちしばらくすると子供の声が聞こえた。
「あっ、見えたよ。新領都ソラリスが〜。大きな街だね……パパ」
どれどれ、辺境伯夫人のご自慢の都市とやらを見せてもらおうか。
タイタニア王国王都ルインに敵う都市などある……はず……は?
飛空艇から都市があると思われる方向を見る。まずはその巨大さが目に入る。
それから建物の高さ、キレイな街並み、豊かな人々の暮らしなどタイタニア王国王都ルインよりも発展している。
「そんな! 認めん。認められんぞ。私が治める王国よりも発展している都市など……」
近くで見ていた勇者パーティーメンバーは私の方に視線のみを寄越して、すぐに新領都ソラリスを見ている。
屈辱だ。何度、私に屈辱を与えれば気が済むんだ……ユリウス。
金星都市ビーナスという、新領都ソラリスに連なる衛星都市に着陸した。
我が国の城壁外にある商業施設を手がける、ヨツバ総合商会が取り仕切っているらしい。
さすが世界一の商会を自負するだけはあり、かなりの施設になっているようだな……
見た事もないような種類や品質、それが手頃な値段で売っている。アッチも、コッチも、ソッチでも……
ワケが分からん。このタイタニア王国王太子である、私が見た事もないなんて……
これが敗北なのだろうか? 私はタイタニア王国という大国の王太子を産まれたときから、宿命付けられていた。
何でも一番でなければいけない。そう教えられ小さな頃から努力してきた。
それさえも周りに悟らせてはいけない。それが私の帝王学だ。
それが始めてユリウスという辺境伯の子息に敗れてしまったあの日から、私は嫉妬と妬みの檻に囚われてしまったのだろう……
コイツだけには負けたない……と。
ミリアンやアルメリアを奪い取る。そしてサウス領を征服してタイタニア王国に組み込んだ新たな王国の国王として、私が治めるはずだった。
まさか、何度も私が同じ相手に土をつけられるとはな……




