第十八話:みこと後輩とお泊り配信と
ホロライブ事務所の共有サーバーに、一本の動画がアップされた。
タイトルは「ロボ子’sキッチン(罰ゲーム代理編)」
外部マネージャーがロボ子さんの部屋を掃除し、冷蔵庫の残り物で即興料理を振る舞う様子が映っていた。
その動画は瞬く間にタレント鯖で拡散され――
「俺の部屋を掃除して欲しいのねぇ…いろはにまた怒られるねぇ…」
「だんちょの段ボールハウス化してしまった部屋をかたづけてほしい」
「ウチと一緒に料理してほしいの」
「ラミィの晩酌配信のつまみを作ってほしいのね」
などなど、ホロメンたちから“レンタル希望”の声が殺到した。
外部マネージャーは困惑していた。
「なぜ俺なんだ……」
みこちは驚いていた。
「なんでこうなったのにぇ……」
外部マネージャーはあくまで“みこち専属”。ホロライブ全体のサポート要員ではない。みこちは当然、貸し出しを拒否した。
「がいぶまねーじゃーは、みこのなのにぇ。たい焼きで雇ってるのにぇ」
「今は現金で雇ってます」と神楽坂さんが冷静に補足した。
だが――抜け道を見つけた者がいた。
「みこ先輩、最近お疲れみたいですね。気分転換に、お泊まり配信しませんか?」
声をかけてきたのは、ReGLOSS所属の新人タレント・一条莉々華だった。
「久々にやるのもいいにぇ。みこ、たい焼き準備しておくにぇ」
「前半は私のチャンネルで、後半はみこ先輩のチャンネルって形でどうでしょう?」
「それ、いいにぇ!」
莉々華は内心、こう思っていた。
(みこ先輩の家に行けば、外部マネージャーのご飯が食べられる……)
そして迎えた配信当日。
夕方、みこちの自宅。
「莉々華、いらっしゃいなのにぇ」
「お邪魔します!あの、外部マネージャーさんは……?」
「今日は来ないのにぇ。みこちと女子会なのにぇ」
「……そうですか」
莉々華は残念に思ったが、気持ちを切り替えて配信に挑んだ
配信は順調に進み、前半は莉々華のチャンネルで、後半はみこちのチャンネルへと移行。
視聴者コメントも盛り上がり、ふたりの掛け合いに笑いが絶えなかった。
「みこ先輩って、ほんとに自然体で面白いですね」
「みこはえりーとだからにぇ!」
そして深夜帯。
「ちょっと待っててにぇ。夜食、出すにぇ」
みこちは冷蔵庫へ向かい、タッパーを取り出した。
「これ、がいぶまねーじゃーが作ってくれた夜食なのにぇ。みこのために、カロリー控えめで、腹持ちのいいやつにしてくれてるにぇ」
「えっ……そんなのまで……」
中身は、雑穀入りの鶏そぼろ丼と、豆腐と野菜のスープ。
「……すごい。見た目も綺麗だし、香りも優しい……」
莉々華はひとくち食べて、目を見開いた。
「……おいしい……これ、ほんとに夜食?罪悪感ゼロなのに満足感すごい……」
みこちは満足げに頷いた。
「がいぶまねーじゃー、みこの健康のために考えてくれてるにぇ。みこ、夜にたい焼き食べすぎるから、これで調整してるにぇ」
「……尊い……」
その夜、配信後。
莉々華はみこちの家のソファで、たい焼き型クッションを抱えながら、スマホを取り出した。
ReGLOSSのグループチャットに、こう書き込んだ。
『みこ先輩の家の夜食、外部マネージャーさんの手作りだった。神だった。』
『えっ、それって…』
『次、私も泊まりたい』
『その前に、私の部屋も掃除してもらいたい』
翌朝
莉々華は、荷物をまとめながら、そっと言った。
「みこ先輩、また呼んでくださいね。次は、私が夜食作ってみたいです」
「にぇ!?それは楽しみなのにぇ!」
「でも、外部マネージャーさんの味には勝てないかも……」
「みこが審査するにぇ!」
「それ、プレッシャーですね……」
ふたりは笑い合いながら、玄関へ向かった。
外部マネージャーはその頃、こむぎと静かに過ごしていた。
「……なんだか、背中がむずむずするな」
「ニャー」
こむぎは、何も知らない顔で、丸くなっていた。




