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ガテン系の女 愛より、恋より、修業中  作者: うらら桜子(旧 咲良ヤヨイ)
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複雑で難儀


 


 お盆休み明けの疲れと一連の騒動とで、千香良は朝から、気怠い。

 それでも、肩の荷を卸した安堵感で気持ちの方は楽になった。


 しかし、心配なのはラインの返信。

 昨日の就寝前と、今朝とチェックしたのだが既読になっていない。

 

 千香良はダイニングでキュウリのサンドウィッチを片手に止まっていた。


「どうしたの?」


 千香良の様子に母が声を掛ける。


「少し、くたびれたのかも……」 

 

 千香良は母の問い掛けに大雑把に答えるとサンドウィッチを頬張る。


 塩揉みしたキュウリをサワークリームと塩胡椒で和えてパンに挟んであるだけ。

 けれども、凄く美味しい。

 それにジャガイモビシソワーズと、スイカとトマトのジュースが今朝の朝食だった。


 夏場でも食欲が落ちないのは母の愛情のお陰だと、いつになく殊勝な考えが浮かぶ。

 この所、母はサンドウィッチに凝っているようで。

 毎朝、違うサンドウィッチと冷たいスープが出てくる。


「お盆休みに遊びすぎて、夏バテかな……」


 母は昨晩のことは一切口に出さない。


「そうだね……」


 そして千香良も同様。

 まるで何事もなかったかのように振る舞っている。

 

 クマ蝉にニーニー蝉。

 朝っぱらから、セミの鳴き声が大きく響いく。

 今日も暑くなりそうだ。

 

 しかし『プラスター工房ムラオカ』に着くと、村岡から現場に1人で行くように言われた。


 龍太は高城の家から直行だそうだ。


 千香良はKバスを初めて運転する。

 不安げな千香良に村岡も心配そうだ。

 けれども、今後も左官を続けていれば1人で現場に行くこともある。


 出来ません、無理です、なんて言っていられない。

 仕事をしていると、日々、次から次へと課題が出てくる。


 けれども千香良はそれが楽しい。

 三上からのラインの有無など忘れている。

 根っから、仕事が好きなようだ。

 

 そして現場に着くと龍太は既に壁を塗っていた。

 昨日の内に材料を各階に降ろしておいて正解だった。

 

 けれども千香良は龍太の背中を見て思いだす。

 相葉家では終わりにした話も現場では違う。

 張本人と顔を合せる。


(昨日は高城さんと何を話したんだろう……)


 千香良は龍太の機嫌が気になって仕方がない。

 それに千香良は大幅な遅刻に遅刻している。


 現時刻はAM9時過ぎ。

 千香良が『プラスター工房ムラオカ』を出たのがAM7時15分頃なので、1時間で来られるところを1時間45分も掛かっている。

 現場に向かう途中で事故でも起したら大事だと、途中、コンビニで休憩していたのがいけなかった。


「遅くなりました」

 

 千香良はこれ以上ないぐらい溌剌と龍太の側まで駈け寄った。

 現場で覚えた処世術の1つだ。


 明るく元気な人物に厳めしい顔を見せる輩はいない。


「おう。思ったよりも早かったな」


 龍太が笑顔で労いに言葉を口にする。

 千香良の顔も安堵で綻ぶ。


「今日は昨日と同じく、タイル下地とその他の仕上げ塗りだ……」


 相葉家と同様だ。

 千香良も龍太も、お互いにまるで、何事もなかったかのように振る舞っていた。


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