↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/15

4.それは、崇高なる家族愛

今回は侯爵家の話です。








 ヴィードー侯爵は、嫌われ者である。


 悪人であろうと、すべて悪意の塊というのは存在しないだろう。


 誰しも、善も悪もその体の内に同居しているのだ。


 そして、この世のすべてに憎まれている人というのも存在しないだろう。


 ヴィードー侯爵は、人の愛など信じていない。


 なぜなら彼は、愛などという薄っぺらいものは常に力があれば簡単に手に入るものだと知っていたからだ。

 

 彼にすり寄る者たちですら、彼を嫌っている。


 彼の家族でさえ利がなければ、家族になってはいなかっただろう。


 そして、その事を本人はよく知っているのだ。



 そんなヴィ―ドー侯爵は、今日は西棟で第二夫人と夕食をとっていた。


 「……ウリオからは連絡が入るのか?」


 「ええ旦那様、ご心配なく。ウリオとはきちんと連絡を取り合っています」


 この西棟での食卓は、毎回他国の珍しい料理が一品供される。


 それはヴィ―ドー侯爵正室の東棟では、出ないものばかりだ。


 この国の王家よりも我が家の方が贅を尽くしている。


 ヴィ―ドー侯爵は、それが自身に相応しいと思っているのだ。


 「ウリオは妻を上手く手なずけているのか?」


 「さすがにまだ早ようございますわ。学院を卒業したての内気な令嬢のようですから」


 「ふん、ただの乳臭い小娘だ。先日親が死んだばかり、後ろ盾もない」


 ヴィ―ドー侯爵は、一口赤ワインをあおった。


 「ウリオが上手く立ちまわれば、すぐにでも言いなりになるだろう」

 

 「ええ、ウリオによく申し伝えますわ。旦那様が期待されていると言えばウリオも喜びます」


 ヴィードー侯爵が、赤い色の向こう側を見るように、グラスを目の前に上げた。


 「……第二王子と親密だと聞く。ウリオに教えてやればやる気も出るであろう」


 「まあ、あのような大人しい令嬢が第二王子と親しいのですか。そんな風には見えませんでしたわ」


 まあ、そうなの。と、第二夫人はつぶやいた。


 「ウリオには早々に旦那様のお言葉を伝えますわ」


 帝国で流行りの赤で彩られた唇で、第二夫人は笑みを作った。


 「……旦那様、今日はこちらでお泊りいただけますでしょうか」


 第二夫人の伏せた目元にほんのりと熱が宿ったように、ヴィードー侯爵は感じた。


 「……本館での執務も終わっているからな、今日はこちらでこのまま過ごそう」


 「まあ、嬉しい事。……でも、今日は東の日でしたわね」


 第二夫人は華やいだ声を上げていたが、最後には諦めの音になっていた。


 ヴィ―ドー侯爵家の本館を挟んだ両翼——東棟と西棟——。


 西棟には、第二夫人とその子供たち。


 そして、東棟には正室と嫡男が住んでいる。


 ヴィ―ドー侯爵は、第二夫人の言葉に自身の正室を思い浮かべた。


 常に繊細なレースのハンカチを手に握りしめている、か弱そうな女だった。


 食卓で顔を合わせても、打てば響くような返答もなく。


 こちらへの非難に涙を滲ませる、女だった。


 あれが、隣国の公爵令嬢だとは……。


 今ではヴィ―ドー侯爵にとって正室は、月に一度思い出す存在であった。


 しかし、正室が生んだ嫡男は及第点を与えてやれるぐらいの存在だ。


 第二夫人の息子であるウリオよりは、王家の血統として認められる。


 すでに、ヴィ―ドー侯爵の元で執務の一部を手伝っている。


 母親のにじむ涙にも、顔色を変えることもない。


 ヴィ―ドー侯爵家の役に立たぬ女に現を抜かす事はないだろう。


 嫡男には、いまだに婚約者もいなかった。


 それはヴィ―ドー侯爵が、隣国の王女の降嫁を狙っているからだ。


 侯爵の本音は、帝国の公爵家以上との縁組だが。


 しかしまだ、帝国への伝手がないため、実現できていないのだ。


 


 


 


 


 


 


 


 

 


いつもお読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。