第二十二話:じおげっさーなのにぇ!!
ホロライブ事務所の応接室。
外部マネージャーは、湯気の立つカップを手にしながら、目の前のAzukiの言葉を反芻していた。
「外部マネージャーさん、デートしましょう?」
その一言で、みこちはたい焼きを落とし、椅子からずり落ちるほどの衝撃を受けていた。
「アズちゃんだめなのにぇ!!まねーじゃーが本気になっちゃうにぇ!!」
「いや、さすがに冗談だって解りますよ…Azukiさんのあの顔を見れば…」
そう言いながらも、Azukiの瞳は冗談にしては真剣すぎる輝きを放っていた。
「大丈夫、私は本気よ?外部さんは解ってくれますよね?」
驚愕の顔をして固まるみこち。外部マネージャーは慌てて場を収めようとした。
「Azukiさん、冗談はその辺にしておきましょう。ミコチが壊れちゃいます…あ、いや、元から壊れてますね…」
「がいぶまねーじゃー、みこの事そんな風に思ってたのにぇ!?」
「みこさん…そこはもうあきらめて下さい」
「…で、Azukiさん、どういうご用件ですか?」
本題に入ってもらうために促すと、Azukiは少し肩をすくめて笑った。
「もぅ…もう少しみこちで遊ばせてくれてもよいのに…まぁ、リアルジオゲッサーをやろうと思いまして、その運転手をお願いしたいのです」
「リアルジオゲッサー?」
「ええ。ネットでよくあるじゃないですか。ストリートビューの画像を見て場所を当てるゲーム。今回は逆に、写真を見て“実際にその場所へ行く”という企画です」
「なるほど…写真の場所を探しに行くんですね」
みこちはたい焼きを握りしめながら、目を輝かせた。
「にぇぇぇ!!面白そうなのにぇ!!みこも行くにぇ!!」
「えっ、みこちも?」
「当然にぇ!がいぶまねーじゃーが運転するなら、みこは助手席でたい焼き食べながら応援するにぇ!」
「助手席は私がもらいます」Azukiが即座に割り込んだ。
「にぇぇぇ!?アズちゃんずるいのにぇ!!」
外部マネージャーは深いため息をついた。
「……結局、俺が運転するんですね」
車内には、みこちのたい焼きの香りとAzukiの真剣な空気が混ざり合っていた。
「まずはこの写真です」Azukiがタブレットを差し出す。
そこには、見覚えのある観光地の写真――大きな鳥居と海岸線。
「これは…有名な神社の参道ですね」外部マネージャーが呟く。
「にぇ!?みこ、ここ行ったことないにぇ!!」
「じゃあ、第一問は“観光地ジオゲッサー”ですね」
車は海沿いへと向かう。到着すると、みこちは勢いよく飛び出した。
「鳥居でたい焼き食べるにぇ!!」
Azukiは冷静に写真と照合し、頷いた。
「一致ですね。では次へ行きましょう」
第二の写真は、川沿いの桜並木。
「ここは…春にイベントで使われた場所じゃないですか?」外部マネージャーが呟く。
「にぇ!?みこ、桜とたい焼きの組み合わせ最高なのにぇ!!」
「Azukiさん、これ…結局たい焼き屋の近くばかりでは?」
「ええ、それが狙いです。リアルジオゲッサーで“みこちのたい焼きスポット”を辿るんです」
「にぇぇぇ!?アズちゃん、みこのたい焼きストーカーなのにぇ!!」
「違います。ただの企画です」
みこちは頬を膨らませながらも、桜並木を歩き、たい焼きをかじっていた。
第三の写真は――山の展望台からの景色。
「これは…かなり遠いですね」外部マネージャーが地図を確認する。
「にぇ!?ドライブなのにぇ!!」
「でも、ここまで行くと本格的な旅行になりますよ」
「それでいいんです。リアルジオゲッサーは“旅の口実”ですから」Azukiが微笑む。
車は山道を登り、展望台に到着。そこから見える街並みは、写真とぴたりと一致していた。
「すごいにぇ!!ほんとに写真と同じなのにぇ!!」
「これがリアルジオゲッサーの醍醐味です」
車内で三人は今日の振り返りをしていた。
「結局、リアルジオゲッサーって…観光地巡りでしたね」
「にぇ!?でも楽しかったにぇ!!たい焼きも食べられたし!!」
「私は景色を堪能できたので満足です」
外部マネージャーはハンドルを握りながら、静かに思った。
「これ…仕事っていうより、青春のドライブじゃ…」
でも、みこちが笑っているなら、それでいい。
Azukiが満足そうに写真を整理しているなら、それも悪くない。
そう思えるようになっていた。
事務所に戻ると、すいせいが腕を組んで待っていた。
「……で、リアルジオゲッサーって何?」
「にぇ!?すいちゃん、聞いてなかったのにぇ!!」
「聞いてないよ。勝手に外部マネージャー連れ回して…」
「でも、楽しかったにぇ!!」みこちは満面の笑みでたい焼きを差し出した。
「ほら、すいちゃんも食べるにぇ!」
すいせいはため息をつきながらたい焼きを受け取った。
「……まあ、みこちが笑ってるなら、いいか」
外部マネージャーは心の中で呟いた。
「リアルジオゲッサー…結局、たい焼きで締めるんだな」
そして、今日もまた――たい焼きと笑顔に包まれた一日が終わった。




