2026年 春 家に帰ったら世界が違った① ここ、どこなんだ?
楽しい映画だった。
現代史の常識の裏をかいたストーリー。歴史好きの私には、たまらない内容だった。
最後のどんでん返しなんて、鳥肌ものだ。
高校合格のお祝いも兼ねて、友達と映画を観た帰りだった。
四月から、私は高校生になる。
浮かれた気分のまま、
「ただいまー」
と玄関のドアを開けた瞬間、不意に強い眩暈がした。
ぐらり、と視界が揺れる。
あれ?
思わずドアノブを強く握る。足から力が抜ける感覚。もし掴まっていなければ、その場に倒れていたかもしれない。
数秒ほどして眩暈が収まる。
そして私は、目の前の光景に固まった。
見慣れた我が家の玄関ではない。
——誰の家?
いや、違う。
外に飛び出し、表札を確認する。
間違いない。うちだ。
壁の色がくすんでいる。玄関灯も薄暗い。今朝は無かったはずの錆が、ドアノブの根元に浮いていた。
鼻につくのは、古い畳みたいな湿った臭い。
恐る恐る、もう一度ドアを開ける。
やはり違う。
置いてある靴が違う。見覚えのない古びたサンダル。安っぽい黒い革靴。今朝まであった私のスニーカーも消えている。
呆然としていると、廊下の奥から母が現れた。
「あら、おかえりなさい。今日は早かったのね」
そこまでは、いつもの母だった。
だが、私の顔を見た瞬間。
母の表情が凍りついた。




