第十一話:みこと外部マネージャーと再契約
ゴールデンウィーク明けのある朝。
事務所に一本の連絡が入った。
「外部マネージャーさんが倒れたって…!?」
神楽坂さんの声に、みこちはたい焼きを落とした。
「にぇっ!?がいぶまねーじゃーが!?どうしてなのにぇ!?」
「過労だそうです。病院に運ばれましたが、命に別状はありません。ただ…しばらく安静が必要です」
「……そんな…」
病室。
ベッドに横たわる外部マネージャーは、点滴を受けながら、少しだけ申し訳なさそうに笑った。
「すみません…ちょっと、無理がたたったみたいで」
「がいぶまねーじゃー…なんで、倒れるまで頑張ったのにぇ…」
「でも、楽しかったんですよ。みこちと一緒にいるの、毎日がイベントみたいで」
「……」
「それに、給料も前の会社の倍もらってましたし。“それだけもらってるなら、働かないと”って思ってたんです」
「でも…通勤時間も長いし、車も自分のだし、ガソリン代も自腹だったって…」
「まあ、それも含めて“個人契約”ってことで、仕方ないかなって」
みこちは、ぎゅっと拳を握った。
「みこ、何もわかってなかったにぇ…」
数日後。
ホロライブ事務所の応接室。
神楽坂さんと法務部の担当者、そしてみこちが集まり、外部マネージャーの雇用契約の見直しが始まった。
「まず、通勤時間と交通費の補助について。現在、都内在住ではないとのことなので、住居手当の検討も必要です」
「車両使用に関しても、業務用車両を事務所側で用意するか、車両手当を支給する形にしましょう」
「勤務時間の明確化も必要ですね。深夜帯の拘束については、事前申請と上限設定を」
「……」
みこちは、黙って話を聞いていたが、やがて小さく手を挙げた。
「みこが、ちゃんと契約主として責任を持つにぇ。がいぶまねーじゃーが安心して働けるように、全部見直すにぇ」
神楽坂さんは、少し驚いたように目を見開いたが、すぐに微笑んだ。
「それが言えるようになったなら、もう大丈夫ですね」
後日。
外部マネージャーが退院し、再び事務所に戻ってきた。
「おかえりなのにぇ!」
「ただいま、みこち」
「これからは、無理しないでいいにぇ。みこ、ちゃんと考えたにぇ。がいぶまねーじゃーが倒れたら、みこ、すごく寂しかったにぇ…」
「……ありがとう。俺も、みこちのそばにいたいから、ちゃんと働き方を見直すよ」
「じゃあ、再契約なのにぇ!」
みこちは、にっこり笑って、たい焼きを差し出した。
「これは…?」
「“再契約記念たい焼き”にぇ!」
「……ありがとう。これからも、よろしくお願いします」
「うん!でも、無理はダメにぇ!」
「はい、ただ“35P契約条項”だけは削除してください」
「なんでぇ!?!?」
こうして、みこと外部マネージャーは、改めて“新しい関係”を築き始めた。
それは、ただの雇用契約ではなく――
お互いを思いやる、信頼と絆の再確認でもあった。




