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お前の全てを奪ってやったぜ。と言われたがほとんど無傷な俺はどうすればいいの?悲しむマネをすれば満足してくれるのか?  作者: 月鈴
第七章 幸せの形・不幸の形

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披露宴

 大聖堂『聖リナ教会』での結婚式を終えて、夕方に差し掛かる時刻になっていた。披露宴が開かれるソール城に移動となる。参加予定者が列をなして移動を開始するが、各国に専属メイドが配置されて対した混乱もなく移動を完了していた。


 ソール城の外見は魔水晶で彩られている。周囲から魔力を集めてそれを利用した都市計画。元々、魔の森は魔力濃度が高いので無限のエネルギーを手に入れたような物だ。

 その外見の美しさからソール城は別名『水晶宮』と呼ばれるようになる……


 今回の披露宴はこのソール城の一階にある、巨大なダンスホールで行われる。ユリウスの追放時にタイタニア王都で行ったパーティーよりも、会場の規模も大きくなっている。


 出されている料理も素材の品質から選ばれ、新領都ソラリスの料理人の中でもトップに君臨する生産レギオン所属……『異世界料理道』という組織を運営している料理人ミチバシェフ……凄まじいまでの包丁さばきと天才的な味付けと飽くなき異世界料理への探究心。そして帽子が高い。スゴイ高さがある。

 ユリウスが考案(前世の料理)した物を完璧に再現している。

 元々はミチバは辺境伯家のお抱え料理人でユリウスが小さな頃から、異世界料理を伝えてその頃からハマっている。


 今回は結婚式用にフランス料理を主体とした和洋折衷。様々な国からのお客さんに振る舞う物だからね。

 素材も魔の森産、魔力がたっぷりと染み込んだ食材を用意した。今の世界ではお金を出しても手にはいらない。各国に良い宣伝にもなるしね。


 色とりどりの料理が並ぶ中で中央には、巨大なウエディングケーキが鎮座している。

 まるで大御所俳優のように……

 この世界ではケーキは、ヨツバ総合商会が扱うお菓子部門の人気商品だから知名度も高いが……巨大なウエディングケーキは誰も見た事がなかった。


「さすがサウス辺境伯……」「これはケーキですか」「ママ、大きいよ」「美味しいのかな?」


 さすがに注目度がスゴイね。貴族でも手に入れるのが大変なケーキを、こんな巨大なウエディングケーキになってるのだから注目度も高い……それだけでなく添えられているフルーツも見事な品質で、コレだけでも一財産になる程、高価な食材の数々。


 他国からの来賓も満足そうに頷く。そして、サウス領・アルブル王国の重要性を再認識して、今後の外交に活かそうと考えていた。


 魔の森に新領都を構える鉄壁さ、貴重な魔の森産の食材や資材を量産出来る資源力と資金力、それらを加工する技術を持つ人材、コレだけの都市を持っている成長力、そして三ヶ国同盟をほとんど被害を出さずに滅ぼした兵力……


 改めて他国は敵対するよりは友好的に接した方が自国の為になると判断していたが……反対にそれらを欲する国も少なからずある。

 ノースタン神聖国とウエスタニア帝国である。


 ノースタン神聖国は宗教的な考えで人族以外を認めない。多くの亜人種が暮らすサウス領に対して以前から、敵対的な態度であった。

 サウス領の発展ぶりに活躍する亜人種を、自国の奴隷としたい思惑がここにきて出てきた。


 ウエスタニア帝国は元々、大陸統一の野望を持っている。コチラは使える人材ならば亜人種だろうと、好待遇で受け入れている。そしてなにより各種ギルドの本部を構えるのが、ウエスタニア帝国の帝都。

 ギルド廃絶に動くサウス領・新アルブル王国との共存は始めから考えてはいなかった。


 ノースタン神聖国・ウエスタニア帝国はこの結婚式前から極秘裏に会談をして、タイタニア王国の侵攻を遅らせて共にサウス領・新アルブル王国に対応する事にしていた。勇者パーティーがいるタイタニア王国よりも確実に落とせる方にターゲットを変えていた。


 ノースタン神聖国はタイタニア王国を攻めているイスマリ王国とハマト王国の軍事同盟。

 ウエスタニア帝国はサウス領・新アルブル王国に攻め込んだばかりのデロビ大国を攻めて、領土拡大を確実にする方針で現在も計画が進行中だ。


 両国ともに出席者は外務大臣と外交官のみ。情報を持ち帰る事が今回の目的であったが……

 新領都ソラリスとその周りの衛星都市を直に見て、危機感が胸を焦がすかのようにまとわりつく。

 今、動かないと手遅れになる。


 ウエディングケーキを前に結婚したばかりの妻達を侍らせて鼻の下を伸ばしている、これからのサウス領主ユリウスに対抗するには……アレが有効的だろう。

 今回、結婚式に参加したウエスタニア帝国外交官の一人が動くようだ。

 その結果が……


「それでは、ユリウス様と奥様達の初の共同作業になります。ケーキ入刀……」


「フフフッ、今は幸せを噛み締めているがいいさ。この大陸の覇者は帝国なのだよ。それが分かる頃には……アハハ」


 同じようにノースタン神聖国でも創造の神[ゼビウス]を唯一神とする宗教【暁と黄昏の双子月】が布教出来ない国など……滅ぼさなければ。


「やはり下等な人種だわ。神ゼビウス様に導かれて人は始めて永遠になります。私達、神ゼビウス様の代理であり実行者『聖血』が世界を浄化して差し上げますわ……」


 全員がウエディングケーキに注目される中で、巨悪もまたユリウス達に注目している。

 切り分けられていくウエディングケーキ。

 大陸の地図も同じように切り分けられていく、未来になるのだろうか?


 各国の思惑が交差する披露宴は賑やかに、そして静かに幕を下ろしていく。


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