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魔法の便器  作者: 好月
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3/11

突然の合コン

その日の夜、田中は自宅でくつろいでいた。


 テーブルの上にはいつものスーパーマーケットで買ってきた弁当。いつもと変わらない、特に予定のない休日の夜だった。


 そのとき、スマートフォンが鳴った。


「もしもし?」


『おう、田中!元気か?』


 電話の相手は、昔からの友人だった。


「ああ、どうした?」


『今度の土曜日、空いてるか?』


「土曜日? 特に予定はないけど」


『よし!じゃあ合コン行こうぜ!』


「……合コン?」


『そう、男女三対三。ちょうど人数が足りなくてさ。お前にも来てほしいんだよ』


「いやいや、俺なんか行っても仕方ないだろ」


『何言ってんだよ。たまには外に出てこいって!』


「でもなぁ……」


『いいから!もう一人もお前のこと知ってるし、気楽に来いよ』


 田中は少し考えた。


 女性と話すのが苦手というわけではない。ただ、自分から積極的に話しかけるタイプでもない。


 そもそも、合コンなど何年ぶりだろう。


「まあ……せっかくだから行ってみるか」


『おっ!その調子だ!じゃあ土曜日な!』


 電話は勢いよく切れた。


「……何着ていけばいいんだ?」


 田中はスマートフォンを置き、しばらく考え込んだ。


 そして土曜日。


 田中は待ち合わせ場所へ向かっていた。


 指定された店は、街の中心部にある高級レストランだった。


 建物の外観からして、普段田中が利用する店とは雰囲気が違う。


「うわっ、高そう……」


 思わず声が漏れた。


 入口の前で一度立ち止まり、店の看板を見上げる。


「ここで合ってるよな……」


 少し緊張しながら店内へ入ると、奥のテーブルに見覚えのある二人の姿があった。


「おーい!田中!」


 一人が大きく手を振る。


 声の主は、学生時代からの友人だった。


 短く整えられた髪に、清潔感のあるジャケット。背筋の伸びた姿勢と自信に満ちた表情。人目を引く整った顔立ちに、初対面の相手でも自然と会話を弾ませる話術を持っている。


 現在は自分で会社を経営しており、仕事も順調。昔から行動力があり、何事にも物怖じしない男だった。


 その隣に座っているのは、もう一人の友人。


 こちらは経営者の友人とは対照的に、落ち着いた雰囲気の男だった。柔らかな笑顔に、穏やかな口調。派手さはないが、端正な顔立ちと知的な雰囲気が印象的だ。


 医師として働いており、相手の話をじっくり聞くのが得意だった。


 二人とも女性からの人気は高く、学生時代から何かと目立つ存在だった。


 そんな二人に挟まれると、田中はどうしても自分が場違いに思えてしまう。


 それでも、二人は昔と変わらず田中を迎えてくれた。


「おう、久しぶり!」


 田中は少し照れくさそうに笑いながら、二人のもとへ歩いていった。


「いやあ、ここすごいな」


 田中は店内を見回した。


「だろ?ちょっと奮発したんだよ」


「なあ、ここっていくらくらいするの?」


 田中が小声で尋ねると、経営者の友人は笑った。


「気にするなよ。足りなかったら出してやるって!」


「いや、それは悪いよ」


「いいからいいから。今日は楽しもうぜ」


 医師の友人も笑顔でうなずいた。


「せっかくなんだから、田中も楽しんでいってよ」


「うん。ありがとう」


 田中は少し肩の力が抜けた。


 やっぱり、こいつらはいい奴らだ。


 昔から何かと自分を気にかけてくれる。仕事も生活も違うけれど、会えば昔と変わらない。


 そんな二人と話しているうちに、田中の緊張も少しずつほぐれていった。


 やがて、店員がテーブルへ近づいてきた。


「お連れ様がお見えになりました」


「おっ、来たか!」


 友人たちが入口の方へ目を向ける。


 田中もつられて振り返った。


 女性が三人、こちらへ歩いてくる。


 それぞれ雰囲気の違う女性たちだった。


 その中の一人に、田中の視線が止まった。


 落ち着いた雰囲気に、上品な立ち姿。整った顔立ちと、柔らかな表情。


 周囲の景色が、ほんの一瞬だけ遠のいたような気がした。


「……」


 田中は言葉を失った。


 女性が近づいてくる。


 そして、彼女と目が合った。


 彼女はにこりと微笑んだ。


 田中の胸が、どきりと鳴った。


 ――きれいな人だ。


 それが、田中の第一印象だった。

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