第二十話:千客万来なのにぇ!!
夜の帳が降りたマンションの一室。外部マネージャーの部屋では、Azukiと風真いろはを交えて、ホロライブの話題で盛り上がっていた。
「みこちって、ほんとに自由だよね。あの“金コイチャレンジ”とか、普通じゃ思いつかないよ」
Azukiが笑いながら言うと、風真も頷いた。
「でも、あの自由さがホロライブらしさでもあるでござる。風真も、最初は驚いたけど…今は憧れてるでござるよ」
外部マネージャーは湯呑みを手にしながら、穏やかに微笑んだ。
「みこさんの“自由”は、計算じゃなくて本能ですからね。だからこそ、周囲が振り回される。でも、それが魅力なんです」
その時、インターフォンが鳴った。
「お客さんが来たみたいですね。先に言っていた方です」
「ほらすいちゃん、お客さんが来たから帰るよ」
Azukiが声をかけると、ソファに座っていた星街すいせいが、こむぎを抱きしめたまま顔を上げた。
「やだー!!こむぎと一緒がいい!!この家の子になる!!」
「すいせい先輩…それは無理でござるよ…」
風真が苦笑しながら、そっと肩を叩く。
外部マネージャーは少し困った顔をしながらも、優しく言った。
「大丈夫ですよ。今日のお客さんには、皆さんがいることも伝えてあります。驚いてたけど、話したいことがあるって言ってましたし」
「それじゃ、押し部屋に行ってればいい?まだいてもいい?」
すいせいは半泣きの顔で、こむぎの耳に顔をうずめながら聞いてくる。
「いいえ、ここにいても大丈夫ですよ。みんなで一緒に夕飯にしましょう」
その言葉に、すいせいはぱっと顔を上げた。
「夕飯!?こむぎと一緒に!?やったー!!」
その瞬間、玄関のチャイムが再び鳴った。
外部マネージャーは立ち上がり、玄関へ向かう。ドアを開けると、そこに立っていたのは――
「みなさんこんばんは…」
「谷郷!?なんでここにいるの!?!?!?」
すいせいが叫んだ。Azukiと風真も目を丸くする。
そう、外部マネージャーの来客は、ホロライブの社長・谷郷元昭だった。
その関係は、外部マネージャーが入院した時まで遡る。
みこちの“個人雇用”という立場上、谷郷からの直接の接触はなかった。だが、入院の報を聞いた谷郷は見舞いに訪れた。その際、年齢が近かったこともあり、話が弾み、今では定期的に飲み会をするほどの友人関係となっていた。
みこちや星街は知らないが、谷郷はこのマンションに何度か来ている。
「…で、なんで谷郷は来たの?」
すいせいがジト目で尋ねる。
「いやですね?一応は私の方が先にお約束していたのですが…」
谷郷は苦笑しながら答える。
「谷郷さんとは、定期的に家で飲み会してますよ?」
外部マネージャーが補足すると、すいせいは「えぇ…」と呟きながらこむぎに顔をうずめた。
食卓には、外部マネージャーが用意した煮物と炊き込みご飯、そして谷郷が持ち込んだ酒が並ぶ。こむぎはテーブルの下で丸くなり、時折すいせいの足元にすり寄っていた。
「まぁ、今日は星街さんたちも言えなかったことを、ご飯を食べながらでいいから谷郷にぶつけてみてください」
「そうですね。ここ半年で色々なことがありましたから、皆さんのご意見も直接聞きたいです」
谷郷は真剣な表情で答える。
その言葉に、すいせいの目が鋭くなった。
「分かってるとは思うけど、いい加減どうにかしないと卒業者がまた増えるよ!!」
ホロライブとホロメンの関係は、かつては良好だった。だが、規模が大きくなるにつれ、組織のひずみも生まれてきた。
「まだ良いの…すいちゃんみたいに言ってくれる人や、スバルみたいにフォローしてくれる人がいるうちは…でも、タレントが増えれば増えるほど、その人たちだけではカバーできなくなる…もう限界が近いの…」
「そうでござる…風真も、すいせい先輩達が居なかったら…何度も潰れそうになったでござる…」
外部マネージャーも静かに言った。
「谷郷、お前も辛い立場になるが、今なら間に合う。俺から見ても、限界は近いぞ」
谷郷は、みんなの顔を見回し、コップの中身を飲み干した。
「そうですね…タレントの皆さんのためにも、一度大ナタを振るわないとダメですね…」
その表情には、覚悟と決意がにじみ出ていた。
こむぎが「ニャー」と鳴いた。
その声は、まるで「今がその時だ」と言っているようだった。




