第三十一話:三期生とライブとサプライズ
二日間にわたる三期生ライブ「きゅるるん大作戦!!」は、ついに最終日を迎えていた。
会場は満員、開演前から熱気に包まれ、ペンライトの海が揺れ、観客の期待が空気を震わせていた。
ステージの裏ではスタッフが走り回り、三期生の四人はステージに向けて気持ちを整えていた。
しかし、ひとつだけ“間に合わなかったもの”があった。
先日収録した、卒業生との会議映像。
企業名や個人名を規制音で隠してはいたが、外部が編集したものでは前後の文脈から特定されかねない箇所が多く、編集部は慎重な調整を重ねた結果、ライブ当日にはどうしても間に合わなかった。
だが――間に合ったものもある。
三期生には知らせてない、最大級のサプライズだった。
二日目、最後の曲の前。
ステージ中央に立つぺこらが、マイクを握りしめて言った。
「さて、最後の曲になったペコ……」
会場がざわめく。
終わりを惜しむ空気が広がる中、マリンが続けた。
「その前に、三期生四人からの重大発表があります」
「最近、ホロライブでも色々ありました……」
ノエルが静かに言葉を紡ぐ。
「その中で、私たち四人は考え、考えた末、一つの――」
フレアが語り掛けたその瞬間...
「ちょっとまったーーーーーーーーーーーーーー!!」
突如、ステージ中央の床がせり上がり、スポットライトが一点を照らした。
そこに立っていたのは――
三期生と同じ衣装をまとい、緑色の髪を揺らす少女。
「三期生よ!!私が来た!!私が来たからには、その先は言わせないよ!!」
潤羽るしあ。
三期生の“元メンバー”が、堂々とステージに立っていた。
会場は静寂に包まれた。
「なんだーお前ら……私のこと忘れたのか?薄情な奴らだな……」
るしあは腕を広げ、会場を見渡す。
次の瞬間、悲鳴にも似た歓声が爆発した。
「るしあーーーーーーーーーーーー!!」
「なにペコ!?なにが起きてるペコ!?」
ぺこらは混乱し、マリンは泣きながら飛びつき、団長は腰を抜かしてその場にへたり込む。
フレアは慌てて団長を支えながら、目を丸くした。
「うそだろ!?本物!?本物なのか!?」
「三期生が…五人になった…!?」
会場も戸惑い、るしあ押しは歓喜の涙した。
るしあは笑って腕を広げ...
「ただいま、三期生!!ふぁんでっと!!みんな!!」
裏の巨大スクリーンが切り替わる。
「皆さんこんばんは。株式会社カバー代表取締役社長の谷郷です」
会場が再びざわついた。
谷郷は深く頭を下げ、静かに語り始めた。
「昨今、ホロライブでは色々とご心配をおかけしております。しかし今回、この場をお借りしてお詫びと、そして“宣言”をさせていただきます。カバーは変わります。変わらなくてはいけない」
その声は、会場の隅々まで届いた。
「今までメンバーに一方的にかかっていた負担を分かち合い、より柔軟で、より開かれた環境を作ります。今回のるしあさんの登場は、その第一歩です」
さらにスクリーンには、第三者委員会の名簿が映し出される。
そこには、複数の卒業生の名前が並んでいた。
「谷郷、それ発表していいの???世間的に大丈夫なの???」
フレアが戸惑いながら問いかける。
「はい。大丈夫です。何も法律にも、契約にも抵触しません」
「そういうわけで、私がトップバッターってわけ!」
るしあが胸を張る。
「確かに……るしあは最大級の呪術だよね……」
「一番ヤバいのを最初に出しておけば、あとは何が来ても大丈夫ってこと?」
ノエルとフレアが小声で言う。
「フレちゃん!?ノエちゃん!?酷いよ!?それ酷いよね!?!?」
会場は笑いに包まれた。
「マリンもそろそろ泣き止もうよ……今後はコラボも出来るんだからさ……」
るしあは優しく声をかける。
「だってーーー、だってーーー、うれしいんだよ!!私は嬉しいんだよ!!」
マリンは涙でぐしゃぐしゃになりながらも、るしあから離れない。
谷郷は最後に、三期生へ向けて言った。
「三期生の皆様。今回の宣言プログラム、そして後日ホロライブチャンネルで公開される動画をご覧になった上で、先ほどの“重大発表”をもう一度考えていただけませんか」
四人は顔を見合わせた。
「どうペコ?私は見てみたいペコよ?」
ぺこらが笑う。
他の三期生は頷く
るしあはマイクを握り、叫んだ。
「さあ三期生!!最後の曲、私も一緒に歌うよ!!」
会場は割れんばかりの歓声に包まれた。
その瞬間、三期生は五人になった。
そして――
最後の…いや、始まりの曲が始まる。




