第十九話:みこと後輩とお泊り配信と(修羅場編)
みこちと莉々華が配信準備をしている頃、外部マネージャーは休日を利用して食材の買い出しに出かけていた。こむぎ用の猫草、みこち用の低カロリー夜食素材、そして自分用のインスタントコーヒーをカゴに入れながら、スマホに届いた通知を確認する。
「今日はみこちのところ休みだよね?こむぎと遊びたいから行っていいかな?」
差出人は星街すいせい。
女性が一人で男の家に来るのはどうかと一瞬ためらう外部マネージャーだったが、すぐに追撃のメッセージが届く。
「その点は大丈夫!!ホロメン連れて行くから!!」
とはいえ、今日は別件で来客の予定がある。念のため確認を取ろうとしたが――
「押し部屋の方で大人しくしてるから!!私にこむぎにゅーむを!!どうかご慈悲を!!」
どうやら、すいせいは相当ストレスが溜まっているらしい。知らない仲でもないし、来客の時間とも被らなさそうだ。外部マネージャーは了承の返信を送った。
そして数時間後――
「外部マネージャーおかえりなさい!!さぁ、早くこむぎを!!こむぎに会わせて!!」
マンション前で、星街すいせいがテンション高く出迎える。
「いや、まずは挨拶を…」
「そんなのは後でいいから!!こむぎを!!」
その後ろには、落ち着いた雰囲気のAzukiと、少し緊張気味の風真いろはの姿があった。
「すみません、急にお邪魔してしまって…」
「お世話になりますでござる…」
「いえ、どうぞお入りください。こむぎも喜ぶと思いますので」
玄関を開けると、すいせいは靴を脱ぐ間もなく部屋に飛び込んでいった。
「こむぎー!!こむぎー!?すいちゃんがきたよ!!」
「……改めまして、ホロライブ所属さくらみこの外部マネージャーをしている外部と申します」
「ホロライブ所属0期生のAzukiと申します。今後ともよろしくお願いします」
「holoXの風真いろはです。よろしくお願いします…!」
「まぁ、立ち話もなんですし、座ってください。お茶でも入れますね。星街さん、こむぎは寝室の方にいるかもしれませんよ」
「こむぎーーーー!!」
寝室に飛び込んでいくすいせいを横目に、外部マネージャーはお茶の準備を始めた。
「お二人は何飲みますか?コーヒー?紅茶?お茶?冷たいのも温かいのもありますよ」
「私は温かいお茶を…いろはちゃんは?」
「同じくでお願いします…」
羊羹を切りながら、何気なく尋ねる。
「それにしても、今日は収録でもあったんですか?」
「はい、公式の方の収録がありまして…」
そのとき、すいせいの叫び声が響いた。
「外部マネージャー!!こむぎ居ない!?居ないよ!?!?」
「星街さん、ちょっと待ってくださいね…Azukiさん、風真さん、これでも食べながら待っててください」
部屋を見回すと、窓が少し開いているのに気づく。
「……あぁ、また隣に遊びに行ったな」
スマホを取り出し、隣人に連絡を入れる。
「こむぎ、そちらにお邪魔していませんか?」
すぐに返信が来た。
「いるぺこ。膝の上で寝てるぺこ」
「やはり隣の家に遊びに行ってたみたいです。引き取りに行ってきますので、羊羹でも食べて待っててください」
「私も行く!!一秒でも早くこむぎに会いたい!!」
「Azukiさん、すみません、星街さんをちょっと抑えておいてもらえますか?隣の方が驚いてしまうので…」
Azukiはすっと立ち上がり、すいせいの肩に手を置いた。
「あー、すいちゃん、ちょっと落ち着こうか。そんな勢いで行ったら、隣の人に迷惑だし、近隣トラブルになっちゃうよ?大人しく待って羊羹でも食べよっか?」
「……こむぎ……」
すいせいは涙目で羊羹をかじりながら、ソファに沈んだ。
こむぎを連れて戻ると、すいせいは歓喜の声を上げて抱きしめた。
「こむぎぃぃぃぃぃ!!」
Azukiと風真は、お茶をすすりながらつぶやいた。
「……これがホロライブの日常なんだね」
「なんか、すごいでござる…」
その頃、みこちと莉々華は配信を開始していた。
「じゃあ、配信はじめるにぇ!」
「はい、よろしくお願いします!」
みこちのスマホには、外部マネージャーからのメッセージが届いていた。
『こむぎ、隣から回収完了。星街さん、現在こむぎに夢中。Azukiさんと風真さんも無事。羊羹、好評。』
みこちは画面を見て、ぽつりとつぶやいた。
「がいぶまねーじゃー…今日も戦ってるにぇ…」
莉々華は首をかしげた。
「何かあったんですか?」
「ううん、みこの日常なのにぇ」
画面の向こうでは笑顔が溢れていた。
だが、外部マネージャーの部屋では――
星街さんがこむぎを抱きしめながら、涙ぐんでいた。
「こむぎ…私もこの家の子になる…」
「いや、それはちょっと…」
修羅場は、まだ終わっていなかった。




