とりまお昼
そんなこんなしていると、ヒルデが食事の準備を終えたことを伝えにくる。
先ずは腹ごしらえという意見は満場一致したため一同は食卓に移動と相成った。
特に鼻が利くリンとマオは椅子に座る前から喉を鳴らし、ついでに涎も啜っている。
鼻が利くのは勿論理由があり、リンはこれでもワーウルフと呼ばれる種族で、狼に類似した特徴を持っている。が、籠りがちな彼女は獰猛な所が抜け落ちており、マオとは違い運動に適さないローブを身に纏っており運動する気はサラサラ無い。体躯が小さいが既に成人しており本人も気にしている。
普段からローブに身を包んでいるのは彼女が面倒くさがりな為でもあるが、一部毛深いのを見られたくないという乙女な理由もあった。
マオは見たままの猫である。ただしありふれた種ではなく、音も無くそれでいて死をも獲物に感じさせない狩人、ヘルキャットと称されている。
しかし今のところ彼女がその能力を発揮する機会はほぼ無い。ルーチンワークが其処らの猫と変わり無いのである。いたずら好きな所が目に付き、良くも悪くもムードメーカーだ。
ヒルデは両翼種であると周知している。黒い翼は悪魔を彷彿とさせるが、部下三人の中で一番マトモな彼女には似合わないと総じて思われている。クールぶってはいるが意外と可愛い面やお茶目な所があり、世話好きでもあり仲間思いでもある。
主の忠誠心も勿論だが彼女が率先して家事を行うのは、そんな理由があった。
そして魔王レイラ。爬虫類を彷彿とさせる鱗や尾があるが身体能力はその比ではない。竜種、ドラゴンと呼ばれ並び立つものは数える程しかいないことが常識である。その脅威は魔界を越えて人間界まで轟いている。多少我が儘で大雑把であり財宝に目がないのはご愛嬌。しかし誠実さや無駄な殺生を好まない彼女の性格は、部下からの厚い信頼を寄せている。
「…相変わらずヒルデは料理が上手いの」
「そう言って頂けるだけで嬉しく思います。…それに比べて」
食器を丁寧に扱いゆっくりと食事を楽しむレイラから、チラと目線を向けると無言で肉を貪る獣が二人。相変わらずの様子に少し呆れる。
流石に素手ではないが、そのガツガツとした食事は上品とは言えない。とは言えそれだけ美味しいという評価であるため嬉しくもあるという複雑な心境だ。
同じ食卓で四人が食卓を摂るのは日常的で、それはレイラの方針である。
食事を済ませ一息ついたところを見計らい、レイラが口火を切った。
「さて、先ずは情報共有というか方針を周知させるぞ」
例の剣が抜かれたようで抜かれてなかったこと、様子見がてらに人間界の王都で金策、ポータル作るから行き帰りは手軽にすむこと。
一通り説明された部下の反応は三者三様で、リンは諦めているのか無反応。マオは楽しみなのか頷きながらも口角が上がっており、ヒルデは柳眉を下げて心配そうにして片手を挙げた。
「その、勝手に誰かが転移してはきませんか? あと、魔王様の力量は重々承知していますが、それでも危険では?」
「ポータルの使用にはバカみたいな魔力が必要故、心配は無いが……ふむ」
レイラは自身が強者であることを理解し傲りもあるが、万が一が無いと思う程盲目でも無い。
しかも純粋に心配され、それを一蹴するような彼女ではない。
だからといって代替案が思い付かないため、リンに助けを求めた。
「…リン、なにか無いかなにか」
「なんという無茶振り。うーん、パッと思い付くのは見た目を変えること、かな?」
と言われてもピンとこない三人に、だからさ、と続ける。
「よく調べないと解らないように、幻覚魔法で人に見えるようにするわけさ」
「勘の良いヤツに見つかるのが関の山にゃ」
「大丈夫大丈夫。それなりの実力者なら手を出す程バカじゃないし」
「それに少なからず動揺するから対処しやすいわね」
「んー。ではそれでいくとしよう」
ということに相成った。




