2026年 春 古本屋・改古堂⑥ ショボイね
「あと、これが1986年に発売された「ザ・超能力秘密の開発法」という本。全国の書店で販売された」
上半身裸で髭面長髪の教祖が例によって空中浮揚している写真が表紙だ。やはりピョンピョン跳ねながら撮影したんだろうな。帯には、「癌やエイズだって怖くない」という煽り文句が書かれている。エイズって、HIVの事だね。当時は未知の病だったのかな。
「これは、『滅亡の日』という本。マンガなんだけどね。一般の本屋でかなり売れたから、古本屋にも多く出回ったもんだよ」
マンガの中の麻原や教団幹部たちは、かなりの美男美女として書かれている。しかも聖人君子に見える。上手い絵だけど、描いたのは信者かな。今読むと、シュールなギャグマンガ、いやブラックコメディかな。
「それと、これ。1987年から作られた、教団内部での機関紙、『マハーヤーナ』。一般の書店じゃ手に入らなかった、希少な本だよ」
本当に、どうやって手に入れてるの、こんな本。
折角だからページをめくる。
なになに、教祖がどんなに素晴らしい超能力者なのか、信者たちの体験談なのね。
えーと、一緒に歩くと足が速すぎて追いつかなかった?
外回りの時に饅頭が食べたいと思いながら教団事務所に戻ってきたら、教祖が「これが食べたかったんだろう」って饅頭を出してくれた?
雨の日、傘を差さなくても雨が避けて行った?
どの話も、なんだかショボい。これ、超能力のエピソード集なの?
「ここに書いてある水中クンバカって?」
「それは、水中に潜って長時間息を止めるっていう、インドヨガ行者のデモンストレーション。
でもオウムでやってたのは、密閉したカプセルの中に入って、それごと水に入るってやつ」
「...それも、誰でもできるやつだよね。空中浮揚と云い、こんなショボい『超能力』で世界を救うなんて言ってたの?」
おじさんの説明が長引きそうだ。これは、いつまでも続きそう。そろそろ退散した方が良さそうだ。




