2026年 春 家に帰ったら世界が違った② 私の母がおかしかった
お母さんは、私の顔をまじまじと見つめながら言った。
「あなた……本当に澪なの?」
「そうだけど?」
実の母の口から出た思いがけない言葉に、私は眉をひそめる。
「どうしたの、お母さん」
母はまだ信じられないものを見るような目をしていた。
「でも……なんでそんなに、...ええと、太ったの?」
失礼な。
そりゃ、学校で細いと言われるタイプではない。でも、ぽっちゃりなんて言われたこともない。標準体型だ。
「お母さん、帰ってきて早々、どうしたのさ。今日は友達とお昼食べてきたけど、半日で太ったりしないって」
軽く笑い飛ばそうとしたが、母は笑わなかった。
それどころか、今度は私の全身を値踏みするように見回す。
「その服……どうしたの?」
「え?」
「そんな派手な格好、いつ買ったの? 髪までそんなふうにして」
ますます意味が分からない。さっきから何を言っているのだろう。
服も髪型も、朝、家を出た時と同じだ。休日に友達と遊びに行くのだから、制服の日より多少気合いが入っているだけで、別に珍しくもない。
「ねえ、お母さん。本当にどうしたの?」
私は少し本気で心配になってきた。
疲れているのだろうか。病気? 若年性認知症?
だが、さすがにそこまで直接的には言えず、
「最近、ちゃんと寝てる?」
と、遠回しに聞くのが精一杯だった。
リビングへ向かう。




