2026年 春 地獄の高校生活③ 彼女もまた選ばれた
ガラガラ、と教室の戸を開ける。
一瞬、教室中の視線が私に集まった。
……そして、みんな目を逸らした。
ああ。
もう知ってるんだ。
重たい空気の中、自分の席に座る。
誰も何も言わない。
でも、横目でこっちを見ているのは分かる。
居心地が悪い。
どうしたものかと考えていると――
バタバタバタッ。
廊下の向こうから、騒々しい足音。
嫌な予感しかしない。
ガラガラガラッ!
勢いよく戸が開いた。
振り向かなくても分かる。
パッパラナントカさんだ。
「森川さーん! 聞いたわよーー!」
一直線に葵ちゃんの席へ向かう。
……え?
なんでそっち?
私は思わず目を丸くした。
「ねえねえ、森川さん! 選ばれたんですって!? ダーキニー!」
え?
いや、選ばれたの私だけど。
やっぱりパッパラだ。
そう思った次の瞬間。
葵ちゃんは否定しなかった。
俯いたまま、小さく肩を震わせている。
……まさか。
私は慌てて席を立った。
「葵ちゃんも……?もしかして、本当なの?」
葵ちゃんは黙ったまま、小さくうなずいた。
胸が冷たくなる。
私は、自分のことで頭がいっぱいで、葵ちゃんの様子なんて全然見ていなかった。
「は?」
今度は神谷さんが私を見た。
「今、『も』って言った?」
嫌な予感。
「……え?」
「『葵ちゃんも』って言ったわよね?」
あ。
しまった。
「……選ばれたよ、私も。」
数秒、教室が静まり返る。
神谷さんは口を半開きにしたまま固まっていた。
「……は?」
さらに数秒。
「はぁぁぁぁぁっ!?」
教室中に響き渡る絶叫。
「何それ!? 何で冬月さんまで選ばれてるのよ!」
知らんがな。
「どう考えても間違いでしょ! 何であんたなのよ!」
「いや、私だって聞きたい。」
「おかしいじゃない! いったい誰が選んだの!?」
尊師だろ。
「だから、おかしいって言ってる。」
「なんで私じゃないのよ!」
そこなの?
「代わってほしいなら、代わる?」
「いらないわよ!」
どっちなんだ。
「あー、もう!今朝は最悪!」
神谷さんは髪をかきむしった。
「さっきなんか、トイレで個室に入ってたら、誰かに突然ドアを思いっきり蹴られたのよ! 死ぬかと思ったわ!」
……。
あれ、オマエだったのかよ。
「まったく、誰よ、あんな非常識!」
……ごめん。
ほんのちょっとだけ。
いや、本当にほんのちょっとだけ申し訳なく思った。
その時だった。
ガラリ、と戸が開く。
教室の空気が、一瞬で凍りついた。
入ってきたのは担任ではない。
例の上級信者だった。
当然のような顔で教壇へ立つ。
そして満面の笑みを浮かべる。
「皆さん、注目してください。」




