↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/109

青色エレジー④

 間もなくして、警察が来た。


 それは何の大事件が起きたんだと言いたくなるような、ものすごい数のパトカーと警察官の人数だった。


「いつかこうなると思ってたんだよ」


 近所の人は、口々にそう言った。


「全く、本当に難儀な一家だ」


 彼らの口調は、近所迷惑だというより、私たち一家を憐れんでいるように聞こえた。


「君は、己斐さんの娘さん?」


 警察が私にも話を聞きに来て、私は包み隠さず見聞きしたことを話す。


 こんな大騒動だったのにも関わらず私は妙に落ち着いており、何というか、当事者なのに、どこか他人事だった。


「彩芽。大丈夫だったか?」


 とりあえず、夜だからか私達は早々に解放され、詳しい話は後日と言う事となった。


 そして母屋のダイニングの椅子に座った私に、父が第一声、そう尋ねて来る。


「うん、大丈夫」


 何に対しての大丈夫かもわからぬまま、私は適当にそう返した。


「いやぁ。とんでもない災難だった」


 兄も伸びをしながらそう言った。


 その兄も、どこか人ごとに思っているような印象を感じた。


 そしてスイクンとその父親は警察にドナドナされて行き、黄色も警察のパトカーで自宅に送られる事となった。


 ちなみに、黄色は最後までパトカーには乗らないと抵抗していた。


 流石、反社の娘。


「で、あの人、何だったの?」


 私がそれを尋ねようか迷っていた時、その事を菖太が先に父に問いかけた。


 父は何かを言いかけて少し考え、そしてゆっくり口を開いた。


「あの人は昔、ウチの工場で働いていた従業員で、問題を起こしてクビになったんだ」


 それは既に、さっきの騒動を盗み聞ぎしていた事で知っている。


「姉ちゃんの友達の父親なんでしょ? ってことは、ウチを出禁になったのに娘を出汁にウチを訪ねて来たって感じ?」


 それは弟も同じようで、私と同じ程度には彼も把握しているようだった。


 父は小学生の弟がそこまで察している事に驚いた様だが、それは弟を子ども扱いしすぎだと思う。


「その時にもひと悶着あってね。その時にもご近所に迷惑をかけて、警察に立ち会ってもらって、二度とウチに立ち寄らないと言う誓約書を書いてもらったんだ」


「なんか、その誓約書には効力が無いとか言ってなかった?」


「ウチに近付かないって約束する代わりに、彼を訴えない事にしたんだよ」


 ああなるほど。


 要するに、相手に条件を飲ませて示談をしたって事か。


「ふーん」


 弟の方は、流石にそこまでは分かっていない様子だった。


「具体的に、あの人は何をしたん?」


「ダメだ。これ以上は教えられない」


 私もそこが知りたいのに、予想通りではあるが、その先は答えてはくれないようだ。


「えー? そんな事言っても気になるじゃん?」


「そこまで言ったんなら、教えてくれてもいいんじゃないの? 私の友達の事なんだし」


「そうだそうだー!」


「こら菖太!」


「だからこそ教えられないんだよ」


 まあ、こういう時に私はいつも、子どもであると言う事に無力感を感じるのである。


 周囲は普段大人っぽいと私をもてはやす癖に、こういう時だけ年相応の扱いをして来る。


「むしろ知っておいた方がいいんじゃない? この先、何があるか分からないし」


 そして、思わぬところで兄の援護が入る。


 かなり意外だったが、流石お兄ちゃん!


「さすが兄ちゃん! 分かってるぅー!」


「菖太……来霍……」


「ちなみに彩芽は何があったと思ってる?」


「えっ!?」


 急に兄からそんな事を言われると思っていなかった私は、驚いて声を出してしまう。


「おい来霍……」


「まあまあ、ちょっと聞いてみようよ」


 兄の飄々とした様子に、何か言いたそうな顔をしながらも、父は私の方を見る。


 いや、止めないのかよ……。


「うーん。大方、会社のお金を横領して、それを糾弾したら大暴れしたんじゃないかな? それで内々に処理できなくなって、警察を呼んだ。……とか?」


 それを聞いて、顔を見合わせる父と母。


 この反応は、どっちだろうか。


「……よく分かったな」


「いやそのまんまじゃん! つまんねー!」


「こらっ!」


 ぶっちゃけ、私も菖太と同じ感想である。


 もったいぶった割には、最もありがちな回答だ。


「よし、答えも分かった所で、子どもはもう寝なさい」


 …………?


「いやもう、絶対ねれねー!」


 ……あ、これ。


 この反応は、多分もっと深い闇がある。


「ほらほら、いいからさっさと寝なさい!」


「へーい」


――――――――


――――――――


「大変でしたね?」


 私が自室に入ると、そんな呑気な声を出しながら後に続いて入って来た女。


「……ローレル」


 今の今まで、確かに近くに居たのに全く存在感を感じさせなかった女。


「お前、警察がいる間、どこにいたんだよ?」


「? 普通に家にいましたよ?」


「隠れてたにゃ」


 そういえば、他に誰か家に居ないかと問われた時、だれも彼女の存在を口にしなかった気がする。


 まあ、コイツが出てくると話がややこしくなるので良い事なのだが、この女が今の今まで私達の意識の外に居たことがかなり疑問である。


 何か私達の知らない力が働いているかのようだった。


「こうなる事を、知ってたんじゃないのか?」


「まさかっ! 流石の私も、驚きましたよ!」


 ……ほんとかなぁ?


