2026年 春 家に帰ったら世界が違った③ これって、昭和レトロか?
高校入学の直前。
昨日まで知っていた日本は、どこにもなかった。
歴史好きの少女・冬月澪が迷い込んだのは、1995年を境に別の歴史を歩んだ日本。
街並みは見慣れている。
家族も友人もいる。
それなのに、この国だけがどこかおかしい。
学校では奇妙な授業が行われ、人々はそれを当然のように受け入れている。
自分だけが「本来の歴史」を知っている。
その事実が、澪を国家の秘密へと導いていく。
これは、もし日本の歴史が別の道を歩んでいたら――という仮説から生まれた歴史改変SF。
「おかえり」
父の声が飛んできた。
テーブルに置かれたノートパソコンに向かったまま、こちらを見ようともしない。
だが、その声だけは妙にいつも通りだった。
そして私は、リビングの異様さに息を呑む。
家具が違う。
今朝まで置かれていた棚が消え、色褪せた木製の家具に置き換わっている。全体的に薄暗く、生活感まで変わってしまったようだった。
——こんなに貧しい家だった?
私が留守にしている間に借金取りでも来て、家具を全部入れ替えた?まさか!
点けっぱなしのテレビでは、奇妙な番組が流れていた。
白一色のだぶついた服を着た男女が、見覚えのない話題について深刻そうに語っている。妙に抑揚のない喋り方。北朝鮮のニュース映像みたいだ、と思った。
そのテレビ自体にも違和感がある。
分厚い。
画面の中央が丸く膨らんでいる。
——これ、ブラウン管テレビ?
本物を見るのは初めてかもしれない。
いや、待って。
なんで今どき、こんなものが家にあるの?
父の趣味?昭和レトロというやつ?いつから我が家は、これほど懐古趣味になったのだろうか。
父のノートパソコンへ目を向け、私はさらに混乱する。
液晶画面に色がない。
白と黒だけ。
モノクロ画面だった。
これも昭和レトロ…じゃないよね?




