指輪と誓いのキス
結婚式は全員の誓いを終えてこれから指輪の交換になるが、この世界では一般的ではない。
だけど、俺は元日本人だから指輪交換を提案したのだ。やっぱり愛してる女に贈った指輪をして貰いたいじゃん。
結婚指輪はリングの部分で意味があるんだって…リングは丸い事から途切れる事のない愛。
そして、使われる宝石はダイヤモンドが多い。ダイヤモンドは一番硬い宝石という事で、固い絆を意味するらしいよ。
俺は全てを手作りしていた。そう、全てを……
まずは鉛筆の芯となる炭素を錬金術で集め、高温と高圧を魔法で再現して、完成させたのが俺の手作りダイヤモンド。
この技術は地球都市アースで研究して完成させていた。
花嫁に渡すダイヤモンドは髪の色に合わせてフローラ姫は緑、ネメシアはピンク、ユキミは無色、シャルロットは黄色のダイヤモンド。これも地球都市アースで開発された技術だよ。
さらにリング部分にはハイミスリル仕様。
指輪内部にはシークレットストーンとして、俺の魔力を込めた魔石が埋め込まれている。
俺の方はシンプルな指輪だが、それぞれの魔力を込めてもらった魔石が埋め込まれている。
取り出した指輪をフローラ姫の細い左手薬指にハメていく。
ネメシア、ユキミ、シャルロットと順調に……指輪を見て全員がウットリとした表情になっている。
そして、会衆達に四人揃って左手を見せて満面の笑みを浮かべているね。良かった頑張って。
それを見ていた女性達は、
「ステキ〜」「いいわね〜」「私も意中の男性から欲しいわ〜」「幸せそうね〜」
好評のようだね女性には……男性からは、
「何してくれてる」「ああ……」「いくらかかるんだ」「止めてくれ〜」「……終わった」
うん、頑張って欲しい。ホレた女の為に男は痩せ我慢するものさ〜、ハハハっ。スマン……マジで。
それからは俺の指にも四人全員で指輪をハメてくれて、指輪交換は終わった。
指輪交換を終えていよいよあの行為が迫ってくる。
そう、接吻だね。愛する女の子とする愛情表現の一つであり、結婚式においては誓いの行為になる神聖なもの。もう一度言う……神聖なもの。グヘヘ……ウソウソ。まぁ、顔には出さないけどね。
最初にフローラ姫の前に行きヴェールを上げて顔を出す……吸い込まれそうな翠色の瞳には涙が溜まり光が揺れている。桜色のくちびるがあらわになり、ドキドキする。
「フローラ姫、いやフローラ。キミを幸せにする。だから俺についてきてくれ」
「はい、旦那様」
俺はフローラのくちびるに近づいてキスをした。その柔らかな感触と少し湿り気を帯びた感じに、心地よい熱を感じながらもくちびるを離した。
余韻もそのままに次のネメシアの前に行き、
「兄様」ネメシアは上を見上げるようにつぶやく。
俺はヴェールを上げる。ネメシアも感極まった感じで瞳が揺れている。
「今日で兄様は卒業なのかな? ネメシアは俺の奥さんになるのだから……」
「イヤですの? いつも兄様と言ってるからすぐには無理ですの。だからこのままでいさせて下さいませ……」
「フフフッ、そうだね。ネメシアらしいよ」
頬に擦っているとネメシアが目を閉じ、その可愛らしいくちびるにキスをした。『あっ』と少し声を漏らしたがそれを含めて口をふさいだ。途中から息づかいが変わっていった。
次はユキミの前に行きヴェールを上げる。
銀髪がハラリと揺れる。あの白髪からフェンリルの加護で銀色になった、世界で唯一の銀狼族。
今まで冒険者としての相棒でもあり、恐らくは俺の事を一番近くで見てきた女性だ。
その半生は悲惨な状況だったかもしれないがこれからは、幸せなモノにしてあげたいと思う。
「ユキミにはいつも助けられている。そして、これからも助けて貰う事だろうな。だから俺からは全力の愛を持ってユキミに応えたい」
そう言うとユキミの瞳からは一粒の涙がこぼれ落ちる。
「お父さん、お母さん、白狼族のみんな、フェンリル様。ユキミはたくさんの人に支えられて、生きてこれました。それはたくさんの不幸の上に立っているようなもの。私は幸せになっても良いのかと悩みました。けど、やっぱりご主人様が大好きなんです。ユキミを愛して欲しいのです」
俺はユキミから流れでる涙を指で拭ってやると……
「ああ、もちろん愛してるさ。ユキミを支えてくれた人達はユキミの幸せを願っているに決まっているさ。だから天国にいる人達に幸せになりましたと報告してあげよう」
ユキミの頬を両手で掴み優しくキスをした。それは永遠とも、短いともいえない時間であったがユキミが少し目を開けると……ユリウスとの身長差から見上げる形だったのだが、目の前に女神像が見えて、その周りにお父さん、お母さん、白狼族のみんな、そしてフェンリル様が笑って見えた。
『ああ、祝福してくれたんだね。みんな。ユキミは幸せです』
最後にシャルロットのヴェールを上げる。シャルロットは緊張からか目が、右に行ったり左に行ったり大忙し。
シャルロット自身は貴族の出だが、家を飛び出してきた。だから結婚などしないし、出来ないと思っていた。
ユリウスと会ってからは意識するようになるが、それは憧れからだろうと思っていた。
「シャルロット、左の後ろの方を見て……」
シャルロットが左後ろを見て固まる。そこには家を飛び出した時の記憶よりも、年を取った両親が涙を流しながら見ている姿だった。ユリウスはこの時の為に、両親を探し出して連れて来ていた。
「やっぱり、両親に祝われたくない女の子はいないと思ってね。お願いして来てもらったよ。迷惑じゃなきゃいいけど……」
ユリウスはイタズラが成功したような笑顔で、シャルロットに笑いかけた。もう、嬉しさからか抑える事が出来ずに……
「会長、いえユリウスさん。大好き」
シャルロットは自分から、ユリウスに抱き着きキスをした。そこには両親に結婚を見て貰えた嬉しさと、自分を気遣ってくれた旦那様への親愛の証なのかもしれない……




