第十四話:みこと外部マネージャーと新居探しへと(引っ越し編)
内見、契約、引渡――すべてが完了し、外部マネージャーはついに新居への引っ越しを迎えた。
荷物はさほどでもない。
所詮、一人と一匹の暮らしである。生活用品は最低限。家具はすでに新居に合わせて購入・搬入済みで、設置も完了している。
……ぺこらの周年記念グッズ以外は。
「このガラスケースだけは…自分で運ばないとな」
ぺこらのぬいぐるみ、アクリルスタンド、サイン入りポストカード――すべてが丁寧に梱包され、専用の段ボールに収められていた。
こむぎはキャリーの中で丸くなりながら、静かに耳をぴくりと動かしていた。
新居マンション前。
外部マネージャーが鍵を取り出し、部屋へ向かおうとしたその瞬間――
「……ん?」
玄関前に、見慣れない段ボールが鎮座していた。
しかも、二つ。
「……え?」
一つ目の箱には、手書きの文字。
「みこち私物(ぬいぐるみ・ポスター・たい焼き型クッション)」
二つ目の箱には、さらに達筆な文字。
「星街すいせいグッズ(CD・ライブポスター・観葉植物)」
外部マネージャーは、静かにため息をついた。
そこへ、タイミングよくみこちとすいせいが現れる。
「みこ成分が足らないと思ったので贈っといたにぇ!!」
「私のグッズが足らなかったから贈っといたよ!!」
「……とりあえず中に運び込みましょう」
室内。
すでに設置された家具の間に、段ボールが次々と運び込まれていく。
みこちの箱を開けると、ぬいぐるみがぎっしりと詰まっていた。
「これ…何体あるんですか?」
「みこ、数えてないにぇ!でも、最低でも10体は必要なのにぇ!」
「なぜ…?」
「部屋の四隅に置いて、みこち結界を張るにぇ!」
「それ、ホラーじゃないですか…」
すいせいの箱には、ライブポスターとCD、そして小ぶりな観葉植物が整然と収まっていた。
「これは…まあ、落ち着いてますね」
「でしょ?空間を邪魔しないように考えてあるから」
「にぇぇぇ!?みこのは“圧迫”じゃなくて“包容”なのにぇ!」
「言い方の問題じゃないよ…」
そのとき――
「シャッ!!」
こむぎが、みこちのぬいぐるみに向かって威嚇した。
「にぇぇぇ!?こむぎ!?なんでみこのぬいぐるみに敵意向けてるのにぇ!?」
「こむぎ、ぬいぐるみの目を見て警戒してる…」
「みこ、敵じゃないにぇ!これは“みこの分身”なのにぇ!」
「分身って言われても…こむぎには関係ないですからね」
こむぎは、ぬいぐるみの前で低く唸りながら、じりじりと後退した。
「みこ、こむぎと仲良くなれると思ったのにぇ…」
「まずは“みこちの気配”を減らすところから始めましょう」
「にぇぇぇ!?みこち成分、減らすの!?」
「こむぎの平穏のために…」
夕方。
荷物の整理も終わり、部屋はようやく落ち着きを取り戻した。
外部マネージャーは、こむぎを撫でながら、静かにソファに腰を下ろした。
「これで…ようやく落ち着けるかも」
その隣で、みこちはたい焼き型クッションを抱えながら、満足げに微笑んだ。
「みこ、がいぶまねーじゃーの新居、気に入ったにぇ!」
「俺の新居なんですけどね…」
「でも、みこも隣に住む予定だから、ほぼ“みこの別宅”なのにぇ!」
「それ、言い方が怖い…」
すいせいは観葉植物に水をやりながら、ぽつりとつぶやいた。
「この部屋、静かになる日は来るのかな…」
外部マネージャーは、こむぎの背中を撫でながら思った。
「でも、みこちが笑ってるなら――それでいいか」
新居の窓から差し込む夕陽が、三人と一匹を優しく包み込んでいた。




