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9,やはり、できる男

休憩します。

できる男です。








 「……ご当主様、総隊長もお疲れ様です」


 「カットゥーロ、ご苦労様」


 ……総隊長でも、言葉も出ずに口を開けることがあるんだ。


 よほど、びっくりしたのね。


 まあ、そうよね。魔術具の馬車よりも魔獣馬は速いのだもの。


 魔獣馬は、人が飼育できる魔獣の中でもダントツの速さだしね。


 その魔獣馬に騎乗してここまで来た私たちよりも後に出発しただろうカットゥーロが、私たちよりも先にこの休憩地点で待っていただなんて。


 初めての人は、びっくりするわよね。


 「ご当主様、スイヤーフの世話が終わりましたらこちらへ」


 馬上で身じろぎもせずに魂が抜けたような状態だった総隊長も、アミーラに振り落とされて我に返ったようだ。


 自身の世話もしてくれない総隊長に、アミーラも怒り心頭だったのだろう。


 振り落とされた総隊長は、慌ててアミーラの飲み水の用意をしている。


 私は、カットゥーロが用意した敷物の上に腰を下ろして、渡された暖かい飲み物に口をつけた。


 


 総隊長が戻ってきたのは、私がお茶を飲みほし携帯食料を口にしていた時だった。


 彼は、近くの切り株に腰を下ろし、携帯魔術具で湯を沸かし携帯食料を作った。


 私に給仕していたカットゥーロが、大きく息をついた。


 「……まったく……侍従たちは、今回あまりに不甲斐なさすぎでございます」


 「……そうね、ちょっと遅いわね。スイヤーフに呼ばせるしかないかしら」

 

 スイヤーフとアミーラの魔力量に圧倒されて、道でも迷った?


 スイヤーフは、いつもより少し機嫌が悪くて魔力が尖っていたものね。


 そういえば他の子たち、動きが悪かったわ。


 「……総隊長、貴方がアミーラに呼ばせてみる?」


 「……はっ?呼ばせ・る……のですか?」


 「ええ、道に迷っているのなら、群れの頭の魔力の籠った声に呼び寄せられるから」


 そう言ってみたものの、今日は、スイヤーフに頼んだ方がいいかもしれない。


 アミーラが選んだとは言え、総隊長にやってもらうのは、やはりまだ早い。


 あれこれと頭の中で総隊長への教育スケジュールを調整していると、カットゥーロから声がかかった。


 「……ふむ、ご当主様、どうやら侍従たちが追い付いてきたようです」


 カットゥーロの言葉に、聴覚だけ強化して耳を澄ませてみた。


 「……魔獣馬の蹄鉄の音が聞こえるわね」


 カットゥーロは少し瞳を伏せて、聴覚に集中しているようだ。


 「……全員そろっているようです」


 「……よくわかりますね」


 感嘆したような声が総隊長から上がった。


 カットゥーロも、総隊長がいても関係なしに身体強化魔法が使えるところを見せているし。


 私が隠すことないよね。


 「カットゥーロは身体強化魔法が使えるのよ。私よりも上手なぐらい」


 そうなのよね、カットゥーロは魔術の繊細な操作は得意なのよ。


 戦場を経験しているから?


 魔力の使用を見たことがないけど、アミーラに選ばれるぐらいだから総隊長も魔力持ち。


 しかも、かなりの魔力量を持っているだろう。


 ……ただ、アミーラは面食いなんだよね。


 同じような魔力量の者が二人いれば、アミーラは顔で選ぶ。


 人間から見ても、整った顔だな、と思うから、美醜の好みはそれほど人間と変わらないのだろう。


 ……総隊長の魔術も確認しておかないといけないね。


 これからは、侍従たちと一緒に魔術訓練にも参加して貰おうか。


 私は、ちょっと塩っ気のきいた携帯食料を食べ終えた頃に、侍従たちが漸く到着した。


 ……皆、いつもより疲れた顔をしているわ。


 それとも、カットゥーロの冷気しか感じない笑顔の方が問題かな。


 「皆が食べ終わるまで、ご当主様はご休息くださいませ」


 今日の反省会は、問題点の指摘だけで終わればいいな。


 


 

 


 


 

 


 


いつもお読みいただきありがとうございます。

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