14、輝かしい「私」の未来の世界
「こんな店二度とこないわよ!」
初めての来店で、丁重に以後の来店をお断りされたジーナ・プージョ男爵令嬢が、ドレス店の前で足を踏み鳴らして怒鳴り声をあげた。
「……ふん!客を見る目のない人間ってこんなお高くとまった店にもいるのね」
まだまだ興奮が冷めやらないようで、鼻息の荒さが歩き方に出ていた。
「なによ、ウリオの奴!マダム・ルチアを屋敷まで呼べるっていうから期待していたのに!」
いくら学院の成績が悪く考えなしと言われているジーナでも、流石にマダム・ルチアを屋敷まで呼べるとは思っていなかった。
しかし、王家の外戚で侯爵令息だったウリオが、この国一番と言われている資産家の「子爵家当主」になった。
そのウリオが「呼べる」と言ったら、領地も持たないしがない文官貴族家のジーナには信じるしかない。
……いや、高位貴族の子女として学院で優雅な振る舞いをしていた連中を、心の中で見下してこの世の春を謳歌していたのに。
やっぱり、いくら資産家だとしてもたかが田舎の子爵だもの。
侯爵家の後ろ盾も、この国一番の商会の後ろ盾も、この程度なのか。
……と、がっかりしたジーナだった。
「……マダム・ルチアはだめだったけど、でも今度のお茶会に着るドレスがないと困るよ。国中の貴族がウリオの当主就任のお祝いとして集まるんだから、子爵家夫人としてキチンとした装いがないと……」
「そうだ!」と思い出したのは、ウリオの実母の実家であるグラッソ商会も服飾を扱っている。
マダム・ルチアほどではないが、高位貴族家がよく使うオーダーメイドの商会だ。
確か、アクセサリーも扱ってたわ。グラッソ商会なら、ウリオの「妻」の私にもふさわしい物があるはずだ。
それに、ウリオは商会の「唯一の後継者」だ。遠慮なんていらないよね。
ジーナは、通りに待たせていた馬車に意気揚々と乗り込んだ。
物語に出てくる王子様が、虐げられていたお姫様を迎えにくるような白い美しさが気に入っている。
この馬車のように、ジーナは物語のヒロインとして輝かしい未来が待っているのだ。
そして、ジーナは少しもそのことを疑っていなかった。
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