「スイクン……ルリさんの事を、お前はどこまで知ってるんだ?」


「どこまで? 先ほどの事だったら、私はほとんど関知していませんが……」


 彼女の様子からは、とぼけている様子は見られない。


 だが。


「あのさぁ……お前って、私の護衛なんだろ? だったら、身辺の事も詳しく調べてるんじゃないのか? だったら、私のパーティーメンバーの素性ぐらい把握してないとだめじゃないか?」


 自分で言っておいて、なんとも性格が悪いと思うが、私はこれを尋ねずにはいられなかった。


「仮に、私が知っていたとしても、他人の個人情報を言うと思いますか? 猫猫さんも、逆の立場だったらどうです?」


「言わないな」


「ね?」


 何が「ね?」じゃ。


「お前は?」


 その言葉の先に居るのは、私の使い魔であるテルミンである。


「前にも言ったけど、担当以外の魔法少女の情報は最低限しか持ってないにゃ。ご期待に沿えず申し訳ないにゃ」


 相変わらず、イラつく言い方だな。


「何か気づいたことくらい無いのか?」


「……気づいた事にゃ?」


 そう言って、首をかしげる使い魔。


「アヤメにしては、妙に曖昧な聞き方にゃ?」


「単純に感想を教えてくれればいい」


「? そう言われても、ボクもアヤメが見た情報以上の情報は持ってないにゃ」


「本当に?」


「本当に……あ」


「? 何?」


 しかし、聞いておいて何だが、使い魔は本当に人間みたいな反応をするので、人工生命体であるはずのコイツの言う事を、いつの間にか真に受けてしまっている。


 なんだか、現実と夢が曖昧になっているような奇妙な感覚を受けた。


「そういえば、最初見た時、スイと猫猫は魔力の波長が似てると思ったにゃ」


「魔力の波長?」


 魔力に波長があるのは初めて聞いたが、まあそんな物もあるかと言った感想だ。


「もっと言うと、サンとも似ているにゃ」


「黄色と? で、それが似てるとなんなんだ?」


「……相性がいいにゃ」


「おい。今、間があっただろ?」


「魔法少女にとって魔力の相性はかなり重要なんですよ?」


「そうにゃ」


「…………」


 なんか、二人にはぐらかされてしまった気がする。


「そういえば、今夜のお仕事はどうするんですか?」


「……あ」


 そうだった。


 魔法少女の仕事の事を、完全に忘れていた。


「いや、無理だろ。こんな状況で」


「あ、丁度今連絡が来たにゃ」


 そう言った使い魔の言葉の続きを、私は黙って待つ。


「……なんとっ!」


「はよ言えや」


「ふふふ……まるでヒマワリさんみたいな口調です」


 お前は黙れ。


「普通にあるっぽいにゃ」


「あるのかよっ!」


 このまま寝る気満々だった私は、どっと疲れが押し寄せて来るのを感じた。


 そういえば、四人目のパーティーメンバーが決まったとか言ってたな。


 たとえ行くのが私だけでも、そのメンバーとやらの顔を拝みに行くべきだろうか。


――――――――


――――――――


「海田って聞いた時、まさかとは思ったんだ」


「何で聞いてたなら言ってくれなかったの?」


「あれ、父さんは分かってて彼女を勧誘したんじゃないの?」


「まさか本当に……いや、もしかしたら少し、どこかでそんな気が有ったのかも……」


「はぁ……もう、そんな無責任な」


「いや、社員に誘ったことは本心からだよ? 彼女の事は、本当に家で預かるつもりだった」


「またそんな事言って……」


「分かるよ。スミレさんの言いたいことは分かるよ」


「分かるって……。いや、あの子には何の罪もない事は私も分かってる。それに、梗平(きょうへい)さんだって……」


「あんな姿を見て、何もしないわけにはいかないだろ?」


「それは……。ってことは、やっぱり最初から――」


「まあいいじゃないか。あの子に罪が無い事は、二人とも分かってるんでしょ?」


「「…………」」


「……楽々園さんの娘さんの方はどうなの?」


「スミレさん。ひまわりちゃんの方は関係ないよね?」


「……何その言い方」


「まあまあ、あんまり大きい声出すと、また凛が起きちゃうよ」


「だって、普通に考えて二人が同時にこの家に来るなんておかしいでしょう?」


「まあ、それは……」


「来霍くんは知ってたんだよね? 何で早く言わないの?」


「母さん落ち着いて」


「私はっ……! ……ゴメン」


「いや、確信が無かったんだよ。本当に小さい時に見ただけだったからさ」


「嘘っ。……いいえ、そうじゃなくて……」


「いずれにせよ、何か良くない事が起こってる気がする。僕達も、もっと気を引き締めて対応しないといけないと思う」


「来霍に賛成だ。こんな事、偶然なはずが無い」


「…………」


「大丈夫だよ。前みたいなことは起きない。いや、絶対に起こさないから」


「僕も少し、調べてみるよ」


「そんな暇あるのか?」


「まあ、……ね?」


「……危ない事はするなよ?」


「…………」






「……はぁ……。また私は蚊帳の外か」

・あとがき


すみません書き忘れておりました。

これにて第六幕が終了となります。

またしばらく書き溜め期間となりますので、悪しからずご了承ください<m(__)m>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。