不束で面倒
お盆明けでも土曜日には違いなく、ベーカリーカフェでは10分程は並んだ。
ガラス張りの店内は無数のパンが棚に並べられ、壮観と言っていい。
ハード系、惣菜系、スイーツ系とどれも満遍なく種類が豊富で、迷う。
下りにエスカレーター、駅のコンコース……
そして、今も……
千香良は数人からチラ見されている。
けれども、何事も慣れると言う。
次第に気にならなくなっていた。
「ここはクロワッサンが有名なようね……」
母は興味深げに一種類ずつ見て回っている。
『赤煉瓦』のパンも自家製なので参考にするつもりなのだろう。
「クロワッサンが有名だから、お土産に買って帰ったら……」
「そうね……ママの食べるのは適当に千香ちゃんが選んで」
母はクロワッサンの前で立ち止まると、店、自宅、兄、乙葵とそれぞれに見合った数量をトレーに載せている。
頷いた千香良はもう一度、パン棚を見て回り、海老とアボガドのクロワッサンサンドとアスパラとベーコンのタルティーヌ、アップルパイをトレーに載せた。
そして、レジカウンターで千香良はアイスミルクティ、母はアイスコーヒーを頼むと、席に着く。
会計は10,000円を超えていたが、母はどれだけ買ったのだろうか……
紙袋も至極大きい。
「また、お兄ちゃんからライン来ている……」
椅子に座る千香良は当然、スマホの確認。
特に気になることもないが、謂わば、癖になっている。
それだけだ。
「乙葵さん、来たのかしら……千香ちゃん、ママ、食べていい?」
母もクロワッサンクロックムッシュスを指差して暢気な調子だ。
『赤煉瓦』のランチタイムも一回転目は終わっている。
一段落付いた頃だ。
多分、母の言うように乙葵の到着を知らせるメッセージに違いない。
「うん、それがママの……」
千香良も一旦、スマホをポシェットに戻して、クロワッサンサンドの包みを手に取った。
それよりも、お腹が空いている。
頬張ったクロワッサンサンドはサクッと良い感じに口で解けた。
そしてPM1時3分発の特急電車指定席。
千香良は漸く兄からラインを開いたのだが……
【龍太さん『三上整形外科』に行ったのか?】
千香良は文字盤を見つめて考えていた。
母は窓際の席でうたた寝中だ。
相談も出来ない。
千香良の知っていることを並べと長くなる。
(お兄ちゃん、ラインで長文送ると怒るから……)
こんな時に限って要らない考えが浮かぶ。
【多分……何で?】
【了解】
何が了解なのか千香良には理解不能。
ただ……
逸る気持ちが高まるばかりだった。




