↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/15

12.可愛い息子には、愛と希望と絶望を

侯爵家はいつも昼メロです。





 








 「あの小娘が、すでに王都にはいないと聞いたが…………」


 晩餐の時間にはまだ余裕がある、蒼天に朱が混じり始めた頃。


 この時間いつもなら、侯爵は執務室に籠っているのでは?と第二夫人は思った。


 どうやら漸く、侯爵にも子爵家の令嬢が領地入りしていた事がばれたらしい。


 私よりも一週間ほど情報が遅いわね。


 自身も先日、息子の嫁になった学院を卒業したての小娘に、してやられた事には触れずに侯爵の手際の遅さを脳内で指摘した。


 「……ええ、そうなのです。少し行き違いがあったようで……」


 「わざわざ王命を出させた意味を解っていないようだな、あれ(ウリオ)は。下位貴族と見下しておったのだろう」


 「其方、あれ(ウリオ)に自身の役割を教え込め。これ以上の勝手は許さぬぞ」


 「……申し訳ございません、ウリオにはよく言って聞かせます」


 第二夫人は深々と頭を下げた。


 「令嬢へ、早々に王都に上るようにとウリオに手紙を書かせましょう。それとも領地へ迎えに行かせましょうか?」


 「……まずは、手紙を書かせて機嫌をとらせろ。テュスクルーム子爵家を掌握しなければお前はただの平民だと、あれが理解するまで叩き込め。失敗しても侯爵家が養うとは思うな。……そして、領地には影を送る」


 「承りました」


 「それと、あのバカげた茶会を取りやめさせろ。あんなものに侯爵家の名を使いおって……今あれと一緒にいるネズミも始末しろ」


 「……ジーナ・プージョ男爵令嬢でしょうか」


 「ああ、あの場末の娼婦のような小娘のことだ」


 西棟で顔を合わせた早々に、侯爵から頭ごなしに叱責を受けたので、立ったままなのを思い出した。


 ただ単に、ウリオの失態を叱責するだけに西棟へ来たようではなさそうだ。と、第二夫人は客間にお茶の用意をさせた。


 「旦那様、お茶の用意が整いました。あちらで詳しく承りますわ」


 今日の予定は変更ね。と、第二夫人は思った。


 先日、大きな案件を処理したと「あの子」から連絡が入ったのだ。


 ご褒美を上げなくてはね。と約束した。


 しかし……。


 「旦那様、実は先日帝国から、アイシュアルを手に入れましたの。今夜はこちらでこのままお過ごしになられますか?」


 第二夫人は、殊勝にも媚びているようにも見える笑みを浮かべた。


 「おお、アイシュアルか。久しぶりではないか……そうだな、今日はこのままこちらで過ごすとするか」


 「では、旦那様の夕食の手配をいたしますわ」


 第二夫人が実家から連れてきた西棟の執事が客間の扉を開けた。


 「少し席を外します」と、第二夫人は客間には入らなかった。





 「これをあの子に渡して」


 実家から連れてきた年嵩の専属侍女に手紙を手渡した。


 「埋め合わせは、後日にすると伝えてね」


 「はい、お嬢様」


 物心ついた頃にはすでにそばにいた、年若い母とも年の離れた姉とも思える女性だ。


 第二夫人が一番信頼している人物だった。


 渡した手紙からは「幸せな夢」と名付けられた香水が、かすかに薫っていた。



 「……お嬢様、先日帝国へ買い付けに行っていた者が帰ってまいりました。ネックレスなども購入してきたようですが、明日にでもご覧になりますか」


 「ええ、アクセサリー類はこちらに運んで頂戴」


 「かしこまりました」


 「お願いしていた蒼い石のアクセサリーはあったのかしら」


 「はい、入手してきたようです。お嬢様がお似合いになる、最高級の赤い石のネックレスも購入できたと聞いておりますよ」


 それを聞いた第二夫人は、一つポンと手を打ち華やいだ声を上げた。


 「まあ、そうなの?……来月の夜会につけて行けるかしら」


 「後でご一緒にドレスの確認をいたしましょう」


 「とても楽しみだわ」


 「では、手配をよろしくね」と言い置き、第二夫人は客間に入っていった。


 




 大切なお嬢様の背中を見送った年嵩の専属侍女タマラは、ため息を一つつき小さく怒りを吐き出した。


 「……まったく私のお嬢様はあれほど優秀だというのに……お嬢様の血を受け継ぎながら、あのどうしようもないダメ男(坊ちゃま)と瓜二つなんて。これ以上お嬢様の足を引っ張るなら、消し去ることも考えなくてはね」




 


 


 

 


 


 


いつもお読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。