第七話:がいぶまねーじゃーをレンタルなのにぇ!
ホロライブ事務所の収録後。
すいせいは、みこちの隣に座り、少し緊張した面持ちで話を切り出した。
「みこち、ちょっとお願いがあるんだけど…」
「なんでも聞くにぇ!たい焼きの新作なら、みこ詳しいにぇ!」
「いや、たい焼きじゃなくて…外部マネージャーのこと」
「がいぶまねーじゃー!?何かあったのにぇ!?」
「次の新曲が、恋愛漫画のアニメ化タイアップなの。ラブソングを書くために、ちょっと“恋愛体験”が必要で…」
「にぇぇぇ!?すいちゃん、恋愛するのにぇ!?」
「いや、あくまで“体験”として。だから、外部マネージャーを一日だけ貸してほしいの」
みこちはたい焼きをかじりながら、にっこり笑った。
「いいにぇ!すいちゃんの創作活動、みこ応援するにぇ!」
「ありがとう、みこち」
「じゃあ、みこも準備しておくにぇ」
「え?準備って…?」
「ううん、なんでもないにぇ~」
すいせいは首をかしげながらも、深くは追及しなかった。
デート当日。
すいせいは、恋愛漫画の舞台にもなったという噴水広場に、少し早めに到着していた。
「今日は“偶然出会って始まる恋”のシーンを再現する予定…とはいえ、これはあくまで仕事。創作のための取材…」
そう自分に言い聞かせながらも、なぜか心臓が少しだけ早く鼓動を打っていた。
「……なんで緊張してるんだろ、私」
そのとき、遠くから見覚えのある二人が歩いてきた。
「すいちゃ~ん!待たせたにぇ!」
「……みこち!?なんでいるの!?」
「みこ、はじめから行くつもりだったにぇ!」
「えっ!?聞いてないよ!?今日は私と外部マネージャーの“体験デート”のはずじゃ…」
「みこ、レンタル契約に“同行オプション”をつけたにぇ!」
「そんなオプション、存在しない…」
「みこが勝手に作ったにぇ!」
すいせいは頭を抱えた。
「えっと…じゃあ、今日は三人で…?」
「ううん、みこは“観察係”なのにぇ!すいちゃんとがいぶまねーじゃーが“恋愛漫画風”にデートするのを、みこが見守るにぇ!」
「それ、逆に緊張するんだけど…」
外部マネージャーは苦笑しながら、すいせいに声をかけた。
「じゃあ、行きましょうか。まずは“偶然ぶつかる”シーンから…」
「……うん」
すいせいは、なぜか頬が少しだけ赤くなっていた。
ショッピングモール、観覧車、カフェ――
すいせいは、外部マネージャーとの距離感や会話のテンポをメモしながら、創作のヒントを探していた。
「この“沈黙の間”とか、リアルでいいな…」
「みこがいるから、沈黙にならないにぇ!」
「みこち、ちょっとだけ静かにしてもらえると…」
「みこ、空気になるにぇ!」
「それが一番難しいんだけど…」
夕方。
三人は公園のベンチに座っていた。
すいせいは、スマホにメモを打ち込みながら、ぽつりとつぶやいた。
「うん…なんだかんだで、すごく参考になったかも」
「すいちゃん、ラブソング完成しそうなのにぇ?」
「うん。“恋って、予想外のことばかりだけど、誰かが隣にいてくれるだけで救われる”ってテーマにしようかな」
「それ、みこちのことじゃん…」と外部マネージャー。
「みこ、ずっと隣にいたにぇ!」
「たい焼きもずっと持ってたにぇ!」
「それは…恋愛漫画には出てこないかも…」
すいせいは笑いながら、たい焼きを一口かじった。
「でも…悪くなかった。初めての“デート”だったし」
「にぇ!?すいちゃん、今“初めてのデート”って言ったにぇ!?」
「……言ってない。たぶん」
外部マネージャーは思った。
「仕事のはずなのに、なんか青春してる…」
でも、すいせいが笑ってくれるなら、それでいい。
そう思えるようになっていた。




