第八話:みこと外部マネージャーと最押しと
ホロライブ事務所・会議室。
みこち、神楽坂さん、外部マネージャーの三人は、今後のスケジュール調整のための打ち合わせをしていた。
「来週の収録は火曜の午後ですね。送迎は…」と神楽坂さんが淡々と進行する中、ふと雑談のように話題が逸れた。
「そういえば、外部マネージャーさんって、ホロライブのことは前からご存知だったんですか?」
主人公は少し笑いながら答えた。
「はい。3期生がデビューした頃からよく見てました。とはいえ…実際に配信を見ていたのは、ほぼぺこらさんだけですが…」
「ぺこらさんだけ?」と神楽坂さん。
「はい。他の方は、切り抜きでちょっと見たことがあるくらいで…気になった話題があるときに、たまに覗く程度でした」
みこちはたい焼きをかじりながら、少しだけ眉をひそめた。
「みこの配信は…見たことあるにぇ?」
「えっと…“たい焼き100個チャレンジ”の切り抜きは見ました。あと、“みこちPON祭り”のまとめ動画も…」
「それ…事故動画ばっかりなのにぇ…」
「でも、面白かったですよ。みこちさんのテンポ、すごく独特で…」
「でも、ぺこらの配信は“全部”見てるのにぇ?」
「はい。ほぼ毎回リアルタイムで見てました。ゲームのプレイもトークも好きで…あと、あの“ぺこ”って語尾も、最初は不思議だったけど、今では癒しです」
みこちはたい焼きを握りしめたまま、じりじりと顔が曇っていった。
「……癒し……?」
「ぺこらさんの配信を見ると、元気が出るんです。落ち込んだ時とか、自然と笑顔になれるというか…」
「……笑顔……?」
「あと、ファンとの距離感が絶妙で、エンタメとしての完成度が高いというか…」
「……完成度……?」
みこちは、たい焼きを机に叩きつけるように置いた。
「そんなに好きなら、兎田のところに行けばいいのにぇ!!」
会議室が一瞬静まり返った。
「みこち…」と神楽坂さんが声をかけるも、みこちは立ち上がり、たい焼きを握りしめたまま会議室を飛び出した。
廊下を走り抜けたみこちは、角を曲がった瞬間――
「きゃっ!!」
偶然スタジオ収録に来ていたぺこらと、真正面からぶつかった。
「うわっ!?みこ先輩!?どうしたぺこ!?」
「ぺこら!なんでそんなに魅力的なのにぇ!!なんでがいぶまねーじゃーの単推しなのにぇ!!」
「え!?何の話ぺこ!?突然すぎるぺこ!!」
「みこ、がいぶまねーじゃーにたい焼きあげてるのにぇ!!一緒にウォーキングもしたのにぇ!!料理教室も行ったのにぇ!!」
「それ…恋人みたいな関係ぺこ…」
「でも、がいぶまねーじゃーはぺこら単推しなのにぇ!!」
ぺこらは少し驚いた顔をしながらも、すぐに笑って言った。
「なら、みこ先輩の魅力で“35P”にすればいいぺこ」
「……35P……?」
「ぺこらのファンが“野うさぎ”なら、みこ先輩のファンは“35P”ぺこ。魅力で引き寄せればいいぺこ!」
みこちは目を見開き、たい焼きを握りしめたまま立ち上がった。
「みこ…負けないにぇ!!がいぶまねーじゃーを“みこ単推し”にするにぇ!!」
「それ、ファン獲得じゃなくて、個人戦ぺこ…」
「みこ、もっと魅力的になるにぇ!たい焼きも進化させるにぇ!料理も頑張るにぇ!歌も踊りも、全部磨くにぇ!!」
ぺこらは苦笑しながら、ぽつりとつぶやいた。
「みこ先輩…それ、もうアイドルの覚醒ぺこ」
こうして、みこちは“最押し奪還作戦”を胸に、新たな決意を燃やすのであった。
外部マネージャーは、会議室でたい焼きを見つめながら思った。
「俺…なんか、戦場の中心にいる気がする…」
でも、みこちが笑ってくれるなら、それでいい。
そう思えるようになっていた。




